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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第12章 仇敵

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12-16.便利屋樋口

「おー。悠馬もセイバーもおかえりー。フィアイーターは倒したっぽいねー」

「黒タイツが急に苦しみだして消えたからなー。それはわかった」

「とりあえず、帰るかい? 今から羽根突きを再開する気にもならないだろう?」


 さっきの公園に戻ると、ライナーたちが待っていた。セイバーの様子がおかしいことに気づいていないのか、いつも通りの接し方。


「ええ。帰りましょう。今日はなんか飲みたい気分ねー」

「お姉さん、そう言って毎日飲んでるじゃないですか」

「ええ。お酒はあればあるほど良いのよ。あとお姉さんじゃないから。ライナー、酒に合うおせち料理ってなにかしら。あとお雑煮も作って」

「はいはい、わかりましたよー。じゃあマンションまで行きますか。悠馬はわたしが背負いますね!」

「いいえ。わたしが」

「ここは、間をとってオレだな!」

「いや! なんでよ!?」

「まったく。君たちは相変わらずだね」


 ラフィオの言う通り、いつも通りのくだらない会話が繰り広げられているのを、俺は後ろから見つめていた。


 いつも通り故に、さっきのセイバーの反応が気になって仕方がなかった。


 あれを無視することはできない。たとえ愛奈本人が触れられたくないとしても。

 けれど本人に事情を聞くわけにもいかない。となれば探るには。


「もしもし樋口?」

『もしもし。新年早々誰を調べてほしいのかしら』

「調べ物って、なんでわかるんだ」

『あなたからわたしに連絡する時って、大抵そうでしょう?』


 確かにその通りだ。


「愛奈の様子がおかしいんだ」

『あの女がおかしいのは、いつものことでしょう?』

「そうなんだけど。普段と様子が違う。……ある家族を見た途端、なんというか……殺意みたいなものが見えた」

『殺意ね。一般市民のあなたが、そんなものわかるのかしら』

「俺は一般市民なのか?」

『公安からすればね。ちなみに公安は仕事の際に、殺意なんて目に見えない感情を頼りにすることは稀よ』

「そうなのか?」

『殺気とか、そういう感情があることは否定しないけどね。だから愛奈が、誰かを恨みたいって気持ちもあるんでしょう。それをひとりで抱えてしまってることも。健全とは言えないわよね』

「あ、ああ。なんとかしてあげたい」

『いいの? あなたが知れば、関わらなきゃいけなくなる。愛奈がそれを望むかは限らない』

「だとしても、放っておけない」

『……ええ。あなたはそういう人間。だからみんな惹かれる……ああもう。わかったわよ。調べるだけ調べてあげる。それから、どうするかはあなたが決めなさい。対象は何者?』

「酒井という家族だ」


 家の位置から住所は調べられる。それから名前があれば、公安なら素性を調べるのは容易だろう。

 なにがわかるのか、本当に俺が知っていいことなのかは不明。けど知らないわけにはいかなかった。


 電話を終えた俺はリビングに向かった。今日の愛奈はいつもより、酒の量が多い気がした。



――――



「まさか凧にコアが当たるなんてねー」

「ごめんなさい。あんまり強いフィアイーターにできなかった」

「いいのよ。こういうのは運だから。たまたま弱いフィアイーターができただけ。ティアラが気に病むことじゃないわ」


 鏡を通してフィアイーターの戦況を見つめていたキエラたちは、その結果を淡々と話し合っていた。

 そこまで暴れてくれたわけではないけど、恐怖はほどほどに集まった。悪くない結果だ。


「それより、片手がないって不便よね。なんというかさ。頭の中ではあるって気がするのよ。手や指を動かせる感覚になる。なんなら、ないはずの指先がなんか痛い気もするの」

「ファントムペインってやつだね」


 人間だった頃、クラスの男の子が話してるのを聞いたことがある。


「手って、あまりにも使い慣れたものだから。無くなっても頭がそれを忘れて、あるっていう感覚がしばらく残るの。ないはずの痛みを感じるのも、記憶がある影響」

「ティアラは物知りね。そっか。記憶のせいか……けど、早く慣れないとね」


 包帯が巻かれた腕を見つめるキエラ。ごろんと横になって、小さな妖精の姿になった。

 ピンク色の妖精であっても、右腕の先が無いのは同じ。たぶん大きくなっても変わらないのだろう。


「これが不便なのよね。二本足で歩くのはいける。けど、四本足では歩けない。歩こうとしたら、かなり大変。バランスも最悪」

「義手をつけたらいいんじゃないかな。義足、かもしれないけど」

「ぎしゅ?」

「無くなった手足の代わりにつけるもの。足が無くなっても歩けるように、代わりの足を作ってつけるの。手も同じはず」

「手の代わりなんてできるの?」

「そういうのが付いてる方が、無いよりずっといいんだよ。キエラの場合、獣の姿で歩けるように義足とか作るの、いいんじゃないかな」

「そんなことできるかしら」

「やってみたら? 義足を作る職人さんを探して、お願いするの。それか脅すか。お金をいっぱい渡せば、たぶん作ってくれるよ」


 キエラは人間じゃない、かなり特殊な存在。だから普通のやり方で作るわけにはいかないし、キエラの体に合わせた義足は普通ではない。


 非合法な手段で得たお金で、普通の手続き無しで作らせることになるだろうけど、別に構わない。いつものことだ。

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