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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第12章 仇敵

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12-37.銃のフィアイーター

 それから、家族は一様に、パパがまた逮捕されるのかを心配していた。


 異世界の住民からお願いされて義肢を作ることが何の罪に当たるかは、法学者の意見を聞かなきゃわからない。作ったのが武器なら、銃刀法や危険物関係の法に触れるだろうな。

 もっとも、逮捕なんかする気はないけど。それを伝えるわけにもいかない。


「あー。相変わらず因果な仕事よねー」


 警察署内の片隅で、自販機で買ったコーヒーを飲みながら、樋口はため息混じりに独り言。

 こんな時は、帰りに双里家のマンションへ行って酒を飲むに限る。けどその双里家が問題だし、家主である愛奈が入院中なのに来客者がひとりで訪れて飲酒するのもはばかられる。


「やってられないわよ。本当に……」


 コーヒーを飲み干して、酒井とのお喋りに戻ろうとする。さっさと終わらせてしまおう。警察署なんかにずっと置いておくわけにはいかない。


 敵が襲ってくる可能性は、常に考えている。樋口も、ここの県警も同じだ。だからこの警察署には、密かに機動隊を配置している。あからさまな形ではないけれど、各所に隠すように配備させて警戒させていた。

 敵が来た際、魔法少女が来るまで酒井の家族を守るため。


 そう。対策はちゃんとしていた。なのに。


 警察署内が騒がしくなっていった。聞きたくない怪物の咆哮も耳に入る。


「ああ。これは……最悪ね」


 騒音の方に向かいながら、樋口は拳銃の用意をする。スマホが警報音を鳴らしたのをすぐに解除。出てきたのはわかっている。

 とにかく状況を把握しないと。フィアイーターが出現したのはどこ? 酒井の近くなの? フィアイーター自体が陽動で、キエラたちは別行動で酒井の所へ行ってるかも。


 あれこれ考えながら向かっていると、あることに気づいた。この先は保管庫だ。


 何を保管してるかって? 拳銃と警棒だ。


「最悪……」


 よく聞けば、発泡音が聞こえてきた。しかも連続的に。


 ここの警官が撃ってるのか? それとも、奴らに拳銃を奪われた? フィアイーターは何を素材に作られた?

 走って向かったところ、廊下で敵が暴れているのが見えた。


 リボルバー拳銃のグリップ、つまり持ち手から黒い手足が生えた怪物。つまり銃のフィアイーターだ。


 フィアイーター化するにしたがって、足を含めた身長が成人男性程度に巨大化している。当然、本体の銃もだ。リボルバー部分を正面から見た円筒形の箇所に顔が浮かんでいる。

 元が銃だから、銃口が前に大きくせり出していて重そうだ。けどそれが原因で前傾姿勢になるとかはなくて、まっすぐ前を向いて立っている。

 スタイルいいな。それが厄介なんだけど。


 黒タイツの姿は見当たらない。別に出てきてないわけじゃないのだろう。保管庫はフィアイーターの後ろにある。そこで銃を調達して手探りで弾を込めて撃てるようにしている最中なんだと思う。

 フィアイーターは、それまでの時間稼ぎ、あるいは盾だ。


 先に駆けつけていた警官たちが、廊下の曲がり角に身を隠しながら銃を構えている。警官が発砲すればなにかと市民がうるさい時代だけど、警察署内で怪物相手なら文句を言う者もいるまい。彼らは遠慮なく自分の拳銃を撃っていた。


 人間の武器でもフィアイーターに傷はつけられる。とはいえ殺すには至ってないし、敵もかなり硬質な素材でできてるわけで。


「フィァァァァァァァ!」


 反撃が来た。奴の自慢の銃口が火を吹く。樋口も警官たちも慌てて退いたが、当然弾丸の方が速いわけで。当たらなかったのは運が良かっただけ。

 廊下の角となっている壁が大きく削れた。見れば、壁の他の箇所も削れたりへこんでたりしてる。


「ねえ。あの銃弾、弾数制限はある? 再装填の余地とかは?」

「装填する様子はなく、延々と撃って来てます!」

「あちゃー。無限に撃てるタイプね」


 ミラクルフォースの敵が仮にああいうタイプになった場合、確かに無限に撃ってきそうだ。危険すぎるな。


 背後からドタバタと足音が聞こえてきた。防弾盾に大きなヘルメット。重装備の機動隊だ。


「敵の本体は保管庫で武器の強奪を試みている模様! 可及的速やかに踏み込んで阻止する!」


 指揮官が声を張り上げて指示を出す。作戦を聞かれてまずい相手ではないから、これは正しい。敵に銃を奪われる前に制圧するって考え方も理解できる。

 出来るかどうかは、樋口にはわからなかった。


 盾を構えた機動隊がフィアイーターの前に姿を表して。


「フィアァァァァァァァ!」


 フィアイーターも敵を認識して発砲。


 明らかに通常の弾丸よりも巨大化していて威力も跳ね上がっている銃弾が機動隊の盾に当たる。幸いにして盾が破られることはなかったけれど、威力には耐えられずに数名の隊員が後ろに転倒してしまった。


「ほら回収して! もっと衝撃に強い陣形で挑みましょう!」


 少し期待してたのが外れたことに落胆しながらも、樋口は壁から身を出して機動隊員たちが隠れる手助けをした。

 数人で縦列を組んで接近すれば弾丸の威力に耐えられるかも。けど、それをした上でフィアイーターを盾で囲んで無力化するにはもっと人員が必要。


 そして、それが駆けつける暇はなかった。


「フィー!」

「フィー!」


 黒タイツの声が聞こえた。ちらりと様子を伺うと、黒一色の体の奴らが黒い拳銃を持っている。他にも警棒を手にしてる奴もいた。

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