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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第11章 クリスマス回

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11-2.クリスマスデート

「あれ、後で絶対に面倒になるよ? 約束したじゃないって言って、クリスマスデートするまで騒ぎ続ける」

「まあ、うん」


 その様子は想像に難くない。


「クリスマスデートするのはわたしなのに」

「オレもやりたいんだけど?」


 面倒なのはこっちも同じだ。


「全員の希望は聞けないからな。時間で割って交代でデートとか、みんなも嫌だろ。全員一緒に出かけるとかで妥協しろ」

「やだ!」


 遥は断固として譲らなさそうだ。アユムも同様だと表情が語っている。

 ああ、マジで面倒だ。


「とりあえず、みんな学校行くぞ。どうするかは後で決めよう」

「あー! 先延ばしにした! まあいいけど! 遅刻は嫌だし! 悠馬! 車椅子押して!」

「いや。オレが押してやる」

「なんでアユムちゃん!? 良いけど!」


 俺と遥が仲良くしてる所を見るよりは、自分で押してやりたい。アユムの魂胆もわかるし、遥も拒否しない程度にアユムを友人として見ている。

 友人でライバルって言えば美しい響きになるのだろうか。それに挟まれている俺は、勘弁してほしいと思ってるんだけど。


 俺だってクリスマスデートが嫌なわけじゃない。ふたりがやりたいなら叶えてやりたい。

 もちろん、愛奈もだけど。


 けど、クリスマスは一日しかない。イブは平日だし。あと。


「猫さーん!」

「おいこら! 待て! 通学路から離れるな!」


 猫を見つけたらしいつむぎを妖精のラフィオがなんとか止めようとしている。この時間に少年の姿を誰かに見られるのはまずいからな。


 あのふたりがクリスマスにデートに行きたがるのは間違いないとして、子供だけで遠出させるわけにはいかない。

 誰かが引率しないと。具体的には、俺とデートが出来なかった奴が。


「ふたりで相談して決めろとは言えないから、俺が選ぶことになる」


 バス停まで向かう途中の遥とアユムが、すごい勢いで振り返った。


「ふたりがどんなデートしたいか、何日か後にプレゼンしてくれ。それを聞いて判断する」

「プレ……」

「ゼン……?」


 ふたりとも難しい顔して首を傾げた。


「ねえアユムちゃんどう思う? 悠馬ってば急に難しい言葉使い出したよ」

「なんつーか、都会的な言葉だよな。プレゼン」

「プレゼントならわかりやすいけどね」

「あー。クリスマスっぽい」

「でしょ?」


 中身のある会話ではなさそうだった。てか、そんな難しいこと要求したかな?


「んー。わかった。やってみますか、プレゼン」

「そうだな。いまいちよくわかんねーけど。やるか」


 大丈夫かな、このふたり。


 あと気になることがもうひとつあって。


「クリスマスの前に期末試験があるからな。ふたりとも、追試なんてことになったらデートどころじゃないと思え」

「ついっ!?」

「し……」


 今度はふたりとも、愕然とした表情になって。


「ま、待って悠馬! それだけはご勘弁を!」

「なあおい! オレ転校生なんだ! 田舎と授業の感じが違って大変なんだ!」

「わ、わたしだって大変だし! なんか! これまでの人生で真面目に勉強してこなかったから! 急に勉強しろって言われても無理です!」

「おいそれは駄目だろ勉強しろ! オレもしたくないけど!」


 このふたりは駄目かもしれない。


「ふたりとも。期末試験の成績が良くなかったら、俺は姉ちゃんと遊びに行く」

「やだー!」

「それは駄目だ悠馬! あいつは駄目だ!」


 なんでそうなるんだ。愛奈だって行きたがってるなら、選択肢に入れるべきだろ。


「負けられない戦いになりそう……」

「おう。熱い戦いだ。冬だけど」


 大丈夫かな、このふたり。主に期末試験。



――――



「へー。クリスマスね。人間も面白いことするじゃない。なんか、街が華やかって感じになって嫌いじゃないわ」


 魔法の鏡を通して人間の世界を見るキエラの声は、少し弾んでいた。

 年末の忙しさみたいなのも合わさって、誰もかれもがウキウキした気分になる季節。

 でも。


「ティアラはクリスマス、好き?」

「そんなに好きじゃない」

「そうなの? サンタクロースって人が、子供たちにプレゼントくれるんでしょ? ティアラは貰えなかったの?」

「うん。貰えなかった。……くれたんだとは思う。けど毎年、お母さんがわたしより先に起きて回収したの」

「回収? お母さん、プレゼント欲しかったの?」

「ううん。売ってお金に変えたんだって。だからわたしは、プレゼントに何を貰ったのかも知らないの」

「かわいそうなティアラ!」


 直後には、キエラはティアラの体をぎゅっと抱きしめていて。


「大丈夫よ! わたしがティアラにプレゼントいっぱい渡すから! なにがほしい? 何でも言って!」

「いいよ、キエラ。もういっぱい貰ってる。それより、一緒に恐怖を集めましょ?」

「ええ! ええ! そうね! ティアラを楽しませなかったクリスマスなんていらない! ぶち壊しちゃいましょう! ……そのために準備をしないとね」

「もしかして、また新しいお友達を作るの?」

「ええ。どんな人がいいかしら。あの男みたいなハズレはいらない。強くて、仲間として好きになれる人がいいわ!」

「……そうね。ええ。探しましょう」


 好きになれる相手を失った悲しみから、今度はどうでもいい相手としてホームレスの正蔵を選んだのに。その経緯はすっかり忘れているようだ。パインのことまでは忘れてないと思うけど。


 そんなキエラが愛おしくて、ティアラは彼女を抱き返して頭を撫でた。

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