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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-59.陸上部カフェ

「悠馬さん悠馬さん。お化け屋敷の評判、どうですか?」

「ああ。好評だ。みんな怖がってる」

「さっきなんてお孫さんに連れられて入ったお婆さんが腰抜かしちゃったもんね。本気で祟られるー! って言って怖がってた」

「それ、大丈夫なのかい? 怖いのは伝わるけど、営業停止を言い渡されたりとかは」

「大丈夫! お婆さんもわかってくれたから!」


 ああ、なんとか出店取りやめにはならなかった。もう少し怖がらせるのも程々にと思ったけれど。


 実際、評判はいいらしかった。校内を歩いていても、あちこちで噂を聞く。かなり怖いらしいと。ちょっと気恥ずかしい気持ちもありつつ、誇らしかった。

 それはいいんだけど、愛奈も校内を歩いているわけで。評判を聞き続けては恐怖心を高めていることだろう。


「行きたくない。ううん悠馬の努力の成果だけは見たいけど。でも行きたくない……」


 俺の手を繋いで寄り添うようにして震える愛奈をの体に、俺からも少しくっついてやった。

 とりあえず俺は腹が減った。


 模擬店はいくらでもある。グラウンドに行けば屋台みたいなのもたくさんある。それに。


「やあ遥。よく来たね。そして悠馬くんのお姉さん。お久しぶりです」

「ええ。久しぶり。その……すごい格好ね」


 陸上部カフェもグラウンドにあった。愛奈は、陸上部の女子ユニフォームを着た文香部長を見て気まずそうにしている。


 俺も見慣れたとはいえ、最初は驚いた。レーシングブルマって、見ててちょっと気恥ずかしい格好だよな。お尻の形が丸わかりで。

 引き締まったお腹も見せる格好だし、部長の胸大きいからそっちにも目がいくし。


 元は、もっと大胆な格好しようとして生徒会長に止められたんだよな。何する気だったんだ。


「部長、盛り上がってますね陸上部カフェ。それに体力測定も! お客さん大勢いますし」

「ああ。将来の部員の勧誘もバッチリだよ」


 と、遥と部長はお互いに親指を立て合う。


 そして部長はラフィオとつむぎに目を向けて。


「君たちも、なかなかいい体してるね。将来的にうちの陸上部に入らないかい?」

「入りたいです! 彼氏と一緒に入るってありなんでしょうか!?」


 と、つむぎがラフィオの体を引き寄せながら尋ねた。臆面もなく言えるのがさすがだ。

 さすがなのは部長も同じで、驚いた様子もなく。


「君たちは付き合っているのかい? 最近の小学生は進んでいるね。もちろん大歓迎だよ」


 年度末には卒業してる文香が、五年後くらいに入学することになるつむぎのことを安請け合いするんじゃない。あと、ラフィオが高校に入れるのかもわからないし。


 ところで体力測定スペースからこちらの話に聞き耳を立てていて、ひとりでショックを受けて崩れ落ちている沢木の姿が目に入った。

 小学生でも付き合ってる奴がいるっていうの、あいつにとっては聞き逃せない情報だよな。一方の自分の不甲斐なさが強調されるというか。


 あの様子じゃ、文化祭でも彼女は出来る見込みはなさそうだった。


 そんな沢木だけど、部員の勧誘という点では成果を上げているらしかった。中学生と思しき男子たちに囲まれている。

 同性にはモテるんだよな。基本的にノリのいいやつだし。体育会系男子とは仲良くできるし、いい先輩にもなれる。


「あいつも頑張ってるな」

「ああ。頑張ってるな。けどアユム。それを伝えると、また告白されるぞ」

「それは勘弁だ」


 うん。わかる。


 そんな感じで過ごしていると、あっという間に時間は過ぎていく。俺たちはお化け屋敷に戻らないといけなくなったし、愛奈もそろそろそこに行かなきゃいけない。


「あー。なんというか。その……メイド喫茶模擬店とか行きたいなー」


 なんて、往生際悪く逃げようとしている。


「ラフィオ。お姉さんのこと、ちゃんとうちまで連れてくるようにね!」

「いいけど。なんで僕にお願いするんだ」

「ラフィオが頼りになるからだよー」

「たしかにつむぎと比べればな……」


 はあとため息をついて、ラフィオは愛奈の手を引いて教室へと向かっていく。



――――



 見方によっては両手に花と言えるのかもしれない。つむぎと愛奈の手を握るのに、ラフィオの両手が塞がってるのだから。

 ラフィオにとっては苦労しか感じさせない状況だけど。


 つむぎは、高校の文化祭を見るのは初めてだから、周りをキョロキョロと見回している。モフモフっぽいものが目についたら駆け出してしまうから、常に手を掴んで離してはいけない。

 一方の愛奈は。


「あー。お化けなんかいない。全部人がやってるやつ。高校生のお遊び。だから何も怖くない。こわくないもん……」


 さっきからこんな調子だ。


 怖いなら行かないときっぱり断ればいいのに、それはしなかった。悠馬の頑張りは目にしたいらしい。


 お化け屋敷が評判なのは間違いないらしく、結構な列ができていた。その最後尾に立ち、前にいる人たちが入り口に吸い込まれていき、教室周りの雰囲気が見えてくるに従って愛奈の震えも強くなっていく。


「な、なんで周りからして血の手形とかそんな飾りつけてるのかしら。怖いじゃない……」

「お化け屋敷だからだろ」

「あの遊園地のお化け屋敷ほど、飾りは怖くないね」

「あれはプロの仕事だからね」


 あそこに愛奈を放り込めば恐怖で本気で死にかねない。


 待っている間にも、どこかに置かれたスピーカーからストーリーの説明が流れてきた。これも恐ろしげな語り口だけど、内容はラフィオが考えたよく知っているもの。

 患者を殺すことを快楽に思っていた医者が祟られて、その家は廃墟になったが幽霊の巣窟となり続けている。

 そんな廃墟という設定の教室に、ついに愛奈たちが入ることになって。


「……あれ? なんか明るい?」


 思っていたのとは違う雰囲気のお化け屋敷の中身に、愛奈は怪訝な声をあげる。

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