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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-38.悠馬独占禁止法

 というわけで、しばらく見たら俺もラフィオを手伝ってやる。アユムも見かねて加勢してくれた。

 モフモフ絡みとなると驚異的な身体能力を発揮するつむぎを止めるのは大変だったけど、三人がかりでなんとかした。


「やー。つむぎちゃんの情熱はすごいねー」


 身体的な問題で加勢できなかった遥が呑気そうに声をかけてきた。自分で車椅子動かせるのに、愛奈に押させている。

 周りに人も多いし、この方が安全なのはわかるけど。


「じゃあ、水族館の中に入ってみようか」

「むー。魚はモフモフじゃないから……後でもう一回ペンギン見てもいいですか?」

「いいよー」

「僕は嫌なんだけどね。でもまあ、つむぎを疲れさせておけば後は少しだけマシになるかも」

「あ、この水族館魚って以外にも、カワウソとかはいた気がする」

「カワウソさん!? 行きましょう行きましょう! モフモフしましょう!」

「おいこら! 待て!」


 駆け出すつむぎを、ラフィオが慌てて追いかける。ラフィオが先に疲れそうだな。


 カワウソやアザラシみたいな動物を見ればつむぎは興奮するけれど、普通の魚を見ているだけならおとなしい。

 そういうわけで、俺たちはさっきと比べればかなり落ち着いた時間を水族館で過ごしていた。


「どうだいつむぎ、泳いでる魚も悪くはないだろう?」

「うん。水の中で気持ちよさそう……なんかの魚さん」


 つむぎも、魚には詳しくないようだ。俺たちと一緒だな。


 それでも、ゆらゆらと水中を泳ぐ魚たちを眺めること自体は楽しいと思っている様子だ。


「あー。クラゲさんもいいよねー」

「そうだね。プカプカ浮いてて気持ち良さそうだ」

「何考えながら浮かんでるんだろうね」

「わからないけど、何も考えてないのかもね」

「そんな動きしてるねー」


 クラゲコーナーであまり中身のない話をしてるけど、楽しそうだった。


「オレ、生きてるクラゲって生で見るの初めてだ」

「水族館くらいでしか見ないもんな」

「ああ。なんか、癒やされるな」

「これをずっと見たいから、クラゲ飼う人だっているぞ」

「マジか。いやでも気持ちはわかる。すげえわかる……。マジでずっと見てられる」


 アユムも俺の隣で感慨深そうにしている。初めての体験を、こうも感動と共に受け入れられる性格は素晴らしい。


「ねえお姉さん。なんでアユムちゃんが悠馬の隣なんでしょう。わたしや、百歩譲ってお姉さんじゃなくて」

「お姉さんじゃないのよ。でも言いたいことはわかるわ。もうクリスマスじゃなくて、デートは終わったはずなのに」

「悠馬独占禁止法違反ですよね」


 なんだその法律は。


「よし、遥ちゃん行くわよ。車椅子でアユムちゃんに激突して隣の位置を奪いましょう」

「車椅子をそんな乱暴な使い方しないでください。普通に、悠馬の反対側に行けばいいだけじゃないですか」

「それはそう。でも突撃ー」

「あ! こらやめてください!」


 このふたりは何をしてるのか。

 さすがに愛奈にも良識はあって、アユムに激突することはなかった。その代わり、俺の隣に来て。


「折衷案」

「急にどうした」

「三人で悠馬を囲むフォーメーションで行こうと思うの。なんかこう、悠馬独占禁止法を遵守するために」


 愛奈もその謎法律に乗っかるのか。


「みんな悠馬を独占したいけど、それをしたら喧嘩になる。それこそ、地上が荒野と成り果てるわね」

「お前らそんなにガチでやり合うつもりなのか?」

「本気出せば、全員魔法少女だからね」

「ああ。面倒くさい」


 ふたりの関係が出来上がってるラフィオとつむぎが羨ましく思えてきた。


 結局、俺が遥の車椅子を押して、愛奈とアユムが俺の両サイドを挟むような形で歩く。いや、なんだこれは。マジで包囲されてる気がする。


「イルカショーの時間だって。見に行こう見に行こう」

「おー。イルカって生で見たことねえな。一度見てみたかったんだよな、イルカショー」

「この水族館、ショーの見せ方も気合い入ってるから。見る価値はあるわよー」


 女どもの声がサラウンドシステムで聞こえてくる。マジでなんなんだろうな、これ。心の中でため息をつきながら、俺は車椅子を運んでいった。



 とはいえ、模布港水族館のイルカショーが面白いのは本当で。


「うおおっ!? すげえ! イルカ近い! うわすげぇ飛んでる! イルカってこんなジャンプできるのか!? てか泳ぐのすげぇ速い!」


 アユムが興奮している。


「うん。イルカって速いよね。……わたしの方が速いかな?」


 遥は謎の対抗意識を燃やしている。


 イルカたちはプールの中で自在に泳ぎ回り跳ね周り、吊り下げられたボールを突いたり輪っかをくぐったりしてる。

 そのスピード感が凄すぎて、俺たちは始終圧倒されていた。地元民は何回か見ている定番のショーなのだけど、模布港水族館はマンネリを許さない。常にショーに変革をもたらそうと努力をしていて、より迫力あるイルカの動きを見せつけていた。


 なんて偉大な水族館なのだろう。


 もちろん、この模布港水族館にも変わらないものはある。それが。


「わー。潜水服さん! 修理して貰ったんですね!」


 フィアイーターの被害から修復が完了した、深海コーナーにある潜水服だ。見つけた途端、つむぎが駆け寄っていく。

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