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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-54.柱を壊せ

 セイバーに襲いかかっていた黒タイツたちは、一瞬にして全滅した。


「悠馬ー!」

「うおっ!?」

「やっぱり悠馬よね! 他の誰も助けに来てくれなかったのに! 悠馬は来てくれたのね!」


 俺に飛びつくように抱きつきながら、セイバーは歓喜の気持ちを隠そうともしない。


「はー。しかも抜群のコンビネーションでばったばったと敵を切り殺す! やっぱり姉弟なのよねー。悠馬とわたしのコンビが最強なのよねー」

「はいはい。わかったから離せ。フィアイーターが残ってるから戦うぞ」

「えー。やだー。疲れたー。みんなに任せましょう」

「姉ちゃんが行かないなら俺だけで行くぞ」

「あー。待ってー。行かないでー」


 歩く俺に、セイバーが掴まってズルズルと引きずられる。いや、なんだこれは。



 巨大なフィアイーターに、魔法少女たちは善戦しているようだった。


 ハンターの弓は硬い材質の敵にあまり有効ではない一方で、フィアイーターの体に出来た傷口から見える闇へと矢を刺して、回復を阻害していた。みんなとは少し離れた場所からの援護だ。

 その傷を作っているのはライナーとバーサーカーで、振り下ろされる音符を回避しながらフィアイーターの手足と胴体を叩いて砕く。コアは見つけられていない様子。

 胴に見当たらないなら、あるのは。


「頭だな! おい! みんな! こいつの柱を砕け!」


 ラフィオも同じ考えに至ったらしい。珍しくハンターを上に乗せてない状態で、彼は奏楽堂の舞台の上に乗る。


 そう、元々は舞台だ。胴体と頭の間に空間がある。それを支えているのは二本が八組で計十六本の柱。

 試しに巨体で押してみたようだけど、さすがにビクともしない。ハンターも矢を当てたけど、それで壊れるものじゃない。


「わかったー。澁谷さーん。レールガンもう一回撃てそうですか!?」

「あ! わたしも手伝う!」


 ハンターと麻美が、どこかにある電源車の方に駆けていく。


「ライナーとバーサーカーがメインで壊すことになる。もちろんフィアイーターも阻止しようとするだろうから、俺たちで援護だ」

「うへー。わたしは悠馬とのんびり観戦したいんだけど。疲れたから」

「もうひと踏ん張りだ。いくぞ」

「うにゃーい」


 どんな返事だ。


 俺が槍を構えて駆け出すと、セイバーも後についてきた。

 ライナーもバーサーカーもやるべきことはわかっているらしい。自分も舞台の上に乗って、キックで柱を削って折っていく。


 フィアイーターは踊るように足を動かしてジタバタすることで振り落とそうと試みていた。


「うわあ! これじゃ柱壊すどころじゃない!」

「おい! 誰かなんとかしてくれ!」

「わかってる! 剛! こいつを押して倒すぞ!」

「うん。そうだね。バランスを崩そう」

「フィアァァァァァ!」


 俺たちが迫るのを見て、フィアイーターは後退して距離を取ろうとした。しかしその足をレールガンの弾丸が貫き、大穴を開けた。しかも両足を一度の銃撃で貫いていた。

 とんでもないスナイパーだな。


「剛、今だ!」

「うん!」


 ぐらついたフィアイーターの胴体に、それぞれの武器をぶつけて押す。


「フィアアアア!?」


 巨体が大きく傾き、舞台部分の縁を地面につけて座り込むように斜めに倒れた。完全に横転させるのは無理そうだから、高いところにある屋根を狙うにはやっぱり崩すしかない。


「ライナー、バーサーカー、柱を壊してくれ! ハンターは足が回復するのを邪魔して、残りは腕の対処だ!」


 ハンターは急いで戻ってきて、フィアイーターの足に矢を射掛けていた。

 ライナーは斜めになった不安定な足場の上でも、なんとか渾身の蹴りを放って柱を一本ずつへし折っていく。バーサーカーも同じで、蹴りよりはこっちの方がやりやすいとばかりに、腰を落として安定させた姿勢で。


「おりゃっ!」


 柱に平手をぶつけていた。


 相撲取りの張り手みたいだ。本人に言ったら怒られるだろうけど。

 バーサーカーのパワーは十分で、柱はばっちり折れた。そのすぐ隣にある柱も、バーサーカーは続けて回し蹴りすることで破壊。


「フィアアアアアァァァァ」


 敵も必死だ。自分の体の中に手を突っ込んで、魔法少女たちの蛮行を阻止しようとする。その手にラフィオが飛びかかった。


「じっとしてろよ怪物!」


 ラフィオもそれなりの大きさがあるため、フィアイーターにとっては無視できない。腕に掴みかかられれば持ち上げるのは至難の業。

 そしてもう一方の手は俺たちで対処しないといけない。


 ライナーに向けて平手打ちするように振られる手。それと舞台の間に棒を差し込む。まさにつっかえ棒だ。

 ステンレス製の棒の先端がフィアイーターの手に刺さった。かなり痛いだろうな。悲痛な咆哮も上がった。


 同時に棒も大きく湾曲した。仕方がない。これも使い捨ての武器だ。


「フィァァァァァ! フィァァァァァァァ!」


 手のひらに刺さった棒をなんとか振り払おうとフィアイーターは腕をブンブン振り回した。その付け根も大きく稼働しているけど、とりあえずライナーたちに攻撃が加わる気配はない。


「ねえ! 棒が取れたら、また攻撃してくるよ!」

「その前に腕を完全に潰せってか?」

「できるかい?」

「無茶を言うな」

「じゃあ僕がやってみるよ」


 先輩は当たり前のように無茶をする。

 腕の付け根に隙を見て接近。トンファーで思いっきり叩いた。

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