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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第12章 仇敵

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12-11.書き初め

 小さい子に文字を覚えてもらうことを主な目的とした知育玩具な側面もあるそれは、子供たちに人気のキャラクターで数種類展開されている。

 もちろんトンファー仮面のかるたもあるし、俺の知らないキャラクターのもあった。


「あとなんだっけー。凧? どんなのがあるのかなー。あ、ミラクルフォース柄の凧がある。これにしよっと」

「いや待て。いいのかそれで」

「いいのいいの。子供たちがこういう所から、日本の伝統文化を学ぶための商品だから」

「俺たち向けの商品ではないってことだからな」


 遥が嬉しそうだから、別にいいんだけど。


「なあ遥。お前、ミラクルフォース好きなのか? いや、毎週見てるのは知ってるけどさ。そんな、とりあえずミラクルフォースにするってくらいハマってるのか?」


 アユムが実に不思議だって様子で尋ねた。


「まあ、うん。確かに他にも好きな物はたくさんあるけどね。でもほら。同じ魔法少女だから。なんか親近感があって」

「なるほど」


 それ、納得するのか。


「お姉さんは、なにかやりたい遊びありますか?」

「お姉さんじゃないけど、体は動かしたくないわねー」

「らしい望みですね。すごろくとかボードゲームとかありますよ。なんか人生を模したゲームみたいなの」

「あー。なんか、勝手にお金持ちになっていくゲームね。夢があっていいわねー」


 箱がでかすぎて、ちょっと買うのは気が引けるサイズのボードゲームも取り扱っていた。この、人生を辿って金持ちになるゲーム、なんでこんなでかいんだろうな。


「まあ、これは今はいいか。ほら、さっさと買って遊ぶわよー」


 と、愛奈も少し弾んだ表情で促した。



 帰宅して、とりあえずラフィオの希望通りに石の交換から始めることに。

 と言っても、普段から小学生ふたりでやってることだ。石に籠もった魔力が見えるラフィオと、あとは俺がいれば十分。


「もうすぐで、向こうへ行く方法を確立できる。このペースなら、来月の半ばくらいだ。もう少しで戦いが終わるんだ」


 石を拾いながら、ラフィオは独り言のように呟いた。


 戦いの終わりか。いつの間にか、魔法少女たちとの関わりが日常になっていたけれど。それもいつかは終わるんだよな。


「あの女を殺して……」

「あんまり物騒なこと、外で言うもんじゃないぞ」

「これは失礼。けど、僕としては本気なんだよ」

「わかってるさ」


 少年の格好でそんなこと言って、周りに聞かれて不審に思われちゃいけないってことだ。


 河原では、この前みたいに野球チームが集団でトレーニングしている光景こそなかったけど、正月から体力を持て余した子供たちが来ていた。

 走り回ったりキャッチボールしたり。お正月らしく凧揚げしたり。


「平和だね。こういう世界を守るためにも」

「キエラを殺さなきゃいけない、か?」

「そうとも。必要なことなんだ」

「ああ。わかってるよ。ほら、帰るぞ」


 子供たちの姿をなんとなく目で追いながら、俺たちは家へと戻った。



「むむむ……改めてやると難しいわね、書道って」

「バランス良く書くのがなー。オレには無理だ」

「遥ちゃんはこういうの、得意そうよね」

「まあ、手先は器用なので」


 戻ると、魔法少女たちが半紙を前に真剣な顔をしていた。

 書き初めか。


「あ、悠馬おかえり。悠馬もなにか書くよね?」

「書かなきゃいけない雰囲気だな……」

「ほら悠馬、見て」


 愛奈が、今書いたばかりの書を俺に向けて掲げた。


「初日の出」と、迷いの多いヒョロヒョロの線で書かれていた。


「んー。なんというかお姉さん」

「なによ」

「下手とかそういうの以前に、今は二日の昼ですよ? 初日の出は昨日の朝にとっくに登ってます」

「し、知ってるわよ! でもほら! 書き初めの定番じゃない! お正月明けの教室に飾ってるものじゃない!」

「そうですけど、この日に書くものじゃないですよ」

「そういう遥ちゃんは何書いたのよ」

「こういうのは、新年の抱負とかを書くんですよ」


 と、半紙を掲げた。


「走る」と、迷いのない丁寧な文字で書かれていた。


「どうですか」

「ええ、まあ、そうね。字は綺麗よね。中身も個人の趣味だから、別に言うことないわよね」

「こういう書き方するんですよ。ちなみにアユムちゃんは?」

「お? オレか? 書けたぜ」


 アユムもまた、半紙を見せる。


「都会」と、力強いがかなりバランスの悪い文字で書かれていた。


 一文字目を大きく書きすぎて、二文字目のスペースがなくなり、小さく窮屈な感じで書いたのだろうな。


「あー。まあ、うん」

「俺はいいと思うぞ。複雑な字は大きく書いて、単純な方は小さくっていうのは、なんかプロっぽい」

「そ、そうか。うん、なんか言われてみたら、オレもうまく書けたって気がしてきたな」

「悠馬、アユムちゃんのこと甘やかすの、良くないと思うわよ」

「そうだよー。字の綺麗さとか、全然プロじゃないし。てか、悠馬たちも書いてよ」


 遥が筆を手渡した。なんで俺まで。まあいいけど。


 見せられた三人の作品を参考にして、いい書き初めを作ればいい。難しいことはない。書きたい文字をどんなバランスで書けば美しいかをあらかじめ計算すれば、あとは書くだけだ。

 俺は決断的に筆を運び、半紙に「ピラフ」と書いた。


 力強い太めの線。それが単純なカタカナを完璧なバランスで表現している。

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