表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

530/746

11-13.人は怪物になる、という事実

「いやったー! 全科目赤点回避! 補習を繰り返していたわたしは過去のものになりましたー! 参ったか!」

「はいはい。すごいすごい」


 期末テストを終えた遥は、普段にはない手応えを感じていたらしい。


 試験が終わるや各教科の先生に頼み込み、自分の試験を採点して早く結果を見せてほしいと言った。

 そのためにいち早く試験結果を知った遥は、一部はギリギリもありつつ赤点回避の結果に満足したというわけだ。


 呆れながら採点したという教師たちも、まさかの結果に驚き職員室はちょっとした騒ぎになったらしい。

 あの神箸の成績が上向いたと。なにか天変地異の前触れではないかと。


 俺が指導したおかげなんだけどな。あと、上向いていたのは春の中間テストから傾向はあったからな。今回が快挙なのは間違いないけど。


「いやー! これでお正月までなんの心配事もなくなったね! もうしばらく勉強はしなくていいよね!」

「必要だからな。勉強は継続だ」

「やだー!」


 浮かれる遥に釘を刺す。頑張ったのは事実だから認めてあげるのは構わないけど、怠ける理由にするのは許さない。


「ふふん。悠馬、ご褒美にクリスマスデートはわたしとやるってことでいいかなー?」

「駄目だからな。オレもテスト頑張ったから」

「うへー。アユムちゃん強敵。そういうアユムちゃんはどうなの!? 試験の手応えは!?」

「思ったより簡単だった。勉強した所がちゃんと出てきたからな」

「うわー! なんかアユムちゃんに負けた気がする! 勉強に対する姿勢とかが!」


 最初から完敗なんだよ。



 そんな風にわいわい話しながら帰路につく。

 クリスマスはもうすぐだ。となれば、俺は選ばなきゃいけなくなるわけで、遥たちもプランを考えなきゃいけなくなる。


 少し気は重かった。



 気が重い理由に、前回のあれ以来フィアイーターが出てこないこともあるけど。


 樋口によれば、優花里さんは依然として行方不明。

 日本の警察は優秀だ。普通に死んだ人間の遺体を、こんなに長期間見つけられないはずがない。


 これはもはや、彼女がフィアイーターになったことは確実。


 ところで、警察はまだそのことを彼氏さんや家族には伝えていない。

 そもそも人間からフィアイーターができる事実自体が、世間に公表されていない。


 知れば人々はパニックになる。だから公表のタイミングは慎重にすべき。そういう判断がどこかでなされたらしい。


 街を動かしてる誰かだろう。県警のお偉いさんとか。市長はどうかな。彼自身にも、その情報が伝えられてない可能性はある。

 仮にバレても、警察はそんなこと知らなかったで押し通せる立場にいる。下手にパニックを起こされるよりは、そっちの方が自分たち保身という意味でも利が大きいらしい。


 だからなんだっていうんだ。事実は事実だ。知ったほうがいいに決まってる。市民だって自衛の心構えをする必要がある。


 これまで確認されている人間フィアイーターはみんな、世間との繋がりが薄い者ばかり。家庭環境が終わっていたりホームレスだったり。生きている親族がおらず、唯一確認できているティアラの母親は娘の行方不明に興味がなかった。

 だから隠蔽は簡単にできる。


「いやね。わたしも県警上層部の意見はわかるのよ。情報の公開は段階を踏むべきだって。けどこれは早期に公表すべきこと。なにかあってから警察の隠蔽体質がやり玉に上がっては遅いのよ」


 と、これまでの経過を報告に来た樋口が酒を飲みながら愚痴る。仕事終わりなのかスーツ姿だ。 

 報告だけなら電話でもできるだろうけど、飲まなきゃやってられないなら付き合うしかないな。


「今回に関しては、米原優花里がフィアイーターとしてどんな行動を取るかわからない。知り合いに接触した時点で大騒ぎよ。お偉いさんが恐れてるというパニックが起こるわ。先手を打つべきよ」

「まあそうだな。うん。樋口は上に意見したのか?」

「ええ。県警の人にね。でも止められた。外様が声を出すなって」


 樋口は県警の人間じゃないからな。


「現場で一緒に仕事してる、こっちの公安はわたしに同調しているわ。けど上に行くほど駄目ね」

「なんで駄目なんだ? 樋口が警視庁所属なこと以外で」

「実例が出る前に公表したら、なんでもっと早く言わなかったんだと責められる。だから米原優花里が出てくるまでは知らなかったで押し通したいのよ、あいつらは」

「なるほど」


 知ってたらすぐに公表すべき。いつ知ったのかを追求されると、四月の時点っていうのも判明するかも。

 それが年の瀬まで隠蔽してたのはなんでだと非難されるのが嫌なのか。


「あんたたちも他人事じゃないわよー」


 酒を飲みすぎて、既に目が据わっている樋口が俺たちに目を向けた。

 その意図をよくわかってるのは、当事者の中の当事者であるラフィオだ。


「僕たち魔法少女サイド……というか僕の問題だね。特別製フィアイーターの存在を、なぜ僕が公表しなかったのか責められる。あれだけメディアに出て呼びかけをしてたのにね」

「そうか……」


 この件に関する総責任者はラフィオだもんな。


「僕自身にも責任がある。ティアラの例を知った時点で、澁谷を通して話すべきだった。けど僕がテレビで話したのは、フィアイーターは恐れるに足る相手じゃないってことだけ」


 その戦略は正しかった。人々に恐怖を与えないことが最優先だったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ