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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-17.デートの相手は

 ティアラが女、優花里と会話してから数日。

 彼女はまだ部屋から出ようとはしなかった。


 キエラも、最初は会話が成立したことに喜びをみせていたけど、やがてそれも苛立ちに戻っていったようだ。

 頬を叩いたことを謝らないと。そう優花里は言ってたのに、なかなか実行されなかったから。


「なによあいつ。わたしが話しかけても全然相手してくれないし!」

「まあまあ。キエラ落ちついて。優花里さんにも考えがあると思うから」

「どんな考え? せっかくフィアイーターになったのに、引きこもってばっかりなんて。人間の世界に行って暴れるべきよ」

「優花里さんはそれをしたくないんだよ」

「なんで?」

「別に、やりたくて死んだわけじゃないから。それに、彼氏に会いたくないんだと思う。怖がらせるから」

「彼氏に会いたくない……?」


 その気持ちはキエラにはわからないらしい。


 ラフィオに会いたがってるし、拒絶されても会おうとする。会うために怪物を作っている。

 けど、みんながそうじゃない。


「優花里さんは人間からフィアイーターになったでしょう? いきなり変わった自分を見たら、彼氏さんが驚くから。そうならないよう、会わないのが優花里さんの優しさなの」

「会わない優しさ……そういうのもあるのね!」


 キエラにも理解できるように説明したところ、なんとなく飲み込んでくれたらしい。

 上機嫌になった。


「会わない優しさ! うん! いいわねそれ! 大人の恋愛の駆け引きみたい! もしかしてラフィオもそういうのかしら! あえてわたしを突き放して、それが優しさなのかしら!?」

「うーん。どうかな……」

「ラフィオに聞かなきゃいけないわよね。でも、会わない駆け引きもしてみたいわ。困ったわ」

「キエラ。クリスマスは子供がプレゼントを貰える日なのと同時に、恋人たちが幸せに過ごす日なの」

「……そうなの? 知らなかったわ」

「わたしも、なんでそうなったのかは知らないんだけどね。優花里さんも、クリスマスまでには部屋から出て、地上に行く決心をつける言ってた。わたしたちもついていきましょう」

「そうね! わたしもその時に、ラフィオと恋の駆け引きしたいわ!」


 駆け引きっていうのがキエラにどこまで理解できてるのか、ティアラにはわからなかった。

 別にいいか。それはキエラの好きにさせよう。


 当のキエラは、もうひとつ気になることがあるようで。


「ねえ。あの優花里って女は地上に行って、何するつもりなのかしら? ちゃんと恐怖を集めてくれる?」

「後で聞いておくね。わたしもよくわからないから」

「ええ。お願い。あー、クリスマスが楽しみ!」


 ああ。そう言ってはしゃぐキエラは、年相応の女の子みたいだった。



――――



「悠馬とは夜のイルミネーションが見たいな。ここ知ってる? 特に電飾に力を入れてて、それにプロジェクションマッピングもやってるんだよ。もちろん夜だけじゃなくて昼も楽しめます。あと施設全体がバリアフリー対応で、わたしも快適に過ごせます!」

「悠馬と、また水族館行きたいのよね。ほら、前はキエラが来て最後まで楽しめなかったじゃない? だからまた行くの。冬ならではの展示とかあるらしいわよ。ペンギンの行進とかは冬にしか見られないわよねー」


 金曜日の朝。今日はクリスマスイブで、明日はクリスマス。つまりデートをする日。

 遥たちはデートプランをしっかり考えていたようだった。


 遥と、妙に気合いを入れて珍しく自力で起きた愛奈が、俺と行きたい場所をスマホ画面を見せながら提案する。

 時期的に、たしかにいろんなイベントをやっているらしい。楽しそうだな。


 そしてアユムはといえば。


「ここがいいと思うんだよ」


 アユムもスマホを俺に見せた。表示されているのは、この前も言った布栄の近く。そこのシンボルである宇宙船みたいな構造物と、その下に集まる商業施設。

 というよりは、そこに隣接している緑地だ。


「ピクニックに行きたい」

「ピクニック?」

「ちょっと寒いかもしれないけどさ。温かい格好して。それでお弁当持ってのんびりしたい。遊びたいなら、周りに色々あるし。けど、悠馬にはなんか、ゆっくりしてほしくて。毎日大変そうだから」

「なんでわたしを見るのよ」

「愛奈の相手で疲れてることが多そうだから」

「確かに」

「なんで悠馬も同意するのよ」

「なあ悠馬。オレはこの街のどこに行けばいいかとか、あまり知らない。悠馬を案内するなんて無理だ。けど、一緒にのんびりして休むことはできるから……どうかな?」

「いいと思う。明日はアユムと行こう」

「え」

「なぜ」


 愛奈と遥が、信じられないといった様子でこっちを見た。


 いいだろ。俺が選ぶって話だったんだから。アユムの気遣いが嬉しかったんだよ。


「マジか……」


 なんで当のアユムまで信じられないって顔してるんだ。


「マジだよ。俺はアユムとデートしたい」

「お、お……うおおおおおおおお!! そ、そうか! よし、明日はよろしくな! 今日はもう、授業なんか聞かずに明日のこと考えるから!」

「いや、授業は聞け」

「あー。わたしは会社休みたい……。悠馬とデート行くことだけ楽しみに働いてたのに……。有給取っていいかしら……」

「駄目だ。働け」

「愛奈さん愛奈さん。明日はわたしとラフィオを水族館に連れてってください! ペンギンさんの行進見たいです!」

「お前はモフモフがほしいだけだろ」

「うん!」

「ううっ。なんでわたしが子守なんかを……」

「ゆ、悠馬さ。考え直さない? わたしたち付き合ってるんだよ? 周りにそう見られてるんだよ? なのにクリスマスにデートしないなんて。しかも布栄なんて人が集まる場所、誰かに見られるかもしれないよ? 悠馬がアユムちゃんに乗り換えたなんて、週明けにクラスで噂になっちゃうかもしれないし! しれないから!」


 遥も動揺していた。今更その手を使うのはどうかと思うぞ。

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