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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第12章 仇敵

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12-22.新しい玩具

「ティアラ! 見て見て! 格好いい!」

「似合ってるよ、キエラ。もうちょっとかわいいのの方がいいかなもと思うけど」

「ええ! かわいいのも欲しいわ! 妖精の時や人間の姿の時は、そういうのを作ってもらいましょう!」


 酒井という男から義肢を作ってもらったキエラは大はしゃぎだった。


 貰ったのは、獣の姿の時の義肢。キエラの前右脚の先端にはめて固定する箇所と、足らない長さを補う金属製の棒だけで構成されたシンプルなもの。

 けれど棒の先端が尖っていて武器になっている。鋭い刃物みたいなものだ。


「あー。誰かを斬りたい! あの憎い魔法少女とか!」

「魔法少女って斬れるの?」

「やれるわよ! きっと! というわけで、早速使い心地を試してみましょう!」


 昨夜義肢を貰った時から、キエラは一晩かけてその使い方を練習していた。


 こういうのは、リハビリのプロの人なんかに教えてもらってやるものだけど、キエラの場合はそんなものはいらない。

 多少の苦労はしつつ、ゆっくり歩くくらいなら出来るようになった。もちろん、そんな体たらくで戦闘なんかできないのだけど。


「行けるわよ! こういうのは工夫が大事なの! さあティアラ手伝って!」


 と、キエラは左手で空間に穴を作り、人間の世界に向かった。


 この街の中で特に濃い魔力が流れる場所。近くにショッピングモールがある駅。ティアラが初めて魔法少女やフィアイーターと遭遇した場所へとキエラは向かった。

 魔力が濃いから、強いフィアイーターが出来ると考えたのだろうな。つまり戦いを有利に進められる。


「ねえ。あなた良いもの持ってるわね。使わせて」


 ギターケースを背負った若い男に、少女の姿のキエラが声をかけた。


 小さな女の子にそんなこと言われても、彼は困惑するだけだった。その子の片腕が途中から無いと気づいて、困惑はさらに深まった。

 そしてキエラはそんなことを気にする子じゃない。


 左手でコアをギターケースに押し付けた。すると中のギターが飛び出してきて、あっという間に大きくなって手足が生えた。

 持ち主の男と同じくらいの身長かな。エレキギターと呼ぶべき、派手な彩色のボディ。手足の材質は、生物的な肉のようだった。


「フィァァァァァァァァ!」


 フィアイーターが咆哮を上げる。さらに周りに、真っ黒な体のサブイーターも出現。駅構内で暴れ始めた。


 折しも通勤ラッシュの時間帯だったらしい。スーツや制服姿の人々が大勢いて、我先にと逃げ出した。

 そんな人たちの中で、ひとりだけ冷静な人がいた。短い髪のお姉さん。どこかで見たことがある気がするけど、誰だっけ……。



――――



「悠馬! 駅の方でフィアイーターが出たって!」


 部屋に遥が駆け込んできた。松葉杖で走るのは危ないから駄目だって指摘をしてる場合じゃない。


「らしいな。いくぞ。……樋口、酒井の対処は任せていいか?」

『ええ。地元の公安と協力して、保護の算段をつけるわ』

「頼んだ」


 電話を切って、部屋から出ながら今度は愛奈に電話をかける。


「姉ちゃん。駅にフィアイーターが出た」

『ええ! わたしの近くで出現しました! 今、人のいないところを探してるところ! さっさと戦います!』

「わかった。俺たちもすぐに行く」

『そうして! でもラッキーね! このタイミングで出てくれて! 電車も止まるでしょうし、仕事に行かない理由になる! 今日はお休みね!』

「おい! さっさと変身して、敵を倒して会社に行け!」

『あははー。ゆっくりやりましょう!』


 怒鳴りながらリビングに入ると、魔法少女三人は既に変身してラフィオも獣になっていた。


 俺も覆面を被り、ナイフをポケットに入れて準備を整える。そしてラフィオの背中にまたがって、家を飛び出した。



――――



 ティアラの見ている前で、フィアイーターたちが人々を襲う。混雑する時間帯だから避難も迅速にはいかず、逃げ遅れた人々をサブイーターが取り囲んで暴力を奮っていた。

 さらに駅の売店を荒らして掲示のポスターを破く。物を破壊しても恐怖は与えられないと思ったら、フィアイーターが倒された後の惨状を目にして恐怖する人もいると言う。

 だから目についたものを片っ端から壊すことが大事らしい。


 しかし破壊行為は長くは続かなかった。


「そこまでよ!」


 魔法少女の声が聞こえて、同時にサブイーターが何体か斬り捨てられた。人に暴力を奮っていたやつから優先的に倒されてるらしい。

 ピンク色の魔法少女。シャイニーセイバーだ。


「なーんだ。青いのじゃないんだ。どうせ殺すならそっちの方がいいのに」

「悪かったわね! けど殺すなんてできないでしょ? あなた……片腕無くなったそうじゃない」


 サブイーターをザクザク殺しながらセイバーが返事した。

 魔法少女たちはまだ、キエラが義肢を用意していることを知らない。


「ええ! だから武器を作ったの! さあ! みんな! やって!」

「フィアアアァァァァァ!」

「フィー!」

「フィー!」

「え、ちょっ! 一斉に来ないでよ!」


 フィアイーターとサブイーターの集団がセイバーに襲いかかる。この数を一度に相手するのは無理だとセイバーもわかっているのか、後ろに下がった。

 ちょうど自動改札の機械がある。その上に飛び乗って、よじ登ろうとするサブイーターを斬り捨てていく。


「フィアアアァァァァ!」


 ギターのフィアイーターが、自身の弦をかき鳴らした。すると大きな音が響き渡る。


「うわっ! うるさいっ! おっと!?」


 その音撃を真正面から浴びたセイバーは、音の大きさだけではなく圧まで受けた様子で、自動改札機の上でバランスを崩した。

 そこにサブイーターの一体が襲いかかった。


 が、サブイーターの手はセイバーには届かなかった。一本の矢がサブイーターの黒い後頭部に刺さって殺したから。セイバーはその間に、改札の向こう側に着地。


「ああもう! 良いところだったのに! 青いのはいつも邪魔をする!」


 キエラが怒った声をあげた。

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