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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-50.鷹舞公園の奏楽堂

 数分後、スタジオで歌のお兄さんお姉さんが着ぐるみや子供たちと一緒にダンスするエンディングの後で、番組はアニメに切り替わった。


「よしラフィオ行こう! わー、ラフィオもモフモフだ!」

「ああ。そうだね」

「モフモフになってくれるなら早く言ってくれれば良かったのに! わたしの一番のモフモフはラフィオだから!」

「うん。言わなくてもわかると思ってね。普段からフィアイーター出た時はこうしてるから。今更言うのも変だろう?」

「モフモフー!」

「僕はね。恋人の考えてることが未だにわからないんだよ」


 ハンターに抱きつかれながら、ラフィオは深くため息をついた。



――――



 俺たちが公園に一番乗りだったらしい。セイバーやハンターの姿はなく、黒タイツたちが人々を襲っていた。


「ライナーは前と同じように公園内を回って散らばった黒タイツを片付けてくれ。バーサーカー、他の魔法少女が来るまでの間、フィアイーターが暴れないよう食い止めてくれ。俺とファイターでその援護をする」

「おっけー。さっさと終わらせて、そっちに加勢するね! みんな気をつけてね! あの男がいると思うから!」

「わかってる。油断はしない」


 ライナーが公園の外周を回るように駆け出していく。ついでに、目についた黒タイツを蹴り殺していた。


「フィアァァァァァァ!」


 怪物の咆哮が聞こえる。公園の西側。大学がある方向だ。

 バーサーカーが先行して向かい、俺たちも続く。黒タイツがいたから、バーサーカーが飛び膝蹴りを食らわして一撃で沈めた。


 その向こうにフィアイーターがいた。しかもかなり大きい。


「な、なんだありゃ……」

「この公園の有名なシンボルだね。奏楽堂」

「ああ。まさかこれがフィアイーターになるとはな」


 この公園についてよく知らないバーサーカーには、これが何かわからないだろう。


 フィアイーターになったのは、物というより建造物と言うべきだろうか。正確には舞台の一種。

 鷹舞公園の奏楽堂。その名の通り、中に楽団が入って演奏するための建物。大昔に建てられたもので、今は本来の使われ方をすることは滅多にないけど、この地の歴史を今に伝えるシンボルだ。


 石造りの八角形の舞台が、階段をあがった所に設置されている。舞台の直径は十メートルほどかな。八角形の頂点から柱が二本ずつ伸びていて屋根を支えている。屋根のてっぺんはドームになっている。

 舞台を囲む柵は楽譜の形をしていて音符も描かれていた。実際に演奏すると、この国の国歌になるそうだ。

 そんな奏楽堂が、底の部分に足を生やして二足歩行をしていた。地面に接していた階段も宙ぶらりんとなっている。


 両手は舞台の側面から生えている。顔はドーム状の屋根にあって、手と頭の距離はかなりあるようだった。


「でけえな、フィアイーター……オレだけじゃ倒せないかもな」

「敵も本気ってことだ。まずは時間稼ぎだ。みんな来てくれるはずだから」

「おう。オレひとりで、できるだけこいつをボコって黒タイツどもも殺す! そういうことだよな!」

「いいね。バーサーカーには闘志がある。頼もしい」

「ああ。けど……それだけじゃ勝てないよな」


 フィアイーターの後ろから、男がひとり出てきた。正蔵という奴だ。


 キエラとティアラもその後ろに控えていた。こいつらも戦いに参加するつもりか?


 正蔵は俺たちの姿を見て、期待した人物がいないことに気づいたらしい。


「あの棒使いはどうした? 逃げたのか? それとも、もう死んでいるのか?」

「どれも違う。ここから離れた場所で穏やかに生きてるんだ。今更お前みたいな奴に関わる義理はない。あとな、俺の師匠はお前のこと、名前も知らないみたいだぞ? 随分軽い扱いだな」

「はん。名前を知らないのはこっちも同じだ。だがそれがなんだ? 必要なのは技だけだろうが。それさえ破れば俺の勝ちだ。俺はあの男を超えられる」

「何を考えてるかは知らないが、お前の浅さはわかったよ。ホームレスになったのも納得だな」

「なんだと?」

「力だけじゃなくて中身でも、あの人に遠く及ばないって言ったんだよ」

「クソガキが! 構えろ! ぶっ殺してやる!」

「お前なんか、棒なんか使わなくても勝てる」

「ふざけんなっ!」


 元から人相の悪い男が激昂して、目を吊り上げて怒鳴り散らす。

 それなりに迫力があるな。が、やっぱり人間としては小さい。


 正蔵は怒りに任せて殴りかかってきた。素人丸出しの大振りパンチは、威力はあるんだろうけれど。


「おいおい。オレのこと忘れてねえか?」


 その拳を手のひらで受けたのはバーサーカーだった。拳を離さず押し合いする形に。


「邪魔だ小娘!」

「おう! 邪魔してるからな!」

「おい! お前ら! こいつをなんとかしろ!」

「フィー!」


 黒タイツたちがバーサーカーに襲いかかる。当然、俺と剛でバーサーカーを守るように立ち、黒タイツの相手をすることに。


 ナイフを出して、殴りかかってきた黒タイツの懐に潜り込んで腹を刺して押し込む。勢いのまま黒タイツを地面に押し倒して、引き抜いたナイフを首に刺し直してから別の敵に狙いをつけた。

 重心が低くなるよう、転がるようにして黒タイツに接近しつつ下から突き上げるように腹に頭突きを食らわせた。


 倒れた黒タイツに向けて起き上がりながら顔面を踏みつける。止めを刺そうとして、別の黒タイツが飛びかかってきたから回避。


 勢い余って倒れたその黒タイツの頭を蹴飛ばして首を折った。

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