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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-48.文化祭準備

 そんなアユムも、おばけのメイクを試しているところだった。


「アユムちゃんはパワーがあるから、ロッカーに隠れて勢いよく出てきてね! お客さんを殴り倒すくらいの勢いで!」

「おう! 任せろ!」

「いや。やめろ」


 後輩になるかもしれない中学生も来るんだぞ。


「でもさ、心配なんだよな。ロッカー狭いだろ?」

「まあね。人が入ることを考えた大きさじゃないもんね」

「窮屈で息が詰まるというか」

「アユムちゃん、大きいからねー。胸とか。愛奈さんが泣きそう」

「それは困るな」

「それ以外の体つきも、割とがっしりしてる方だからね。肩幅もわたしより広いし。頑張って入って! あ、お客さんが巨乳に気づくと怖さが半減しちゃうから、当日はサラシを巻いておっぱい押しつぶしてね!」

「なんでそうなるんだよ! 関係ないだろ、その、おっぱいは!」

「巨乳が出てくると怖さよりも先にえっちなのを見たいって思う気持ちが出てくるんだよ! だからおっぱいは目立っちゃいけないの! アユムちゃんお願い!」

「なんか苦しそうだから嫌なんだけど! おっぱい潰すとか!」

「おふたりとも。作業は順調ですか? それと学びの場であまりそのような会話は慎むべきですわ」

「あ。生徒会長」


 各教室の視察をしていたのだろう。生徒会長の三咲さんがやってきた。


「あなたたちは実行委員。クラスの規範です。文化祭の間、クラスはあなたを見ることになります。あまり羽目を外した言動は謹んでくださいね」

「はーい。わかりました!」


 遥はどこまでわかってるんだろうな。ビシッと敬礼する姿は、あんまり真剣ではなさそうだ。


 生徒会長も多くの生徒たちを普段から見慣れているわけで、あまり怒ることなく苦笑するに留めた。この人の一番の親友は、遥以上にノリが軽くてとんでもないこと言いそうだし。


「皆さん、準備は順調ですか?」

「はい! 最高に怖いお化け屋敷ができそうです! 心臓が悪い人は死んじゃいかねないくらいに!」

「本当に殺すのはいけませんからね。ですが、頑張ってください」

「生徒会長! 大変です陸上部が!」

「フミがまた何かやらかしたのですか!?」

「目立ちたいからと、普段よりさらに大胆なユニフォームでカフェの接客をしたいと!」

「なんて破廉恥な! 普段のもかなり危ないと思ってますのに! 神箸さん、慌ただしいですがこれで失礼しますわ! では!」


 風紀委員の腕章をつけた生徒が駆けつけてきて、三咲は俺たちにぺこりと頭を下げて親友の所に向かった。


「やー。部長もやるねー」

「問題起こしてるみたいだけどな」

「後で部長にどうなったか聞いておこーっと」

「ねえ遥ー。ここどうすればいい?」

「双里! 喋ってないで手伝えー!」


 真面目に仕事をしているクラスメイトから、喋ってるだけの俺たちに文句が飛んだ。別にサボってるわけではないけど、俺たちは実行委員だ。周りよりも多く仕事をしないといけないわけで。


「よし遥、行くぞ。手を動かそう」

「はぁーい。よーし。みんな頑張ろうねー! 暗くなるまでキリキリ働こう!」


 なんだかんだで士気は高く、文化祭の準備は着々と進んでいった。




――――



 エデルード世界。住居としている小屋以外は、一面の草原が広がる世界に、正蔵という男は早くも馴染んでいた。


 正蔵が小屋の中に立ち入ることに、キエラはいい顔をしなかった。女の園に男が入るのは法度なのだろう。

 構いやしない。鷹舞公園に比べれば、ここはずっと過ごしやすい。気温の変化はなく心地よい気候が永遠に続く。ホームレスまがいの生活をする者にとっては、天国のような場所。


 メインコアとキエラが呼んでいる巨大な石の近くにいれば、空腹になることもない。空腹を満たすためではないが、キエラは食事もくれる。ホームレス時代にはなかなか手に入らなかった、脂っこいジャンクフードも。

 いい環境だ。正蔵が最も果たしたい願いは、まだ叶わないようだが。


 あの憎い棒術の男が今どこにいるかは知らない。キエラが使う、下界を覗けるという鏡で、彼は幽霊屋敷を監視していた。しかしそこに動きはない。

 あの男が帰ってきたら、間違いなくここに寄るはずなのに。


 まさか既にこの世にいないとか? 何十年も前のことだ。彼ももう若くはない。故に今なら倒せると、希望的観測を持っていたのだが。


 まあいい。覆面男にもう一度訊けばいいだけだ。

 仮に死んでいたら、技を受け継いでいる覆面男を代わりに殺して溜飲を下げるとしよう。


 俺が負けたのはあの男ではなく、それが身につけている技なのだから。技さえ打ち破れば、あの男を超えたのと同義と言えるはずだ。


 正蔵という男は、自分が勝ったという結果を得るために、覆面男に勝ちさえすばいいと自分に言い聞かせていた。自分の人生の大半、心の中を占めていたあの男を超えられる。怪物の力を手に入れた今ならできる。

 ただっぴろい草原にて、彼は来る日に備えて体を鍛えていた。と言っても、長いホームレス生活の中でトレーニング方法なんか学ぶ機会はなかった。なんとなく、虚空に向けて拳を突きつけるだけ。


「それ、意味ないと思うな」


 静かに話しかける声がした。ティアラという女。


 自分と同じフィアイーターなる怪物らしい。

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