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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第12章 仇敵

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12-21.悠馬のこと

 首を傾げながらリビングに向かった愛奈は、遥に話しかけた。


「ねえ。悠馬の様子が変なんだけど。なんか悪いもの食べた?」

「わたしかラフィオが作った物しか食べてません。てか、様子が変ってどういうことですか」

「わたしに日頃の感謝を口にしたの」

「……それは確かに変ですね。お姉さんは日頃から感謝されるような人じゃないですし、悠馬は人に感謝の気持ちを言うほど素直な人じゃない」

「お姉さんじゃないけどね。遥ちゃんも悠馬に、ちょっとあんまりな言い方してない?」

「素直な評価です。ほら。悠馬ってどこか、人の気持ちを気にかけない所あるじゃないですか。あと、お姉さんに感謝とか絶対にしません。仮に心の中で思ってても、恥ずかしがるから口にすることはありえません」

「まあ確かに」


 こいつらは俺をなんだと思ってるんだ。


 俺がこっそり聞いていることに気づかないふたりは、好き勝手に話し続ける。


「悠馬は確かにそんな子だけど……ねえ。じゃあ遥ちゃんはなんで悠馬のこと好きなのよ。性格は好みじゃない、みたいな言い方してるけど」

「別にわたし、男の子が誠実で優しかったら好きになるみたいな、ちょろい女じゃないので。性格の良さで好きになったりはしませんよ」

「じゃあ、結局なんでなの?」

「顔、でしょうか」

「いやいや」

「顔で好きになったっていうのは冗談ですけど、でも格好いいと思いますよ、悠馬は」

「それまあそうだけど」

「あとわたし、悠馬の性格が悪いとは言ってないですから。全体的に雑ではありますよ。けど頭はいいし、気遣いもできる。それは素敵じゃないですか。そしてワイルドさもある。だから頼れる所が好きです」

「あー。まあね。うん。優しい子ではないけど、悪い子でもない感じがいいのよね。わかる」

「おい。お前ら。悠馬が全部聞いてるぞ」


 アユムが、リビングへ続く扉の陰にいる俺に視線を向けながら呆れた声を出す。


 ありがとうな。出ていくタイミングを完全に見失っていた。


「あははー。ほらお姉さん、早くご飯食べて行ってください。洗い物はわたしがしておくので。悠馬、今日は何して遊ぼっか。デートとか行きたいな!」

「この状況でデート誘えるってどんな考え方してるのよ、あんたは。家でじっとしてなさい。いいわね?」

「はーい。まあ、急にお出かけしたくなることもあるかもですけどねー。ほらお姉さん、行った行った」

「まったく油断も隙もない。行ってくるわ。今日は早く帰るから」


 いつもよりも少しだけ慌ただしく、けれどいつも通りの平和な感じで、スーツ姿の愛奈は家を出ていった。


 その数分後に、樋口から電話が来た。酒井関係だと思われるから、みんなに会話を聞かれないように部屋に戻る。


「もしもし、朝早くからどうした?」

『昨日の夕方に、酒井の作業場である倉庫に簡易的な盗聴器を仕掛けたわ。そこから夜まで、特に動きはなかった。酒井和寿がひとりで作業をしているだけ。……深夜の様子については録音して、わたしの手元にデータ送信されるようにしたわ。さっき、めぼしい動きがないか確認したの』


 簡易的な盗聴器なのに、そんなことが出来るのか。公安の技術力も侮れない。


 そんな呑気なことを考えている俺と対照的に、樋口は少し切迫した様子だった。


『夜中に、キエラとティアラが倉庫を訪れていた。倉庫内に穴を開けて出入りしているのでしょうね。だから外からは動きが見えない』


 おい。どういうことだ。

 なんで酒井が、俺の家族を殺した奴が、キエラたちと交流を持っているんだ。なんの因果なんだ。


『キエラの右手に義手をつけたい……のだと思う。あの女の話し方はわかりにくいわ』


 そうだな。樋口の言うとおりだ。


 けど、いるのは確定だろう。キエラとティアラがいて、お互いの名前を呼び合っているのだろうな。

 キエラの腕の先が無くなったとして、義手を作る発想は自然だ。なんの因果か、酒井の所に来てしまった。


 あの男、キエラが悪人だとわかった上で協力しているのか?


『その心境はわからないわ。酒井和寿という男が、そこまで邪悪な心を持っているとは思えない。なにか事情があるのでしょうし、その事情は想像できる。お金が欲しいのよ』

「ああ……」


 家族に迷惑を掛けっぱなしだったから。

 だとしても、そんな手段で金を手に入れるなんて。


『一度罪を犯した人間が社会復帰の困難さから再犯するのは、よくあることよ。これは特殊なケースだけど』

「どうする? この男を逮捕するのか?」

『こっちとしては、違法な捜査をしてる段階だから、なんとも。けど本音を言えば身柄を確保したい。酒井和寿本人の安全のためにもね。キエラと関わって幸せになるとは思えない』

「保護か?」

『ええ。まあ。なんとか名目をつけてね。そこの事務的な手続きはこっちでやる。あなたたちは、キエラの攻撃に備えなさい』

「キエラが動くのか?」

『ええ。義手がひとつ、できたみたいだから――』


 そう伝えられた直後、スマホから警報音が鳴った。


 フィアイーターが出たのか。場所は、家の最寄り駅だった。


 今の時間、愛奈がいるはずだ。

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