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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-28.デート終わりに怪物

 キッチンカーを見つけた。前もここで、何かの料理をフィアイーターにしたんだっけか。

 キエラが目をつけたのは料理ではなく、キッチンカーに季節ものの飾りとしてつけていたサンタクロースの人形だった。


 列ができていたのに強引に割り込み、人形にコアを押し込む。一瞬、周囲が真っ暗になり、闇が晴れた時にはサンタクロースの怪物とたくさんのサブイーターが現れていた。

 途端に周囲が大混乱になる。


「ああ。やっちゃった……キエラ、駄目だよ。優花里さんは魔法少女を呼びたかったの。わたしたちを倒すために。で、フィアイーターが出たら魔法少女が来る」


 だからキエラを止めたかったのだけど、突っ走られてしまった。


「構わないわ! 魔法少女たちに、あの女を殺させればいいのよ!」


 それはそうだけど。


「それより先にわたしが殺せるなら! やってやるけどね!」


 怒りに満ちた表情のキエラは、誰の言うことも聞かなそうだった。

 信じていた相手に裏切られた気分なんだろうか。


 そりゃ、ティアラだって悲しい。話せたと思ったけれど、優花里にとって自分は排除すべき敵なんだって。

 わかり合えないなら、倒すしかないのかな。それはわかってるけれど。


「フィアイーター! あの女を捕まえて!」


 サンタクロースの小さい人形は、フィアイーターになることで巨大化した。身長三メートルくらいある、赤い服の太ったおじさん。かなりの迫力だ。

 それが背負った袋をブンブン振り回しながら優花里の方に迫っていくフィアイーター。サブイーターたちはその逃げ場を塞ぐように展開していた。


「いいわ! やっちゃって! ぶっ殺しちゃえ!」


 騒然とする周囲の中で、興奮した声を上げるキエラ。気持ちはわかるけれど、ティアラはその様子が危うく見えた。



――――



 悲鳴と怪物の咆哮。一斉になるスマホ。

 俺とアユムは顔を見合わせた。


「ったく! なんだよこんな日に限って! せっかくのデートなのに最後の最後でぶち壊しじゃねえか!」


 アユムの口調には怒りが込められていて。気持ちはよくわかるけど、今はそれどころじゃない。


「行くぞ。キエラがこの日を選んだのには理由があるはずだ」


 ポケットから覆面を出しながら、買ってきたものをどこかに隠せないか探す。やっぱりキッチンカーとかの後ろかな。

 ここからなら澁谷が駆けつけるのが早い。せっかくのお土産だから、捨てるには忍びない。回収してもらうよう連絡する。


 隣を見ればアユムはバーサーカーに変身していた。俺も覆面をかぶり、武器がないか探しながらフィアイーターの方へ向かう。キッチンカーの宣伝のための幟がみつかった。メインである布は取り払って、支柱の部分だけ棒として使わせてもらおう。


「バケモン共! こっちだ!」


 バーサーカーは既に戦闘を始めていた。


 その様子を見て、俺は気づく。フィアイーターと黒タイツの動きが普段と異なっている。

 積極的に人を襲うわけでもなく、何かを囲っているようだった。


 その中心に、見覚えのある顔があった。


 あれがキエラの意図か。



――――



 クリスマスディナーを用意中の遥たちのスマホも鳴ることになった。


「ちょっ!? 今!? なんでまた!?」

「遥、料理の手を止めやれるかい?」

「チキン焼き始めたところなんだけど!? 仕方ない一旦止めて……」

「つむぎ、愛奈を起こしに行ってくれ」

「はーい。……愛奈さん寝てるの? もう夕方だけど。てか買い出しは?」

「行ってない間は疲れたと言って寝ててもおかしくない。スマホ借りるぞ」


 キッチンから出ようとしているつむぎに手を伸ばし、着ている水色のパーカーのポケットの中からスマホを出して画面を確認。


 調理の中断の作業をしていた遥が、女の子のポケットに平気で手を突っ込む行為に驚きの目を向けてるけど、つむぎが気にしてないのだから別にいいだろ。


 フィアイーターの出た場所を確認。布栄の近くだ。つまり悠馬たちは既に戦ってるのだと思う。

 だったらそっちには連絡は不要。代わりに電話する相手は。


「もしもし、樋口か? フィアイーターが出たのは知ってるな?」

『ええ。麻美と剛も向かってるって連絡があったわ』

「あのふたりも?」

『近くでデートしてたらしいから』

「あー」


 クリスマスの過ごし方はみんな同じか。


「僕たちも今から行く。せっかくだから、クリスマスディナーは一緒にどうだい?」

『彼女持ちの癖に女を誘うだなんて、いい度胸ね』


 余計なことを言うな。


『でもおもしろそうね。いいわ、付き合ってあげる。その気になれば、だけど』

「その気?」

『米原優花里の彼氏と家族も、今日は現場にいるはずなの。クリスマスは捜索のためのビラ配りをするって予定と言ってたから』


 電話の向こうの樋口の口調は、どこか沈んだものだった。

 自分の仕事が、これから面倒な局面を迎える。その確信があるみたいで。


『ま、なるようにしかならないわ。とりあえず行きましょう』

「ああ。そうだな……」

「ラフィオー! 愛奈さん本当に寝てた!」

「うー……眠い……なによ、こんな時にフィアイーターなんて。クリスマスなのに」

「クリスマスなのに寝て過ごすのもどうかと思いますよ、お姉さん!」

「お姉さんじゃないもん。さっさと終わらせて、クリスマスの残りを楽しむわよ!」


 寝て過ごすこと自体に後悔が無いわけじゃないらしい。愛奈は張り切ってるけど、パジャマ姿だから格好はつかない。それでもブローチを握って変身した。

 遥とつむぎも同様だ。


「ラフィオー! こちょこちょー!」

「おいこら! やめろ!」


 変身した途端に、ハンターはラフィオに抱きついて首元をくすぐろうとした。


 いや、いいんだけど。言ってくれたらちゃんと大型の獣になってあげるから。てか、こちょこちょされても小さい妖精になるだけだから。

 そんな緊張感のないやりとりを挟みながら、魔法少女たちはマンションの窓から外に飛び出して現場へと向かっていく。

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