表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

503/746

10-46.平和な食卓と恐怖演出

 帰宅すると、愛奈は空のグラスを握ってテーブルに突っ伏していた。だらしない。

 そのまま寝てくれれば良かったのに、俺の気配を察知した愛奈は顔を上げて。


「ゆうまー! どこ行ってたのよー!? 寂しかった!」

「麻美の所にいるって伝えてただろ。そんなに長い時間じゃないし」

「悠馬はお姉ちゃんより麻美を選ぶんだー」

「そんなことはない」


 なんでその発想に至るんだ。


「ほら姉ちゃん、もう飲むな。明日に障る」

「やだー! 明日は会社休みたい!」

「休むな」

「有給まだ残ってるもん!」

「使い切らなかったセーフとかじゃないんだよ。ある程度は来年に持ち越さないと」

「宵越しの金は持たないのが江戸っ子だぜー」

「俺たちに江戸要素はない」

「そうだ悠馬。この前幽霊の格好した時の白装束持ってこようか?」

「いや、なんでだよ遥」

「なんか江戸っぽいし。愛奈さん怖がらせて部屋まで追い込んで寝かせるの」

「和服着たら江戸っていうのも乱暴な発想だけど、おもしろいな。よしやってくれ」

「あの! 本人の前で驚かせる計画を練るのやめてもらえないでしょうか!? てか怖いんだけど!」

「アユムちゃん、着替えるから手伝って」

「おう。部屋に行けばいいんだな」

「待って。本当に怖がらせようとしないで」

「事前に怖がらせるってわかってたら、怖くないですよね、お姉さん?」

「それでも怖いのよー!」


 愛奈の言うことは聞かずに、遥とアユムは部屋に行った。


 まったく、愛奈をからかうことには容赦がないな。


「姉ちゃん、今のうちに逃げろ。風呂にでも入ってやり過ごせ。遥は俺が止めるから」

「いいの? やったー! 悠馬も一緒にお風呂入ろ!」

「こいつ話を聞いてない」


 遥を止めると言っただろうが。そこまで酔ってるのか。

 浴室まで愛奈を押して行ってから、俺はラフィオが用意していた夕飯をようやく食べる。


「君も毎日大変だね」

「ラフィオもな」

「僕は慣れた」

「ラフィオー。モフモフしていいよねー?」

「駄目」


 夕飯作りという仕事を終えたラフィオを、もう邪魔してもいい時間になったと認識したつむぎが抱きつこうとしていた。

 その両腕を掴んで押し合って接近を阻止しながら、少年姿のラフィオは平然と話している。


「つむぎ。遥たちの分もキッチンから持ってきてくれ」

「はーい。それが終わったらラフィオモフモフしていい?」

「駄目」

「やったー!」

「ほら。早く行ってこい」


 こっちも微妙に会話が成り立ってない。ラフィオは全く気にしていない様子だった。


「慣れた、か。俺は姉ちゃんの相手が全然慣れない」

「慣れてる範疇だと思うよ。普通の人なら、愛想を尽かしてブチ切れている。君はそれを、ちゃんと家族としてコントロールできている」

「そういうものか? なあラフィオ。文化祭の準備が本格的に忙しくなるから、俺たちこれから朝が早かったり遅くに帰ることになると思う」

「そうか。また、つむぎが愛奈を起こすことになるんだね。いいとも。僕たちで愛奈の世話をしよう」

「いいのか。普通の人がブチ切れるような奴なのに」

「構わないさ」

「ラフィオ! モフモフしていい!? いいよねありがとう! ぐぬぬ……なんでモフモフさせてくれないのー!?」

「愛奈は、これよりずっと扱いやすい」

「そうか」


 ラフィオも慣れたんだな。よそ見をしながら、つむぎの腕を掴んで止めている。


 そして、このモフリストと一生でも添い遂げる覚悟を決めたんだと思う。


 遥たちの分の夕飯がテーブルに置かれているけど、肝心の彼女たちはいない。遥はそろそろ白装束に着替えた頃だろうかと廊下の方を見ると、ちょうど戻ってきたところだった。

 ただし、アユムだけ。


「なあ愛奈。ちょっと聞きたいんだけどさ」


 そんなアユムはリビングに入ると愛奈に話しかけた。しかし当の本人は風呂だ。


「あれ? いない? そっか。おーい、遥」

「うがあああぁぁぁぁ!」

「中止……遅かったか」


 片足でぴょんぴょん飛びながらリビングに乱入してくる白装束の遥は、そのままの勢いでテレビの前のソファに倒れ込んだ。

 いや、なんなんだ。


 なんとなくわかるけど。


「いやな。遥が愛奈を驚かせるために、オレにもひと芝居打ってくれって。これが都会の流儀だって」

「都会関係ないけどな」

「おう。さすがにオレもそれはわかるし、都会じゃなくても普通に手伝うって答えた」

「偉い。で、どうしたんだ?」

「前のお化け屋敷の応用だよ。注意を逸して油断させたところで驚かせると怖い」

「なるほど。アユムが話しかけて、後ろから遥が驚かせるのか」

「愛奈がいないから失敗したけどな」

「わーん! うまくいくと思ったのに! 愛奈さんお風呂!? よし行ってくる!」

「姉ちゃんが怖がるからやめろ。ほら、夕飯食べろ」

「はあーい。よっと」


 もはや松葉杖すら使わず、ソファから立ち上がって背もたれに手をついてから数歩片足跳びをして椅子まで到達した。なんて奴だ。


「いただきまーす。ラフィオのご飯本当に美味しいよねー」

「それはどうも」

「わたしと比べても、結構いい線行く美味さだよね」

「上から目線なのはムカつくね。遥はいつまで白装束着てるんだい?」

「愛奈さんを驚かせる時までです!」

「諦めろ」

「でも、本当に怖いお化け屋敷を作るには、やっぱり演出面は愛奈さんに見てもらった方がいいかなって」

「実験台を演出担当みたいに言うな」

「悠馬も愛奈さんへの表面、雑だよね。実験台って」

「まあうん。そんなもんだろ。遥も似たようなこと思ってるだろうし」

「バレたかー。まあそうだね! 悠馬を巡る、わたしと愛奈さんのバトルの一環でやってる面もあるけどね!」

「俺を巡って争うな」

「なんか、古いメロドラマのセリフみたいだね。わたしのために争わないでって」

「この前、テレビでやってるドラマで見たぞ」

「ほんとに? 昔の奴の再放送とかじゃなくて!?」

「うん。まあドラマの中でも、古臭いセリフって突っ込まれてたけど」

「そりゃそっかー」

「ただいまー。次、お風呂誰が入る?」

「お姉さん!? しまった食べ終わる前にお風呂から出られた!」

「それを狙って会話を引き伸ばしてたからな」

「悠馬! そなた謀ったな!」

「なんで時代劇みたいな言い方なんだよ」

「古めかしい言い方繋がりで」


 確かに。今見ることはないけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ