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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-37.冬の水族館

 その日は麻美も澁谷もハメを外したように酒を飲んで、完全に出来上がった状態で帰っていった。たぶん、剛がふたりを家まで連れて行ってくれるだろう。澁谷の家がどこかは俺も知らないけど。

 そして残った未成年者たちで宴の片付けをする。料理はあらかた食べてしまったから、洗い物とゴミの片付けくらい。簡単なことだ。


「あー。クリスマスも終わっちゃうなー」


 キッチンで皿を洗いながら、遥が名残惜しそうな声を上げる。


「まあな。オレもここまで楽しいクリスマスは初めてで……来年もやろうな」

「うん。やろうやろう。心配事をぜーんぶ片付けてね!」

「そうだな」


 なんとなく、みんな頭の片隅にあるのだろう。米原優花里のことが。


「悠馬。樋口から連絡はあったかい?」

「いや、ない」


 そろそろ深夜だ。今の時間まで働いてるのか、あるいは疲れて帰って寝ているのか。

 今は、そっとしてやるべきだろうな。


「そうか。まあ、僕たちの力が必要になれば向こうから連絡するだろうさ。キエラは怪我を負って、すぐには動けないだろう。今はのんびりと待とう」

「そうだな」

「ねえラフィオ、明日お出かけしよ! クリスマスのデートはできなかったけど、日曜日だし遊びに行きたい!」

「おっと。……いいよ。どこに行きたい?」


 つむぎが後ろから抱きついてきて、ラフィオはそれに大して動じることなく受け答えしている。

 のんびり待つか。それを実践しているところなのだろう。


「水族館! ペンギンの行進見たい!」

「なるほど。いいよ。みんなも来るかい? 小学生だけの遠出は危険だろ?」

「もちろん行くよー! 悠馬もアユムちゃんも来るよね!」

「ああ。オレ、水族館行ったことないから楽しみだ」

「そうだな。行こうか。愛奈も来るかな」

「元々愛奈さんが、悠馬とのクリスマスデートとして行きたいって言ってたもんね。ふたりきりじゃなくても、行きたいものじゃないかな」

「どうかな。ふたりきりに意味があるのかしれない。いやでも、単に姉ちゃんが水族館に行きたいだけかもしれないしな」

「愛奈さん、そんな水族館好きなの?」

「姉ちゃんが好きっていうか、亡くなった兄貴の思い出の場所だから行くというか」


 スマホで調べてみる。


 模布港水族館のシンボルである潜水服の人形は、以前フィアイーターにされたせいで壊れてしまった。

 その修復が完了して再び展示が始まったというニュース記事が、一週間ほど前の日付で掲載されていた。


「うん。俺も姉ちゃんと行きたいから、明日起きたら誘ってみる」

「むう……わたしが言い出したことなんだけどなー」


 俺が愛奈に構うのが気に入らないのか、遥が口を尖らせた。


 そんなこと言うなよ。みんなで出掛けたいことだってあるさ。



 翌朝、サンタクロース姿のまま起きた愛奈に告げると。


「うー。わかった。行きましょう。ちょっと待ってて。酔いが覚めたら行くから。もっとお水持ってきて」

「わかった」

「服装はこのままでいい?」

「なんでだよ」


 クリスマスは終わったぞ。ミニスカサンタで外に出ようとするな。


「よそ行きの服に着替えろ。俺が見てない間に」

「はーい……すぐ着替えます」

「だから」


 俺が見てる前でサンタ服を脱ぐ愛奈から、慌てて目を逸した。わざとなのか、まだ酒が残ってるからなのか。

 中身を飲み干した愛奈のコップを掴んで、俺はキッチンに向かった。


 あれだけ酔っていた愛奈も、数十分すればだいぶ落ち着いた。

 六人で揃って駅まで向かう際には、愛奈が千鳥足で歩くみたいなことには当然ならなかった。


「たとえ酔っ払ってても、まともな社会人を装う術は身につけてるのよ」

「まず、酔っ払わないようにしてくれ」

「ラフィオ、そろそろ駅だからモフモフになってね」

「わかった。わかったから。自分でできるから。くすぐろうとするな」

「えへへー」


 ポンと音がして、ラフィオが妖精になってつむぎの腕に収まる。


 モフモフされるのは嬉しくなさそうだけど、つむぎと触れること自体は心地よく思っているのか、ラフィオは抱きしめられながら目を閉じていた。


 電車に乗って港まで向かう。冬の海もきれいだった。

 おそらく昨日まではクリスマスっぽい飾りがされていたらしい駅構内も、その面影はなくなっている。次は年が変わると同時にお正月飾りがなされることだろう。


 休日ということもあって、水族館は混んでいた。けどぎゅうぎゅう詰めで進めないとか、そんなことはなくて。


「わー! ペンギンさんだ! かわいい!」


 冬の期間の集客イベントとなっているペンギン大行進は、水族館の建物の外でやっていた。

 柵に覆われたスペースをペンギンがヨチヨチ歩いている。


 ペンギンの種類は様々あって、どれがなんて名前なのかはわからない。けど、種族の違うペンギンでも仲良く並んで歩く姿はかわいかった。


「これがペンギンか。本物は初めて見たけど、すげぇな」

「かわいいよな」

「モフモフですしね! ペンギンさん! こっちきて! モフモフさせて!」

「おい! やめろつむぎ! 中に入ろうとするな!」

「ペンギンさーん!」

「ぐぬぬぬ!」


 柵を乗り越えん勢いのつむぎを、ラフィオが必死に引き止めていた。


 確かにペンギンはかわいいからな。けど、モフモフするのはかわいそうだよな。

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