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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-6.病院の不審者

 悪い人じゃないのは確かだな。ちょっと怖いけど、職人気質と言われればそんな気はしてきた。

 厳つそうな風貌も、鬼って感じがするけど。


「今日は遥ちゃんの足の型をとります。これを元に義足を作るの」

「なるほど、あれですね。ギプスみたいなのを作るんですよね」

「ええ。よく知ってるわね」

「わたしも調べたので」


 大掛かりな荷物は、その材料なんだろう。


 宮崎が、医師とふたりで遥の足の型をとっていく。手際がいいと思うけど、この作業の比較対象がわからないからなんとも言えない。


「キエラもやったのかな、これ」

「やったかもしれねえな。でもあいつ、こういうの苦手そうだ」

「確かにな。じっとしてなきゃいけないし」

「落ち着きなさそうだもんなー、あいつ。まあキエラの場合、手の先だけだからそんなに時間掛からねえのかもしれないけど」

「どうなんだろうな……」

「あ、終わったみたいだぜ」


 アユムと取り留めのない会話をしていると、いつの間にか作業が完了していた。

 本当に手際がいいんだろうな。


「今作った型で、遥ちゃん用のソケットを作るのよ。それを義足につけて、実際に遥ちゃんの足につけて調整していくの」

「大体どれくらいでできますか?」

「一週間もあればできる」


 装具士の宮崎が短く答えた。


 早いのか短いのかはわからない。義足本体はカタログを見て選んだ既製品だから、割と早くできてしまうのかもしれない。

 この日の用事はこれで終わり。仕事が終わったら、宮崎はさっさと帰っていってしまった。


「無愛想でしょ? けどいい人なのよ」

「それはわかります。丁寧な仕事をする人なんだなーとも思いました」


 俺からすれば顔も態度も怖いおじさんだけど、遥にとっては違うらしい。


「無愛想だけどね、わたしに対する気遣いみたいなのはちゃんとしてました。ものすごく無愛想だったけど」


 そこは譲れないのかよ。確かにそうだけど。強調するほどかよ。


 そんな他愛ない会話をしながら、病院の正面出入口から出る。


 ふと、受付が騒がしいのに気づいた。

 小太りの男が何か必死にまくし立てていて、受付の女が困惑していた。揉めているというよりは、一方的に要求か質問を投げて受け取られていないという様子だ。


 男が早口すぎて、何言ってるのか全然わかんない。ここから遠いのもあるだろうけど。


「どうする? 止めるべきか?」

「やめとけ」


 アユムがポキポキと拳を鳴らしながら尋ねるけど、関わるべきじゃない。


 魔法少女に変身してなかったら、アユムはただの女子高生だ。相手は大人の男で、たぶん腕力も向こうが上。たぶん負ける。

 俺なら勝てるだろうけど、公共の場で暴力行為は良くない。どっちが負うにせよ、病院内で怪我人が出たら、病院側に多大な迷惑がかかる。


 というか、受付のお姉さんからすれば、ここで別の客が絡んできたら面倒な奴が増えたとしか思わないだろうから。


「大きい病院だし、こういう時のマニュアルはしっかりあるはずだよー。ほら見て」


 遥は落ち着いて一方を指さした。制服姿の警備員が近づいてきている。


 さっきの宮崎と同じく、ガタイが良くて強そうな男だ。顔も厳つい。さっきの宮崎がそうだったように、鬼と形容されそうな顔つきだ。

 いや、宮崎は仕事の鬼って意味だったのだけど。


 とにかく警備員は男に近づいて、どうかしたかと尋ねた。詳しい話は裏で聞きますと、言葉面だけは丁寧口調だけどドスの利いた声をかけた。謎の男は恐れおののいた様子で、逃げるように帰っていった。病院の正面玄関、つまり俺たちの近くを通って。


 すごい冷や汗をかいていたな。普段から運動してないらしく、走るフォームも無茶苦茶だった。


「逃がしていいのかな」

「簡単に逃げちゃうような不審者なら、もう来ないだろうから大丈夫だよー。何度も来るなら、その時改めて警察に相談だろうね」

「なるほど」


 受付では、さっき不審者を追い返した警備員は、受付の女には礼儀正しく頭を下げてからいなくなっていった。

 俺たちも、ここに長居する意味はない。遥の車椅子を押して病院を出た。さっきの男の姿はどこにも見当たらなかった。



――――



 悠馬たちが病院に行っている間、ラフィオもまた必要な仕事をしていた。


 もはや習慣になっているような、つまらないことだけど。つまりは河原での石集めだ。つむぎと一緒にバケツを持って。魔法陣に置くための石を探す。


 近くでは、少年野球チームが練習しているのが見えた。酒井だったか。あそこの息子はいなくなったけど、チームは活動を継続している。そして子供たちの保護者もこれを見守っていた。

 少年たちは今日、学校を終えた後に集まって練習しているわけで。頑張っているなあとラフィオは感心していた。それを見守っている保護者たちも、それぞれやるべきことがあるはずだ。多くは母親だったけど、夕飯の準備とかがあるだろう。


 ちょうど、子供たちを迎えに来たってことかな。練習が終わるまでの時間で、知り合いのママさんと楽しいお喋りだ。


「ママ友ってやつだねー。子供同士が友達だと、お母さんも友達になるとか、そんなのがあるって聞いたことあるよ」


 ラフィオに指さされた石を手に取りバケツに入れながら、つむぎが教えてくれた。

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― 新着の感想 ―
職人さんは無愛想だと相場が決まっておりますからʕ•ᴥ•ʔ ゆずれません!ええ譲れませんとも!!!!
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