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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第12章 仇敵

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12-38.銃撃戦

 奴らに囲まれて守られるように、キエラとティアラの姿もあった。キエラは少女の形態をしていて、相変わらず右手の先は包帯。


「後退しましょう。防火扉を閉めて、開けられないように塞いで侵攻を食い止めるの」


 機動隊の隊長に意見具申。よその警察組織から来たお客さんの小娘の言うことに耳を貸す必要はない。しかし彼も同じことを考えていたようで。


「防火扉の方まで退却! そこにバリケードを作れ! 破られるまでに人員を集めて、迎え討つ!」


 経験豊富そうな中年男性である隊長は、機動隊だけではなくその場にいた警官や樋口にまで拘束力がある命令を下して、自身は盾を構えて殿を務めながら後退。


「近くの部屋から動かせる物は何でも動かして防火扉の前を塞ぐの! 椅子や机、ホワイトボードとか! 花瓶とか空気清浄機とかかとにかく何でも! あ、消火器は武器にしましょう。いざって時の煙幕に使えるから」


 樋口も警官たちに指示を出す。小娘だけど、魔法少女関係の仕事をしているのは県警でも知られているし、フィアイーター絡みの件ならみんな言うことを聞いてくれる。

 閉まっていく防火扉の隙間からキエラの姿が見えた。彼女の命令で、黒タイツたちが発砲する。


 閉まる寸前、弾がいくつかこちらに飛んできた。幸い負傷した警官はいないらしいけど。


 扉の向こうで、金属同士がぶつかる音が聞こえた。それに混ざって、フィアイーターの咆哮と大きな金属音も。

 十分な厚さがあるはずの防火扉が、微かに凹んだ。


 警官たちは急いでバリケードの設置を行っている。署内から警官たちが次々に駆けつけてきて、手伝いをしたり拳銃を手に震えていたりする。


「ねえ。誰か保護している酒井の様子を教えてくれない!? 彼らを今すぐ、ここから別の場所に移動させてほしいの!」


 呼びかけてみたけど、芳しい反応はなかった。ここの署員みんなが、酒井のことを知ってるわけではない。警察署内に現れて銃で武装した敵の方が優先事項なのはわかる。


 扉の向こうの金属音も大きくなっていった。見れば、出入り用に備え付けられている小さな扉の境目から、だんだんひしゃげているようで。


「破られるぞ! 構え!」


 即座に機動隊員が盾を構えた。廊下の幅いっぱいに広げて塞ぐように。そして盾を持つ隊員を支えるように別の人員がしゃがんで構える。これでフィアイーターの弾丸に耐えられるだろうか。

 盾の隙間から、拳銃を持った警官が構えている。


 扉の向こうから聞こえる激しい音によって、扉がさらに歪んだ。小さな隙間が出来て、黒タイツの何人かがそこに警棒を差し込んで穴を広げようとした。


「まだ撃つな。まだだ……」


 隊長が静かに言う。隙間が小さすぎて、拳銃では狙っても当たらない。魔法少女なら弓で射抜くくらいの芸当をしそうだけど。

 黒タイツは、あれでも人間の数倍の筋力を持っているらしい。それが複数体、体重をかけながら動かすことで、隙間がメリメリと広がっていく。やがてバキっとおおきな音がして、扉が壊れた。


「撃て!」


 警官たちが一斉に発砲。飛び出してきた黒タイツどもは、その前に積まれた机や椅子に進行を阻まれながら、弾丸に倒れていく。

 強引に出ようとしていた黒タイツが慌てて引っ込んだ。その代わりに前に出たのがフィアイーターで、特大サイズの弾丸を放ってバリケードを揺らがせたと思ったら、金属製のボディで体当たりしてこれを崩した。


 みんな割と苦労して積み上げたのに。崩れるのは一瞬だった。


 構いはしない。そんなのは想定済。


 防火扉のこちら側へと侵攻してきた黒タイツを銃弾が襲う。フィアイーターが庇うような立ち方をしているが、散開しようとしていた黒タイツだから多くがやられた。


「もう。人間のくせに歯向かってこないでよ! なんでこんなに強いの!?」

「警察だからだよ。それにこれ、特殊部隊かもしれない」


 キエラの怒った声と、ティアラのたしなめる声が聞こえた。

 ティアラは世間をよく知らないのだろうか。機動隊と特殊部隊が別なこともよくわかってないらしい。


「サブイーターたちは一旦下がって! あんた。あの盾をなんとかして! ティアラ、新しいフィアイーターを作りたい!」

「フィァァァァァァ!」


 銃のフィアイーターが連射してきた。重い弾丸を、機動隊員たちは盾で受け止める。今度はなんとか耐えていた。しかし連続で撃たれるとまずい。


 さらに、警官たちの拳銃も弾数に制限がある。再装填もできない故に、銃撃戦は長くは続けられない。

 そして盾の向こうで、腕のないキエラの代わりにティアラが転がっている警棒を拾うのが見えた。キエラの残った左手に持ったコアが、警棒に押し付けられる。


 防火扉の向こうが暗くなったのを、多くの警官が見たことだろう。そして新しいフィアイーターが誕生した。


 警棒に手足が生えて、やはり成人男性の身長くらいになった姿。

 金属製の体は銃弾を通しにくそうで。


「まずい。引いて!」

「フィアァァァァァ!」


 樋口が周りに呼びかけるのと、警棒のフィアイーターが突進をかけるのは同時だった。

 人外のパワーで、機動隊員たちが構える盾に激突。銃弾よりも重さがあるそれで、整然と並んだ盾が崩れる。


 そこにフィアイーターの弾丸が当たることで、陣形が崩れた。


「今よ! みんな撃ちまくって!」

「撤収! 逃げろ!」


 キエラと隊長が同時に指示を出す。銃を構えた黒タイツたちが前に出て撃ちまくった。

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