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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-10.行方不明者

 俺も這うようにして唐揚げに近づいて、その肉を引きちぎる。しかしあまり意味はなかったようだ。


「あった! おい! 誰か壊してくれ! オレには無理だ! 手が滑る!」


 バーサーカーがコアを見つけたようだ。唐揚げを素手で触り続けた後のこれだから、手が油でヌルヌル。殴ることはできなくもないようだけど。


「じゃあわたしがやりますね! くらえー!」


 これまで一切油を身に受けていないハンターがラフィオから降りながら矢を放つ。見つけたコアを射抜いて消滅させた。

 巨大なレインボー唐揚げが黒い粒子を空中に発散させながら、小さく無残にバラバラになった唐揚げに戻っていく。


「うわっ!」

「にゃー!? 滑る!?」


 上にいたラフィオとライナーが、消える足場のせいで慌てた声を出した。


 半ば落ちるような形になっても、いつもなら華麗に着地できるだろう。けど今回は油でツルツルの地面だから危ないかもしれない。

 と思ったら。


「お、なんとかなった」

「ほんとだ。油消えてる」


 思ったより無事に華麗に着地できたようだった。



 油もフィアイーターの一部で、コアを砕かれたと共に消滅したんだろう。周り一面の油も、俺たちの体についたやつも、みんな消えていた。


「あー。よかった。ベタベタなまま家まで帰るなんて嫌だもんねー」

「そうだな。フィアイーターの一部が体にまとわりついてたって考えると、なんか嫌だけど」

「あー。それについては考えない方針で。あーあ。楽しいイベントが中止になっちゃったねー。物はあんまり壊れなかったみたいだけど」


 ライナーに言われて周りを見れば、確かに物的被害はあまりなかった。


 レインボー唐揚げか暴れていたのは会場のメインステージの付近。ステージや周りのお店に、大した破壊の跡はない。避難の過程で料理がひっくり返ったり、ステージ前に並んだパイプ椅子が倒れたりはしてるけど。

 被害は少なかったと見るべきかな。


「料理はもったいないよねー。なるほど、あれがレインボー唐揚げの屋台か。なんか写真だけ見れば美味しそうなんだよねー」

「あの味は思い出したくない……おい。今日の晩ごはんは唐揚げにするぞ。普通のな」


 ラフィオの堅い意志のこもった言葉。


 みんななんとなく、今日はこのまま帰ろうかという雰囲気になった。

 ところが。


「おい! 待ちなさい! 危険だ!」

「入れてください! 彼女と連絡が取れないんです! 優花里! 優花里いるか!?」


 切羽詰まった言い争いの声が聞こえた。


 片方は、公安の命令で現場を封鎖した警官だろう。彼らが張った規制線を突破して、若い男が入ってきた。


 大学生か、社会人を初めて数年といったところかな。愛奈と同年代か少し下って感じだ。

 どうも、恋人が混乱の中で行方不明になったらしい。


「大変だね。……今回も人が死んだってこと、あるかな?」

「さあ。すぐに駆けつけたから、被害はあまりなかったとは思うけど……」


 周りを見回す。死体は見当たらなかった。物陰に隠れているだけかもしれないけど。


「優花里!? 優花里いるか!?」


 男は怪物が暴れたあたりを走り回っている。見つかっていないらしいけど。


「死んでないなら、逃げたということだろうね。その途中ではぐれて、彼女さんはスマホを落としてしまって連絡がとれなくなった。それだけだよ」


 巨大なままのラフィオがこともなげに言う。たぶんそうだろうな。

 けど、なにか引っかかるような。


「でもいいよね。はぐれちゃったら、あれだけ心配して探してくれる彼氏がいるなんて。彼女さんは幸せだね」

「ああ……」


 自分もその彼女だとか言いたげなライナーと、それに睨みをきかせるバーサーカー。俺は生返事をしながらスマホで樋口に連絡をする。


「樋口。戦闘が終わった」

『そう。早く撤収しなさいな。警察も規制線を張り続けるの大変だから』

「わかってる。ひとり、調べてほしい人がいる。もしかしたらフィアイーターに巻き込まれて死んで、キエラたちに連れ去られた人がいるかも」

『……詳しく聞こうかしら』


 その可能性が頭から離れなかった。


 あの彼氏さんに、恋人を探すのに協力すると言えばすぐに詳しい話を聞けるだろう。

 あとは日本の優秀な警察に人探しを任せよう。あっさり見つかれば杞憂だったと笑い話で終わり。


 違ったら、俺たちは辛い戦いに臨むことになる。



――――



 キエラは作ったフィアイーターとサブイーターに、若い女を積極的に襲わせた。特に、男と一緒にいる女を狙った。

 仲睦まじい様子のカップルがしっかり手を繋ぎながら逃げている最中に、フィアイーターがぶん投げたパイプ椅子が飛んでいく様子を、ティアラはしっかり見ていた。


 パイプ椅子は女の方に当たって、繋いだ手が離れた。女はその場で倒れ込み、男は恋人を助けようとしたけど人波に流されて両者は離れていくだけ。


 女はその時点ではまだ息があった。生きていたら、人間からは意思のあるフィアイーターを作ることはできない。


 だからティアラは彼女に駆け寄って、さくっと首を折って殺した。だってこの人から、恋について聞きたいんだもん。キエラだってそれを望んでいるのだから。

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