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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-58.魔法少女ショー

 ラフィオもやはり食べてみる。そこそこの味だ。


「まあ、高校生の模擬店としては頑張ってるね。僕の方が美味しく作れるけど」

「うん。ラフィオのご飯食べたいなー」

「夜にね」

「うへー。わたしに恥ずかしい格好させた張本人が偉そうにしてる」

「してちゃ駄目なのかい?」

「あなたの作った格好で、全国の若い女性がこんな格好をしてることについて、どう思う?」

「人がどんな格好をしようが、個人の自由だよ。僕が思うのは、魔法少女が受け入れられることが嬉しい。それだけだ」

「それにラフィオは、もうわたし以外の女の子は目に入らないからねー」

「まあうん。それはそうだね」

「あー。小学生がいちゃいちゃしてるの見ると、なんか刺さる……頭が痛い……」

「悠馬が恋しくなったかい? だったらお化け屋敷に」

「それは行かない……まだ行かない……」


 愛奈も難儀な人だ。



「見てください! 講堂で魔法少女ショーやるらしいですよ!」


 つむぎがパンフレットを見ながら興奮した声で告げた。


「ショー!?」

「さっきのコスプレとは別に、有志がオリジナルのシナリオで魔法少女が戦う話を作って劇にしたらしいです!」

「えー。わたしが劇の題材に? 見たいような見たくないような……」

「せっかくなので行ってみましょう! ラフィオも出てくるかも!」

「出てくるかなー。てか、つむぎちゃんは自分じゃない人が自分として劇に出てくるって大丈夫なの?」

「? 特になんともないですけど」

「そっかー。わたしはなんか恥ずかしいというか」

「誰も愛奈のことは意識してないだろ。セイバーとしか見てない」

「だとしても恥ずかしいの……」


 そうは言いつつ、愛奈はつむぎについていって講堂へ向かった。


 魔法少女人気は本物のようで、客席は満員になっていて立ち見も大勢いた。そしてショーが始まる。

 平和な街を怪物が襲い、魔法少女が駆けつけて平和が戻る。そんな普通の話の始まりだったんだけど。


「大丈夫かい、お嬢さん。もう大丈夫だからね?」

「は、はい。ありがとうございます、セイバー様!」

「この街の平和は私が守るよ」


 倒れた女子生徒を、なんかイケメン風の女子がセイバーのコスプレをして抱えていた。"わたし"の言い方もなんか違うぞ。声も低めに作っている。

 なんだこれ。


 セイバーが可憐に活躍して怪物を倒したと思ったら、助けた女の子とセイバーの秘密の逢瀬が描かれることになった。


 お互いに、周囲には自分たちの関係を内緒にして、夜ごとにこっそりと会いに行く。そんな日々は長くは続かず、やがて周囲にバレることになり……。

 いや、マジでなんだこれは。


「あばー……」


 あ。愛奈が放心してる。


「わ、わたしにガチ恋してる女の子が脚本書いたの? わたしと夜のデートしたり、仲良くするための劇なの? それをノリノリで形にしようって考えた人がこれだけいるの?」

「愛奈じゃなくてセイバーな」

「同じなのよー」


 まあうん。さすがにわかるけど。劇の中で、少女とセイバーは永遠の愛を誓い合って周囲から祝福されていた。

 これを見せられる本人にとってはたまったものじゃないだろう。


「むー。ラフィオの出番、全然ない……」


 つむぎはつむぎで、思ってたのと違う内容の劇に不満な様子だった。


 そんな地獄みたいな観劇が終わったあたりに、悠馬から連絡がきた。向こうの休憩時間が来たらしい。



――――



「あばー……悠馬ー。慰めてー」

「いや、なんなんだ姉ちゃん」

「だってー」


 休憩時間が来て、遥とアユムを連れて愛奈との合流場所に向かう。

 愛奈は廊下の隅で憔悴しきった様子で座り込んでいた。そして俺を見るなり抱きついてきた。


「どうなってるんだ」

「いや、なんというか。さっき魔法少女の劇を見て」


 ラフィオがその内容を、とてもわかりやすくかつソフトな表現で教えてくれた。なんとなく理解できた。


「それは心折れるよな」

「悠馬はわたしの心、わかってくれると思ってたわ!」

「うん。自分の立場になるとそれはかなりきつい」

「でもよかったじゃないですか。お姉さんのファン、きっといっぱいいると思いますよ! 将来的にお姉さんを養いたいって女の子もいるはずです!」

「いても嬉しくないのよ! 女の子に好かれても別に嬉しくないのよ! わたしは悠馬に好かれればそれでいいの!」

「俺はよくないんだけどな」

「しっかし魔法少女ってそんな人気なんだな。オレも下手したらそんな劇作られるのか?」

「かもねー。バーサーカーっていい感じにガサツで男らしいし、割と女の子人気出るかもよ? 出てきたタイミングが遅かったから劇に間に合わなかっただけで」

「そうか。なんか憧れるな。自分が劇のテーマになるって。都会みたいだ」


 それでいいのか。愛奈みたいに、羞恥心でこんなことになりかねないぞ。

 その愛奈は、まだまだ落ち着くのには時間が掛かりそうだ。


「うえー。悠馬ー」

「はいはい。しばらく一緒にいるから」

「永遠に一緒にいてー。夕方以降もー!」

「俺がお化け屋敷に戻ることを阻止して、あわよくば自分も行かなくて済むことを期待してるな。そこまで頭が回るなら大丈夫そうだな」

「待って! そんなことないもん! ちょっとしか考えてないもん!」


 ちょっとは考えてたのか。

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