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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-9.油ハネ注意

 ふたりが揃ってフィアイーターへ向かうのを見ながら、俺は目についた黒タイツへ迫ってぶん殴る。フィアイーターの動きをほぼ完全に封じたと判断したラフィオとハンターも、黒タイツの掃討に移行していた。

 けど、敵も一筋縄ではいかなくて。


「フィァァァァァァ!」


 ほとんど動かない手足ながら、濡れた犬が身を震わせるみたいな動きをした。フィアイーター自身に濡れた様子はないのに、体内から何かが染み出て飛び散る。

 それは地面を濡らして。


「うおっ!?」

「わぎゃー!?」


 飛んだ汁を踏んでしまったバーサーカーとライナーが転んでしまった。


「大丈夫か!?」

「ああ! けどこれなんだ!? 滑るぞ!?」

「油だねー。唐揚げだから、そりゃ油も跳ねるよねー」

「なんでかかってるレインボーソース飛ばしてこないんだよ!?」

「そっちの方が綺麗だからいい? でも、あれがかかったら体中ベタベタになるよー」

「わたあめモフった時みたいにですか!?」

「ハンターはなんで嬉しそうなのかなー。てか、わたあめモフるなんて考えたことないからわかんない!」

「わたあめはどうでもいいだろ! この油ヌルヌルしてて気持ち悪ぃ!」


 派手に転んでしまったバーサーカーの衣装が油で少し透けていた。ちょっと気まずくなって目を逸らす。


「おい悠馬! オレを見ろ! それでどうすればいいか教えてくれて!」

「ゆっくり近づけ! 接近さえできれば倒すのは簡単なはずだ! あと服が透けてるから俺は見たくない!」

「うおっ!? マジか!? おい見るな馬鹿!」

「見てないって言ってるだろ!」

「フィアァァァァァァ!」

「あっ! おいこれ以上油を散らすな!」


 フィアイーターにとっては、こっちを近づけないことが最優先事項だ。そうすれば死にはしない。


「この地面! 歩けないぞおい! 立ってるだけで精一杯なんだが!」


 地面との摩擦を限りなくゼロに近づけてしまった油の上で、バーサーカーが震える足でなんとかバランスを取っていた。


「あー。こりゃ大変だねー。脚力が自慢のわたしには特に相性が悪い。まあなんとかするけど。よっと」


 ライナーは滑る地面を注意深く蹴ってジャンプ。残り少なくなってきた黒タイツの首を噛んで折っていたラフィオの前に来た。


「ラフィオ、乗せて。ハンター、ちょっと前に詰めてね」

「はい! どうするんですか?」

「ラフィオ、あそこの屋台の上からフィアイーターめがけてジャンプ!」

「ああ。地面を通らず接近ってことか。わかったとも」

「バーサーカーはそこでフィアイーターと睨み合いしててね! 悠馬も手伝ってあげて!」

「手伝うってなにをだ!?」

「バーサーカーが前に行けるように!」

「どうやって……ああもうわかった!」


 話している間にもラフィオは近くの屋台の上に飛び乗っていた。


 フィアイーターはそれに気づいていない。周りに油を飛び散らせつつ、近くにいるバーサーカーの方へ目を向けていた。


「バーサーカー! 行くぞ!」


 俺は滑る地面を蹴りながらバーサーカーへ駆け寄る。後半はスケートみたいな移動だった。その勢いのままバーサーカーの背中を押す。


「うおっ!? なんだよ急に!?」

「あいつを引きちぎれ!」

「うわー! 油が飛んでくる! しかもちょっと熱い! てか口に入った! 甘い!」


 唐揚げだから熱いよな。しかも油も甘いのか。


 バーサーカーを押した勢いで、俺は油の上で盛大に転ぶ。魔法少女は一度変身を解けば綺麗になるかもしれないけど、俺の場合は違うからな。


 そしてバーサーカーもまた、油を大量に受けながらもフィアイーターに接近した。フィアイーターは迫る魔法少女を前に、なんとか動いた足で後退る。そのせいでバーサーカーはフィアイーターに届く前に再度転んだ。

 しかしそんなフィアイーターの上にラフィオが着地。


「うわ滑る! おい! 唐揚げってこんなに油っぽくないだろ! てかレインボーソースがネチャネチャして気持ち悪い!」

「ラフィオ頑張って!」

「後で足を洗わせろよ!」

「うへー。わたしも足洗いたい! このこの!」


 巨大唐揚げの上で、なんとか足に力を込めて踏ん張るラフィオ。ライナーも降り立って、唐揚げを足でゲシゲシと蹴っていた。

 衣が削れて肉が見えてくる。油でテカテカの、美味しそうな肉だった。


「ほらバーサーカーも! いつまでも倒れてないで手伝って!」

「うるせえ! 無茶言うな!」

「這ってでも来なさい! てか、四つん這いで移動した方が早いでしょ!」

「ああもう! やってやるよ!」


 両手両足を地面につけて、ゆっくりと移動するバーサーカー。お尻を突き出した姿勢になって、それが俺の方に向いている。スカートの裾が上がったから、俺はまた目を逸らすことになった。


「ちくしょう! 唐揚げのバケモン! 散々おちょくりやがって! ぶっ殺してやる!」


 バーサーカーがフィアイーターの体を掴んで、肉をブチブチと引きちぎっていく。横からのバーサーカーと、上からのライナーの攻撃で、肉が裂けていく音がする。

 ラフィオも巨大唐揚げに噛み付いて引きちぎろうとするけれど。


「うわなんだこれ! まずっ! 見た目唐揚げなのに甘いから脳が混乱する! 体が受け付けない!」


 話題のスイーツへ、忌憚なき意見を口にしていた。それでも齧ろうとするのをやめないあたりは使命感の強さが伝わる。

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