表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

548/746

11-31.馬鹿の戦い方

「えっとね、ティアラちゃん、おとなしくしてくれると嬉しいな!」

「嫌! わたしのこと殺すつもりでしょ!?」

「まあそうだけど……いや、どうなのかな。わたしセイバーほど覚悟決まってないしな……」


 ライナーはティアラと対峙しながら、終わりの見えない話し合いをしていた。


 お互いに譲れないものがあるし、妥協点を見い出せるほどお互いに大人ではない。そして立場も違いすぎる。同じ歳の女子高生なのに、絶対にわかり合えない。

 ライナーはそれを理解していた。わかっているけど辛いし、この元女子高生を殺すことには抵抗があった。人の姿をしていて、人と同じように考えて話す相手。殺せるはずがない。


 愛奈さんは本当にすごいな。


 だからライナーは足を活かしてティアラの進行方向に回り込んで足止めするしかできなかった。

 けど直後に、背後から悲鳴が聞こえた。女の子の声。味方の誰かが負傷したのかと、ライナーは少しだけ振り返った。ティアラもそっちを見たはず。


 キエラが矢を受けていた。


「キエラ!?」

「わっ!?」


 次の瞬間、ティアラが猛ダッシュしてきた。もちろんハンターの脚力には劣るけど、その瞬間の彼女の様子は鬼気迫るもので。

 正面衝突したハンターは力負けしてしまった。素早くとも、単純な力比べでは勝てるかは微妙。ティアラだって怪物なのだから。


 突き飛ばされたハンターに一瞥もせずに、ティアラはキエラを庇うように立ち、迫る矢を手で弾いた。


「キエラ! 小さくなって!」

「え、ええ! でもあいつが! あの女が!」

「それは後!」


 小さな少女となったキエラの肩に、矢が刺さっている。その小さな体をティアラは軽々と持ち上げながら、エデルード世界へと通じる穴を虚空に作り出し、くぐる。

 こちらが追いかける前に、穴は消えてしまった。



――――



 サンタクロースのフィアイーターが暴れている。中にプレゼントではなく土でも入ってるんじゃないかと思えるくらいに重い袋を振り回して。


「お前の一撃! 重いんだよ!」


 バーサーカーは、こちらにまっすぐ迫る袋をなんとか受け止めながら悪態をついた。


「こらバーサーカー! なんでいちいち受け止めようとするのよ!?」

「だって! 力比べで負けたらなんか悔しいじゃねぇか!」

「力比べで勝とうとしない! 他の方法で勝ちなさい!」


 セイバーの言うとおりではあるけど。こっちもパワータイプのプライドってのがあるんだ。

 それに、今度は受け止めるだけじゃなくて。


「おらっ! これでもう振り回せないだろ!」


 袋をしっかりと掴んでやった。武器を封じてしまえば、このフィアイーターはかなり弱体化するはずだ。

 そのまま引っ張り、敵の動きを阻害しようとして。


「馬鹿! その袋離しなさい!」

「おい! 今オレのこと馬鹿って言ったか!? うわー!?」


 フィアイーターがバーサーカーごと袋を振り上げた。そして邪魔な緑色の異物を振り落とすべく、ブンブンと振り回した。

 バーサーカーはパワーこそあるけど、体重は軽い。だから持ち上げるのは苦ではないのだろう。


 ああ。確かにオレは馬鹿だった。もちろん、それで終わる気はなくて。


「喰らえおらっ!」


 袋がフィアイーターの上に来た瞬間に手を離す。そのまま自由落下しながら、フィアイーターの頭に踵落としを食らわせた。


「フィァァァァァァ!」


 痛そうな叫びを上げるフィアイーターは、セイバーに足を何度も切られて遂に立てなくなったのか、その場に倒れ込んだ。

 なおも両手を両手を動かして暴れるフィアイーター。袋も振り回されてるし、空中にいたバーサーカーにそれが当たってしまった。


 やっぱりオレ、馬鹿なんだろうな。


「うがっ!?」


 悲鳴とも空気が漏れた音とも取れない声が口から漏れて、バーサーカーの体は宙を舞い、地面に激突しかけて。


「おい、大丈夫か」


 その前に悠馬が落下地点に走って受け止めてくれた。

 正確には、受け止めようとして一緒に地面に倒れ込んだ。


「いたた……」

「おい! 悠馬大丈夫か!? 馬鹿なにしやがんだ! オレだけ痛い思いしてりゃ良かったんだよ!」

「うるさい。俺も怪我はしてないから。ほら、せっかく受けとめてやったんだから。さっさと戦いに戻れ」

「お、おう。本当に怪我はしてないな!?」

「ちょっと擦りむいただけだ」


 地面に落ちるバーサーカーの代わりにクッションになった悠馬だけど、受け止めようとした動きのおかげで衝撃はかなり削がれていた。だから怪我には至ってない。

 そして悠馬のおかげでバーサーカーも大事がないのだから、彼の言うとおりに戦線に復帰すべきだ。


「よっしゃ行ってくる! うおおおおお!!」


 見れば、セイバーがフィアイーターの体をザクザクと切り裂いていた。巨体が相手ゆえにコアを見つけるのには苦労してるようだけど、少なくともフィアイーターの抵抗は弱まっている。


「おら! 喰らえ!」


 それでもなんとか動く腕で、袋をセイバーに叩きつけようとしていた。

 バーサーカーはそこに強烈なドロップキックを喰らわせる。フィアイーターの腕が今度こそ沈黙。


「あった! コア! セイバー突き!」


 そしてセイバーもコアを見つけたらしい。

 フィアイーターの巨体が黒い粒子と共に消えていく。


 後に残ったのは、小さな人形だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
クッションになる悠馬カッコいい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ