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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-46.何を撃つ?

 遠慮なしにバスに突っ込んだフィアイーターは大して痛みを感じた様子もなく、さらにもうひと押ししてバスを横転させた。


「おいこら! なにしやがる!?」


 上を向いたバスの窓からバーサーカーが顔を出して抗議した。


「悠馬ー! 大丈夫!?」


 俺を気遣う声をかけながらライナーが駆け寄ってくる。


「ああ。無事だ」

「おいライナー! オレの心配もしてくれ!」

「バーサーカーは魔法少女だから大丈夫でしょ?」

「怖かったんだよ! 急にぶつかってきて!」

「フィアアアアアァァァァ!!」

「うわ! まだ押してきやがる!」


 バスの中に敵がいると認識したトラックが、バーサーカーを睨みつけながらゴツンゴツンと攻撃を続ける。


「くっそ舐めやがって! オレを殺してえかよそうかよ! いいぜ相手になってやるよ!」


 窓から飛び出したバーサーカーが車体を踏みしめながら接近し、トラックのフロントガラスを蹴る。

 フィアイーターも痛がって両腕を振り、なんとかバーサーカーを捕まえようとした。


「うおっ!? 危なっ!」


 バーサーカーはそれを危なっかしい動きでなんとか回避する。足場が広さのあまりないバスの側面で、しかも大きく歪んでいて動きにくい場所だから、バーサーカーもかなり苦労してる様子。


「おー。いいステップだねー! バーサーカー頑張って!」

「おいライナー! おめぇも手伝え!」

「ライナー! こいつの相手! 一旦お願いします! レールガンの充電が完了したみたいなので!」

「わかった! ティアラの相手だね!」

「おい! だから! オレの手伝い! なあ!」


 澁谷からなんらかの合図が送られてきたらしい。ラフィオがハンターを連れて電源車の方へ戻っていく。


「ラフィオ! 次はあの街頭を折るんだよね!?」

「そうだね! キエラを直接狙撃できたら嬉しいけど!」

「戦ってる時なら誰かを巻き込みそうで怖いよね!」


 戦いの最中なのに、少し楽しそうにお喋りするふたり。仲がいい。

 ライナーはすぐさまティアラの前に立ち塞がった。


「ティアラちゃん。悪いけど、あなたのこと倒させてもらいます」

「倒せるの?」

「わかんない」


 人の形をした物の命を奪うことに、ライナーはまだ躊躇いがあるらしい。

 でも。


「わかんないけど! あんたをボコボコにすれば戦いが楽になります! そこに遠慮はありません! というわけで、ティアラちゃん覚悟!」


 ライナーはティアラに向かって駆け出し、あっという間に肉薄。鋭いキックを放った。ティアラもまた手でライナーの足を押して軌道を逸らせて回避。


「頑張ってティアラ! あんたたちも手伝うの!」

「フィー!」

「フィー!」


 キエラの声がして、黒タイツたちがライナーの周りを取り囲む。もちろんそうはさせないけど。


「お前の相手は俺だよ!」

「僕も忘れてないかい?」


 俺と剛が揃って黒タイツを片付けていく。武器を持ってない俺は奴らをぶん殴って、とどめは剛に任せる流れにする。一応、自分でも殺せはするけど、こっちの方が効率はいい。

 どこかで武器を調達したいけど、周りにあるのは車の残骸と壊れた窓ガラスの破片くらい。


 細かな破片を掴んで投げるとかは無理だな。けど。


「やってみようか」

「フィ?」


 黒タイツの胸ぐらを掴んで、近くの車の窓に押し付ける。何かの衝撃で元々ヒビが入っていたそれが、衝撃で割れた。


 黒タイツの首を、窓枠のまだ破片が残っている箇所に擦りつければ、やがて奴は動かなくなった。


 同時に俺の手首の甲の方にも少し切り傷。うん、ちょっと危ない真似だったな。


 ティアラの方を見ると、ライナーの気迫に押されているようだった。今も、ティアラの脇腹に回し蹴りが当たったところだ。

 苦悶の声がティアラの口から漏れて、一方後ろに下がる。そしてライナーはそれ以上の速さで接近。


「くらえ!」

「嫌!」


 再度の回し蹴りをティアラはなんとか避けて、逆にライナーを殴ろうとする。けどライナーは素早く二本の足を地面につけて、巧みなステップでこれを回避。姿勢を低くしながら両手を地面につけて、それを支えにしながらティアラの膝を両足で蹴った。


 行ける。このまま押し込める。殺せはしなくても、大きなダメージを与えられそうだ。


「ティアラ! 頑張って! あなたなら勝てる!」


 少し離れたところで、キエラが応援していた。獣になれない以上は何もできず、ただ離れた所で見ているだけ。

 そう、離れたところにいる。


 さっきラフィオたちはなんて言ってた?



――――



「ただいまです!」


 戦闘に巻き込まれない程度の距離を保ちつつ、それでも可能な限り近づいていた電源車に、ラフィオとハンターは戻ってくる。そしてすかさず屋根に飛び乗った。

 発電機とコードが繋がったままのレールガンをハンターが担いで、猫柄のエプロンで肩から吊るすようにして狙いを定める。


「電灯のフィアイーターは狙えそうか?」


 ラフィオが見ている前で、そのフィアイーターはセイバーと激しくやり合っている。


 金属製の手足がセイバーの剣とぶつかり合い、火花を散らしている。フィアイーターの腕は細長く、剣で断ち切れない太さではない。事実、奴の指がいつくかアスファルトの上に転がっていた。

 しかし腕自体を切断するのは、不可能でないにしろ苦労してる様子。腕の先端あたりに切れ込みが入っていたりして、もうひと押しというところなんだけど。


「ああもう! うざい!」


 セイバーの叫びがこっちまで聞こえてくる。

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