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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第12章 仇敵

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12-39.樋口とセイバー

 幸いというかなんというか。黒タイツたちは発砲訓練を受けていないわけで。狙いの付け方も雑だった。それでも数が揃っているのは脅威だった。

 周りで何人かの警官たちが悲鳴をあげた。


「無事な者は負傷者を運べ! 誰も死なすな! 撤収を急げ!」


 隊員の盾を拾って最前線に立ちながら、隊長が叫ぶ。撤収と言ってもどこに行けばいいのか。逃げれば怪物たちが街に放たれる。

 隊長他、何人かの機動隊員たちは盾を構え直して撤退の時間を稼いでいた。そこに警棒のフィアイーターが再度の攻勢をかける。さらに同じく警棒を持った黒タイツたちが十人あまりの軍勢で殺到。


 樋口は盾の隙間から拳銃を撃ち、その内の一体を撃ち抜いた。けど勢いを止めるには至らない。


 フィアイーターの一撃で、また盾の並びが崩れる。そこに黒タイツたちが切り込んでいって、盾のこちら側に入り込む。


 樋口はすかさず、来た黒タイツの首根っこを掴んで地面に引き倒し、その衝撃で首を折る。そして警棒を奪って、別の黒タイツのみぞおちを突いて昏倒させた上で眉間を拳銃で撃った。

 弾数のカウントはしている。今ので弾切れ。再装填する弾なんて用意してないし、そもそも警察という組織は拳銃をそこまで使う想定をしていない。


 まあ、弾数に制限があるのは黒タイツたちも同じだろうけど。


 拳銃をあっさり放り投げて、警棒を手に他の黒タイツを思いっきり殴打。

 警官たちの撤退はあらかたできていたけど、盾を持っていた機動隊員たちはまだいる。というか陣形が完全に崩れて、黒タイツたちとの混戦状態になって、逃げることもできなくなった。樋口も同様の状況。

 黒タイツの首に警棒を横に当てながら押して壁に叩きつけ、さらに押し込んで折る。次は誰だ。


 ふと、廊下の向こうに目をやった。


 拳銃のフィアイーターがまっすぐこっちに狙いを定めていた。

 急いで避けようとしたところ、黒タイツの一体が迫ってきた。強い力で樋口の肩を掴んで壁に押し付ける。そしてフィアイーターが発砲。


 まずい、死ぬ。


 そう覚悟したのと同時に、樋口を押さえつけていた黒タイツの首が撥ねられて、飛んできた弾丸が弾き飛ばされて天井の蛍光灯を割った。


「あちゃー。照明壊しちゃった。別に警察から弁償求められるとかないわよね。それよりは光が減っちゃうことの方が問題よね。わたし、これでも光の魔法少女だし」


 ブンブンと剣を振って周りの黒タイツを切り捨てながら、魔法少女シャイニーセイバーは樋口に語りかけた。

 変身した際に、他の服と共に巻いていた包帯も魔法少女の衣装に変わったのだろう。お腹には塞がりかけの傷が見える。


「ちょっ。あなた。おとなしく病院にいなさい! 傷が開いたらどうするのよ!?」

「あははー。悠馬にも同じこと言われました! けど、わたしが一番近い所にいたし。行かなきゃ誰かが死ぬと思って。だから来た」

「それは……助けてくれたのは嬉しいけど」


 セイバーの傷口だけじゃない。酒井一家と顔合わせしてしまう危険もある。

 そして樋口の懸念は、セイバーも承知していることらしくて。 


「大丈夫。樋口さんの心配してること、わたしは心配してないの。それよりほら。みんな逃げて。あとは魔法少女に任せて!」


 フィアイーターや黒タイツたちがセイバーに向けて銃弾を放つ。一発でも当たったら昨日とは比べ物にならない重傷になるのだけど、セイバーは冷静だった。


 弾丸が見えているらしい。当たらないものには反応せず、回避したり剣で弾いたり。

 黒タイツたちの拳銃はすぐに弾切れになってしまったらしく、銃撃は長くは続かなかった。


 魔法少女の到来に、警官たちは感謝しながら逃げていく。

 セイバーは樋口もそうするように促したのだけど。


「そうはいかないわよ。わたしも一緒に戦う」

「あんたは酒井たちの保護って仕事があるでしょ?」

「……そうね」

「奴らの狙いもあの一家。だから守ってやりなさい。おっと」


 フィアイーターがまた一発撃った。セイバーは足元に転がっていた機動隊の盾を足ですくい上げて手に取り、これを防ぐ。


 機動隊員と違って衝撃に耐えた。踏ん張る力が強いからというよりは、弾丸を盾で斜めに当てて軌道を逸したことにより衝撃を軽くしたから。


「まあ、向こうも簡単に行かせる気はなさそうだけど」

「そうね。とりあえず援軍が来るまでは、わたしも残るわ。酒井の保護は誰かがやってるでしょうし」

「わかった」


 直後、キエラの指示で警棒を持った黒タイツが大量に殺到。樋口も警棒を構え直す。


 先頭の黒タイツの喉に、セイバーが盾の縁を当てた。それにより倒れていく体を踏みつけながら、他の黒タイツを盾で殴りながら更に別の一体を剣で斬り捨てる。

 樋口も、セイバーの背中を守るように立ち回った黒タイツの顔面を掴んで頭部を何度も殴打して無力化。


 細長い廊下とはいえ、ふたりで守るには無理がある。黒タイツが何体も横をすり抜けて行ってしまう。やはり狙いは酒井の捜索か。


 警察署内に散らばって、酒井たちの逃げ道を塞がれるのはまずい。だが黒タイツが集団で固まっているよりは、散らばっている方がメリットもある。

 退却した機動隊員や警官たちも、警察署自体から逃げたわけじゃない。単独でいる黒タイツ相手ならなんとか倒してくれると期待しよう。


「フィァァァァァァ!」

「うるさい!」


 警棒のフィアイーターが突っ込んでくる。自身の体というか頭部の棒を振り下ろす豪快な頭突きを、セイバーは盾で受け止めた。もちろん銃のフィアイーターの動きにも注意しながらだ。黒タイツもまだまだいるし。

 キエラやティアラの姿は消えていた。帰ったのではなく、さっきすれ違った黒タイツの中に紛れているのだろう。


 フィアイーター二体はここに残していくという判断。理解できなくはないな。


「フィァアアァァ!」

「来るわよ盾構えて!」

「無理!」


 警棒フィアイーターにガンガン叩かれてるセイバー。拳銃の方が接近しながら少し角度を変えて、側面から撃とうとしてきた。

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