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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-34.世界は平和だった

 あの後、樋口に連絡を取ろうとした。けどメッセージを送っても返事が来ない。既読はつくから見てはいるのだろうけど、それどころではないのだろう。

 こっちに取り残された優花里はこれからどうなるのか。人間のフィアイーターを、世間はどう受け止めるのか。


 かなり深刻な事態になってしまってる気はするのだけど。


「よし! じゃあ帰りましょうか! クリスマスパーティーするわよ!」

「おい」


 みんな深刻な顔をして、これからどうするべきかを考えている中で、セイバーが明るい声を上げた。

 なんて空気の読めない行動。けどセイバーも譲れないらしくて。


「優花里さんのことは心配ね。けど、それは樋口さんがなんとかしてくれる。わたしたちまで深刻で沈んだ気分でいる必要はないわ」

「それは……まあ。そうだろうけど」

「だから! せっかくのクリスマスだし、わたしたちは楽しむべき! 自粛なんか勿体ない! それこそキエラの思うつぼよ!」


 そんなものか、という気はしてきた。


「樋口さんが後でパーティー来れるって言った時のために、お酒の追加も買いたいわねー」

「おいこら」


 結局飲みたいだけじゃないか。


 いや、いいんだけど。愛奈なりに、みんなを元気づけようとしてるのはわかる。


「そうですね。お姉さんの言うとおりです。じゃあ、わたしたちは先に帰って料理の続きしますね!」

「お姉さん言うな。悠馬はどうする? わたしに抱えられて帰る?」

「そうする。あ、待ってくれ。買い物したのを隠してるんだ。みんなへのお土産」

「おー。デート行かなかった代わりにお土産買うなんて。悠馬もやるじゃない。何買ったの?」

「デパ地下の、イカの沖漬け」

「……渋くない? まあ美味しそうだからいいけど。麻美、あなたも来るわよね?」

「はい。剛くんと一緒に電車で向かいますね。澁谷さんにも来れないか連絡してみます」

「澁谷さん忙しくないの?」

「わたしたちと関係を持つことも仕事だと考えて、来ると思いますよ」

「それもそっか。じゃあよろしくね。あ、お酒たくさん買ってきて!」

「はい先輩! 飲みきれないくらい買います! また後で!」


 パーティーを強行しようとする愛奈の心情を汲んで、麻美も笑顔で受け答えする。

 そういうわけで、俺はセイバーに抱えられてマンションに戻っていく。


「あ! おい! オレとのデートの途中だったんだぞ! 一応、まだ終わってないからな! オレが運ぶべきだろ!」


 俺ではなく、みんなのために買ったお土産を抱えたバーサーカーが文句を言いながら追いかけてくる。もちろんライナーも、ハンターを乗せたラフィオもついてきた。

 屋根から屋根へ飛び移る。下界の人間に見つからないように、慎重にしかし急いで移動する。何度も繰り返せば魔法少女たちも慣れたものになったらしい。


 その途中、クリスマスの街が見えた。布栄では騒ぎになったけど、それ以外の場所では平和そのもの。駅前商店街みたいな規模の街でも、それなりにクリスマスの催しをやっていて。


 世界は平和だった。


「ただいまー。さあ、みんなディナーの用意をしてね。わたしは一足先に飲みます」

「お姉さん、そういうこと平気でできちゃうのがすこいですよね。年長者として自分もなにかしようとか思わないんですか?」

「思いません! おー。これがイカの沖漬け。あといかとんび。さらにイカ飯。イカが彩るクリスマス……。お、ぬいぐるみだ」

「これはつむぎのために」

「ネズミさんだー!」


 ぬいぐるみはつむぎの手に握られ、抱きしめられる。ぬいぐるみだから苦しそうとかはない。いや、もしこのぬいぐるみが生きてたら、今頃とても苦しんでいるだろうけれど。


「あ、かわいいお皿。ありがとね、悠馬」

「おお。このプリン、テレビで紹介されてたやつだ。こんなところで手に入るとは。悠馬ありがとう。どこかでお礼をしないとね」


 遥も喜んでくれているし、ラフィオは目を輝かせてる。


「悠馬ー。お酒持ってきて!」


 愛奈だけが平常運転だ。テーブルの上にイカ料理を並べて、後は酒を待つだけ。

 俺は華麗に無視した。クリスマスのパーティーをやりたい気持ちは尊重するけど、だったら愛奈も働け。


「俺も料理手伝おうか?」

「悠馬がそんなこと言う日が来るとはねー。お弁当が上手くできたの、相当嬉しかったんだ」

「まあ、うん」

「いいよ。簡単なことから始めていこっかー」


 キッチンで遥と並んで立っていると、愛奈が寂しそうな目を向けた。やめろ。黙って見るな。


 とはいえうちのキッチンもそんなに広いわけじゃない。そんな何人も同時に立つのは無理で。

 俺はできた料理をテーブルまで運ぶ役になってしまった。まあいいさ。さすがに俺もやる気を出しただけじゃ、クリスマスディナーなんて作れない。見てくれよこの鳥のロースト。どうやって作ったのか俺にはまったくわからない。


 そして、テーブルから愛奈がいなくなっていた。


「あいつどこ行ったんだ」

「じゃーん! メリークリスマス!」

「……なにやってんだ」


 リビングに、ミニスカサンタの格好をした愛奈が入ってきた。勢いのいい登場でスカートが翻って、とても危うい。


「あー! それわたしが前に着たやつ!」

「ふふん。せっかくなので着てみました! どう? 似合う?」


 その場で一回転する愛奈。やめろスカートめくれるから。


 ニコニコ園で遥が着てた時は、ずっと座ってたからその心配はなかったけど。結構スカートが短くてヒラヒラしている。遥も座ってる前提だから着れたんだな。


「ふふん。なんかみんな忙しそうで、わたしひとりだけ怠けてるみたいな雰囲気だったからねー」


 みたいじゃなくて、その通りなんだよ。


「だから! クリスマスっぽい雰囲気作りのためにサンタさんになってみました! こんな美人のサンタさんがいたら、悠馬ってばもうドキドキしちゃって」

「酒やるから座ってろ」

「え? はい」


 立たれてるとスカートに視線が向いてしまって、なんともやりにくい。姉の下着とか絶対に見たくない。見たくないけど自然に向いてしまう自分が情けない。

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