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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-42.それぞれの戦い

 その間俺は、襲いかかってくる黒タイツの対処だ。一体の首根っこを掴んで車の縁にぶつける。車の下面ってこんな風になっていたんだなとぼんやり思いながら、堅いその面に黒タイツの顔面を叩きつけた。それも繰り返し。死ぬまで。


 死んだらそれ以上繰り返すわけにはいかない。他の黒タイツが次々に襲ってきて、その対処をしなきゃいけないから。気絶した警官に肩を貸して安全な所まで運ぼうとする樋口も守らないと。

 そんな樋口に黒タイツが側面から襲いかかって。


「させないよ」


 赤い魔法少女がその黒タイツをトンファーでぶん殴って昏倒させる。


「剛、来てくれたか」

「もちろんだよ。悠馬、これを」


 剛は俺に鉄パイプを放り投げた。棒術の武器として使えるもの。


「樋口さん。麻美さんが向こうの建物の裏にいます。その人を預けて、逃してください」

「ありがとう。すぐ戻るわ」


 樋口本人にも休むつもりはない。

 それだけ敵が多いからな。


 俺は鉄パイプを振り、黒タイツの足を引っ掛けて転ばせてから首を突く。


 黒タイツをどれだけ倒してもあまり意味がないことはわかっていた。倒すべきはあくまでフィアイーターであり、トラックとバスと街灯のフィアイーターが少し離れたところで暴れているのが見えた。

 そして。


「みぎゃー!?」


 ライナーの体が回転しながら宙を舞い、こっちに飛んできた。停まっていた車の一台に激突して屋根を大きくひしゃげさせる。


「ライナー!? おい大丈夫か!?」

「痛た……だ、大丈夫です!」


 屋根に大の字に寝そべったまま、俺を見て得意げな顔をしながら親指を立てた。

 それをする余裕があるなら大丈夫なのか。


「いやー。フィアイーターに囲まれた優花里さんたちの退路を作ろうとして。無茶しちゃった。トラックに跳ねられるって痛いねー」

「そのまま異世界とかに行かなくて良かったよ。ライナー、立てるかい?」

「はい、先輩。優花里さんたち、一応は包囲網から出られました。けどまた追いつかれると思います」

「助けよう」


 車から降りたライナーと剛の会話を聞きつつ、俺は既にフィアイーターの方に走っていた。


 その途中にも黒タイツがいたから、ちゃんと首のあたりを狙って棒で打つ。昏倒した黒タイツはそのままにしておくと、後を追いかけるライナーが狙いを定めて。


「喰らえ! 殺人キック!」


 物騒なことを叫びながら黒タイツを蹴り上げて殺す。その遺体は消滅する前に、さっきのライナーと同じように宙を舞ってトラックのフィアイーターの荷台部分に激突。大きくへこませた。


「よしっ! わたしの痛みを思い知ったか! ううんわたしはもっと痛かった! さらにボコボコにしてやる!」


 ぶつかられた恨みは相当なものらしく、ライナーは俺を追い抜いてトラックへと突っ込んでいく。


 その謎のテンションにトラックのフィアイーターは引いているけど、相対することにしたらしい。そしてライナーを、もう一台の車であるバスのフィアイーターが狙っていた。横から跳ねるつもりだったか。

 そうはならなかった。


 次の瞬間、走っているバスの後輪がレールガンに撃ち抜かれて大破したから。



――――



「ラフィオ! どのフィアイーター狙おっか!? 一番大きなバス!? それか細長い街灯さん!? あの街灯、ど真ん中撃ち抜けばぽっきり折れそう!」

「その光景はちょっと見てみたいな!」


 テレビもふもふの電源車と合流したラフィオたちは、戦いの現場が見れる場所に位置取って狙いを定めていた。

 すると澁谷がしたから声をかけてきて。


「バスの中に取り残された人たちがいるらしいです! 撃つ時は気をつけてください!」

「わかりました! じゃあラフィオ、街灯さん狙おっか!」

「いや、待て。バスの方がいい。中の人を傷つけないように動きを止めて助けないと」

「……確かに!」


 取り残された人たちは今頃怖がっているはずだ。その恐怖こそキエラたちが求めるもの。与え続ける気はない。


「充電完了! いつでも撃てるよー」

「ハンターのタイミングで撃ってくれ」

「うん! とりゃー!」


 レールガンの弾丸はバスの片方の後輪に直撃、大破させた。


 走行中だったバスは姿勢を大きく傾かせた。後ろの車体がアスファルトに擦れて火花を散らす。そして動きが止まった。


「澁谷さん充電お願いします! もう一回撃つかもしれないので! ラフィオ行こ!」

「ああ! わかってる!」


 背中の弓を手に取って構えたハンターを乗せて、ラフィオは電源車の屋根から飛び降りて現場へと走る。


 ハンターが邪魔な黒タイツを数体射抜いてから、修復が始まっているバスの後輪に矢を放ってこれを阻害。

 中に恐怖の源があるからか、回復が速いな。ホイール部分に矢が刺さったまま元に戻れば、スムーズな走行はできなくなるだろうけど。


 とにかく中の人の救出を急がないと。



――――



 動きが止まったバスに俺は近づいていく。


 フィアイーターたちが狙っていた優花里たちの姿は見えない。車やらガードレールやら障害物が多く、どこかに隠れているのかもしれないけど。

 ライナーがトラックの運転席付近に横から強烈な飛び蹴りを放っていた。ドアが歪んでいるけど、フィアイーターは構いもせずに腕を振り回してライナーを排除しようとしていた。

 それから。


「おー。細長いフィアイーターね。これはこれは……斬りやすそう!」


 電灯のフィアイーターの前にセイバーが立っている。細長い手足で蹴るか掴むかを試みているフィアイーターの攻撃を、セイバーは巧みに避けていた。そして迫る金属製の手に剣を振り返す。

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