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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第12章 仇敵

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12-10.お正月遊び

 正月ムードも、元日を過ぎればかなり落ち着いてくる。

 世間の商店では二日目から新春セールを始める所も多いらしく、県下の有力な商業施設や各種企業が新年バージョンのCMを流して来店を促している。


 俺はといえば、新年だからと欲しいものが急にできるわけでもないから、そんなCMには惑わされずに家でのんびり過ごしていた。

 他のみんなも同じだ。


 愛奈は結局、昨日はあの後さらに飲んで、いつものように俺に怒られながら自室へと戻った。

 会いたくない人というのが何者なのか、結局わからなかった。愛奈が言いたくないなら、無理に詮索するのも気が咎めた。


 だから釈然としない気持ちを抱えつつも忘れることにした。


 つむぎは隣の本来の自宅で家族と過ごしているらしい。動物園に行くとか行ってたけれど、その同行者としてラフィオを連れ去りに来る気配はない。

 明日にしたのかな。昨日は夫婦共に飲んでいたようだし、あのふたりは普段は過渡の飲酒はしてない印象。だから今頃二日酔いに苦しみつつ、団欒してるのかも。


 だからラフィオも、小さな妖精姿でプリンのカップを抱きしめながら、テレビをぼーっと見ていた。

 遥やアユムも同様。特に何をするというわけでもない。


 別に、みんなテレビの内容に興味があるわけじゃない。さほど売れてると言うわけじゃないレベルのタレントによる街ロケ番組。

 新年っぽい雰囲気を出してるけど、当然去年のうちに収録されたものだ。


 今年の運気上昇スポットはこれだ、みたいな説明と共に、都内のありがたーい謂れのある場所を巡っている。その謂れとやらも、神道仏教民間伝承風水の区別のない、無宗教な並びだ。

 日本人の宗教に節操がない性格は偉大だし、こういう番組作りにも便利だなあ。


 そんな、中身の無いことを考えていると。


「だああぁぁぁぁ! かったりぃ!」


 不意にアユムが大声と共に立ち上がった。


「うわっ。急にどうしたの」

「退屈だ! なんかこう、都会っぽい正月を過ごしてぇ!」

「都会っぽいお正月!? ……どんなんだろう? なんかこう、サイバーパンク正月、みたいな?」


 どんな正月なんだ。


 サイバーパンク正月は無いにしても、アユムには今ののんびりした過ごし方が性に合わないらしい。


「具体的にどんなことしたいかは、オレにもよくわかんないんだけどよ」

「ちなみにアユムちゃんの田舎のお正月の過ごし方は? 知り合いが挨拶して回る以外に。子供たちとか若い子は何してた?」

「子供たちは遊び回ってたな。あと、コマを回したり羽子板ついたり凧上げしたり」

「おー。お正月! って感じの遊びだねー」

「でも、田舎臭いだろ?」

「田舎臭いというより古臭い? いや、伝統的と言うべき?」

「古くからある遊びだけど、古い時代には大都市でされていたものだよ。それこそ江戸の町みたいな、その頃の日本の首都で楽しまれてきた遊びだ。だから田舎らしくはない」


 ラフィオがプリン容器に抱きつきながら言う。もっともな内容だけど、その姿勢はあまり格好良くはないな。


「そ、そうか。あれは都会の遊びだったのか……」

「そういう分類の仕方はどうかと思うけど、普通に今の都会の子も遊ぶよね。アユムちゃん、これを機会にやってみる?」

「お、おう。いいぜ。やろうやろう」

「凧とか羽子板とか、うちにはないぞ」

「駅前のショッピングセンター行けば売ってるでしょ。せっかくだから、お正月っぽいこと思いついた端からやっていきましょー!」


 テンション高めの遥を止める意味もあまり無いし、アユムもそれを望んでる節もある。


 ラフィオはといえば、いつつむぎから招集がかかるか気にしてる風はあるけれど。


「ついでにあの家で石の交換がしたいな。うん、行くか」


 俺のスマホを操作して、何かあったここに連絡しろとつむぎにメッセージを送ると、少年の姿になった。

 あとは愛奈だけど。


「姉ちゃん。みんなでお正月っぽいことするというか、凧上げとかしたいから出掛けるんだけど、姉ちゃんも来るか?」


 部屋に向かって呼びかける。どうせ、寝てるから勝手に行ってなさいみたいなこと言われると思うけど、一応だ。

 ところが。


「ええ。行くわ。ちょっと待ってて。準備するから」

「お、おう……」


 思ったより積極的な答えが返ってきた。どうしたんだ急に。

 昨夜の酒もあらかた抜けたのか、元気そうな様子だ。

 自分だけ家にいたくないとか、そんな気持ちもあるらしい。


 そして、五人で駅前のショッピングセンターへ行く。


「おー。書き初めセットだって。小学校の頃、書き初めの宿題とかなかった?」

「あー。オレの所にもあったぜ」

「やっぱりあるんだ。全国どこでも一緒なんだね。せっかくだから書き初めもしよっかー」


 するのか。いいけど。


「羽子板あるねー。お正月だからやるぞって人、実際はあんまり見ないけど。売ってるってことは需要あるんだなー。あ、かるたも売ってる」


 それも定番の正月遊びだな。小倉百人一首で、上の句を読んで下の句を取る遊び。

 なんか派手な絵がついてる方じゃなくて、地味な字だけの方を取り合うのは逆ではないかと、小さい頃思っていた。


「よし、買おう。ミラクルフォースかるた」

「そっちかよ」


 百人一首じゃなくて、五十音のかるたを遥は手に取った。

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