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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-7.都会のクリスマス

 じゃあ帰るか、とはならなかった。


「んー。クリスマス直前の雰囲気、いいよねー」


 百貨店から出て、駅には向かわず街をしばらく歩き回る。


 どこもかしこもクリスマスムードだ。街もどこか華やいでいるようで。


「……カップルが多いな」


 アユムが眉をひそめながらボソリと口にした。


「田舎じゃ珍しいか?」

「街を恋人同士で歩くことか? そもそもうちには街がなかったからな」


 はははと乾いた笑いをあげるアユムの自虐に、俺たちはどう返していいのかわからなくて。


「ああいや。軽く受け流してくれて良かったんだけどさ。うちの田舎だと、男女で付き合うってだけで結構な大事になってさ。デートなんかする場所も限られてるからな。バスでいくショッピングセンターくらいだから」

「あそこか……」


 遊ぶ場所といえば、確かにそこしかなさそうだった。


「普通に、休みの日に友達が家族連れとかで来ることも多い場所だからさ。そういう奴らにデート見られると冷やかされるんだよ。で、週明けには噂になってる」

「学校中の?」

「村中の」

「うわー。それは嫌だ」


 大人たちも普段の人間関係に全く変わりがないから、そういうのを見ると嬉々として話を広めるんだろうな。


「だから、こうやって人が多くて紛れやすいところでデートするの、なんかいいなって。都会ってすげえなと思うんだ」

「そっかー。見つからないって所から大事なんだねー。周りに隠れて付き合いたい子もいるもんね。うん」

「それに、こんなふうに街の雰囲気が季節で変わるっていうのも田舎にはないし」

「まばらに建った家の中に小さい店が混ざってるって感じの町だったからな、アユムの村」

「おう。こういうのは見たことない」

「じゃあ、クリスマスムードの街を見て回ろっかー」


 遥は自分で車椅子を押しながら前を進む。


 布栄のシンボルでもあるテレビ塔と、そこから伸びる公園へと向かっていく。大通の中央分離帯がそのまま公園になっているここは、市民の定番のお出かけスポットでもある。

 時期に合わせて様々な催物が行われる場所でもあるし、今日はクリスマスが近いということでそれにちなんだイベントを行っているらしい。


 特設ステージで、地元では有名なタレントが司会をやりながらいろんなグループがパフォーマンスをしている。地元出身のプロのダンサーや大道芸人、市民の合唱団とかも。

 屋台なんかも出ている。夏祭りの縁日で見たのと比べると、いくらかしっかりした作りのものだ。キッチンカーも目につく。

 SNSで映えるような、若者向けの料理を出すお店が多い。


「アユムちゃんあれ買お! で、映えよう!」

「お、おう! 映えるぞ。都会みたいでいいな!」


 なんなんだそれは。


 撮った写真をどこで投稿するのかといえば、遥はSNSにアカウントを持っているらしい。

 澁谷に最初に連絡を取るときに作ったダミーのアカウントを転用したようだ。顔出しはせず、謎の模布市民として運用している。

 これくらいの使用だったら健全と言えるよな。


 イベント会場には大勢の人がごった返していて、賑わいを見せていた。

 休日だから、家族連れの姿も目立つ。けどカップルはアユムの言うとおり多かった。


 クリスマス本番ではないけど、デートしたがる若いやつは多いものだよな。


「いいねー、こういうの。わたしたちも大人なデートしたいね」

「大人になってからだよ」

「ラフィオも大人になるの?」

「なる……はずだ。正直よくわかってないけど、この世界では年を取るはずだよ」

「じゃあ、わたしたち一緒に大人になれるんだねー」

「うん。そうだね」

「じゃあ今は子供のデートしようね!」

「……どんなデートなんだい?」

「えっと……お菓子とか買うの! あれ見て! レインボーふわふわわたあめだって!」

「大人でも買ってるものだけどね。でも、子供っぽくはあるね」


 ラフィオも嫌ではなさそうに、キッチンカーの方に向かっていく。


「レインボーふわふわわたあめって他のわたあめよりもモフモフさが違うのかな?」

「モフモフなんかするなよ。手がベタベタになる」

「もー。わかってるよ。モフモフするのはラフィオに限るよね!」

「それも嫌なんだよなあ。というかぬいぐるみ買ったなら、そっちを触れ」


 このふたり特有の距離感での接し方は、まさにカップルという感じだった。


「悠馬悠馬! 見て! レインボーフルーツサンドだって!」

「……レインボーが流行ってるのか?」


 遥とアユムも、なんか映える食べ物を買ってきたらしい。


 間違いなく、虹色のカラフルなフルーツサンドだった。中のフルーツだけではなく、それを挟んでいる食パン部分もレインボーだ。

 これ、どうやって作ってるんだろう。てか、映えるのか? これを見た世の中の女子はかわいいって声を上げるのか?


「映えがわからない」

「もー。だから悠馬は、もっと世間を見るべきなんだよ! みんな、これを写真に撮るために並んでるんだよ?」

「わかんねえんだよな……」


 世間を知るべきなのは同意だけど。



――――



「にぎやかねー。こういう、楽しい所を襲えば恐怖はたくさん集まるのよね?」


 キエラはティアラを伴って、街の中心部でやっているイベントに来ていた。

 どこもかしこも人が大勢。恐怖を集めるにはもってこい。


「もう。キエラ、今日は仲間にする女の子を探しに来たんでしょ?」

「ええ。そうだけどね」


 ティアラは本来の目的を忘れていなかった。さすがだ。

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