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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第12章 仇敵

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12-13.フィアイーターはじめ

「ほらほらお姉さん。負けちゃったんだから、顔に落書きしなきゃいけないですよねー」


 すると遥が手に筆を持ってやってきた。さっき書き初めで使ったやつか。いつの間にか、家まで戻って取ってきたらしい。


 もちろん、遥ひとりで取りに行けるものではないから、アユムに車椅子を押してもらったようだ。

 で、羽根突きに負けると顔に墨が入るんだっけ。


「え、嫌よ。なんでそうなるのよ」

「だって負けたんですもん。仕方ないですねー」

「仕方なくないわよ! てか! 遥ちゃんにされるのもどうかって思うし! やられるにしても悠馬にでしょ!」

「それはそうですね! じゃあ悠馬、お姉さんに落書きして!」

「やらないからな」


 そういうのは、最初からこうするって決めてからやるものだ。


「むむむ。しかたない! こうなったら力ずくで! アユムちゃん取り押さえて!」

「いや、面倒だからしないけど」

「とりゃー!」


 賛同してくれる人がいなくても、遥は突き進むのみ。車椅子から跳ね上がるように立ったと思うと、そのまま愛奈に襲いかかった。


「ちょっ! 危ないからやめなさい!」


 もちろん遥は誰も止めなかったら、そのまま河原の石の上に落ちるわけで。正面に立ってる愛奈が咄嗟に支えようとしたから。

 筆の先が愛奈の頬を通った。そして遥は車椅子の上に戻される。


「こら! もっと自分の体を大事にしなさい! あと、筆を持って暴れちゃ駄目でしょ!」

「痛い! お姉さん痛いです! ごめんなさーい!」


 遥は愛奈に耳を引っ張られて怒られることになった。まあ、ちょっとはしゃぎすぎだな。


「君たちは何をしているんだ……」


 凧を抱えたラフィオが呆れ気味に言う。まったくだ。


「姉ちゃん。頬に墨がついてる」

「え? うわ本当だ」


 スマホのインカメで確認した愛奈が、どんよりとした声を出した。

 服にはかかってなかったけれど、頬に太い一文字が書かれていた。


「遥ちゃん?」

「ご、ごめんなさーい。だってお姉さんが悠馬といちゃいちゃしてるのが許さなくて!」

「そういうのじゃないわよ! まったく、悠馬、顔洗ってくる」

「俺も行くよ」


 愛奈を伴って、俺たちは一旦家に戻る。


 あまり反省してなさそうな遥は、今度はアユムやラフィオと羽根突きを始めたようだ。今度は墨とか無しでやれよ。



「あの子にも困ったものよね。楽しむのはいいんだけど」

「そうだな。俺と姉ちゃんが仲良くしてると嫉妬するっていうのも、わからないよな」

「ええ。姉弟なんだから、くっついて仲良くするくらい普通なのに」

「いや、それも普通ではない」

「わたしだって、悠馬といちゃいちゃしたいんだけど! 遥ちゃんが悠馬とデートに行くとかなったら、全力で邪魔したいし!」


 この女たちはもう駄目だ。


 頬に墨がついたままの愛奈がくっついて頬ずりしてくるのを避ける。まずは顔を洗え。

 家の中で上着を脱ぎ、ブラウス姿で洗面台の前に立って洗顔を始める愛奈にバスタオルを手渡してやった。


 この家も、だんだん住みやすくなってきたな。


「墨汁ってどうやったら落ちるのかしらねー。ゴシゴシして赤くなるのも困るし」

「そうだな。俺も詳しくは知らないけど」

「アニメとかで若い子が顔に墨塗ってるのは見たことあるけど、あれアニメだから許されるのよね。現実でやったら落とすの大変」

「そうなんだろうな」

「あと、アニメの子たちはメイクとかせずにあの顔だから、ガシガシ顔洗っても問題ないんでしょうね」

「そういうもの……なのか?」


 愛奈に話しかけられても、俺には答えづらい内容で。だから気のない返事しかできなくて、なんとか話題を逸らせないかと考えていると。

 スマホから警報音が鳴った。どうやら、新年一発目のフィアイーターが出たらしい。


 そんな話題逸しはいらなかった。


「え、嘘。こんな時に!? まだきれいになってないんだけど!?」

「仕方ないだろ。行くしかない」

「待って待って! 顔の汚れって、魔法少女に変身しても反映されるのかしら!?」

「わかんないけど、やってみたらいいんじゃないか?」

「嫌よ! そんな格好で人前に出たくない! もっとちゃんと洗ってくるから、悠馬は先に行ってて!」

「ああ。わかったよ」


 本当に世話の焼ける姉だ。


 スマホを見ると、つむぎからメッセージが来ていた。今、家族でお菓子作りをしている最中らしく、それを抜け出して駆けつけるのは難しいとのこと。

 本当に必要だったら頑張りますと添えられていたけど、久々の家族で過ごす楽しい時間を邪魔するのも気が引ける。


 俺たちでなんとかできる相手なら、それが一番だ。


「悠馬!」


 車椅子の遥と、それを押しているアユムやラフィオが家の前まで駆けつけてきた。


「現場はここの近くの公園だって。行こう」

「わかった。敵がどんな姿か、わかるか?」

「凧が変形したものらしいよ。飛んでるって」


 それは、つむぎの力がほしいなあ。



 車椅子からナイフを取り外して覆面を被ってから、大きな獣に変身したラフィオの上に乗って、とりあえず現場まで向かう。ここからそう離れていない、小さな公園。滑り台とブランコとシーソーとかが置いてある、どこにでもありそうな公園だ。


 この季節だから、小さい子供たちが凧揚げとかしててもおかしくはない。それがキエラに狙われたというわけだ。


 キエラか。大怪我を負ったはずだけど、どうしてるんだろう。今日は姿が見えないけど。

 ただ、黒タイツと空飛ぶフィアイーターがいるだけだった。

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