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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-40.部活動対抗リレー

「お父さんお母さんどうだった!? わたしの応援」

「頑張ってたわねー」

「ああ。なんというか、良かったんじゃないか?」

「でしょー? わたしも活躍してるのです! あ、午後の玉入れは応援以外でも頑張るから! 見ててね!」


 車椅子でもできる唯一の競技だ。


「双里さん。遥のこと、ご迷惑になっていないかしら」


 ふと、母親が尋ねた。

 親元を離れた娘を心配しているのと、その圧倒的な行動力に困惑しているらしい。


「いえ。俺も助かっています。姉と二人暮しが長くて寂しい期間が多かったので、今は家が賑やかになって楽しいです」


 だから、本心を伝えた。遥の同居は迷惑なんかじゃないと。


「そう。本当によかった。ありがとう。女川さんもね」

「おう。遥が世話してくれてオレも助かってる! あ、助かってます!」

「ふふっ。遥は本当に友達に恵まれたのね」


 人の良さそうな母親は、品良く笑った。それでも嬉しさは十分に伝わってきた。



 そして午後の部。


「よっしゃー! みんな気合い入れて行くよ! うおー!」

「なあ遥! 玉入れってこんなに難しかったか!?」

「狙いをよくつけるのが大事なんだよアユムちゃん! 落ち着いて投げるの!」


 玉入れでは遥が、座った状態からでも複数の玉を籠に入れることに成功していた。 


 みんなぴょん跳ねながら投げているのだけど、それをすれば狙いが逸れる。籠の高さの問題で、普通に投げたら届かないことが多いから少しでも近づくために跳ぶのだけど。

 遥はそれを、座ったままの投擲で次々に入れていた。


「わたしこう見えて、陸上部なので!」

「それ、関係あるのか?」

「あと、車椅子を動かすと腕力鍛えられるので!」

「それはありそう」


 基本的に車椅子は自力で動かす遥は、たしかに周囲と比べれば腕力ありそうだ。


 遥の活躍によって、玉入れはうちのクラスが勝利を収めた。

 そして体育祭はプログラムを順調に消化していく。後半に行くに従って、メインっぽい種目が増えていく。徒競走とかリレーとか。



 あと、エキシビション的に部活動対抗リレーも行われた。


 運動部がそれぞれ張り切っていて、ユニフォームに身を包んで走る。一部の文化部も参加していて、彼らは部活にちなんだ物を持っていた。

 野球部にサッカー部にバレー部。茶器を両手で持っている茶道部に、でかい天体望遠鏡を背負った科学部もいた。


 そしてもちろん、我らが陸上部も参加していて。


「部長ー! 頑張ってー!」


 遥の声援に、文香部長が手を振る。それ以外にも、見知った陸上部員たちが体を動かしていた。


 ピストルが鳴って各ランナー一斉にスタート。陸上部の最初のランナーは、この体育祭で活躍して彼女を作ると張り切っていた沢木だ。

 実力だけなら来年の部長候補と言われるその足の速さは本物で、体力自慢の他の運動部たちを一気に引き離し、それに食らいついていく茶道部員と熾烈なデットヒートを繰り広げながらトップでバトンを渡した。


「おー! 沢木すごい!」

「あいつすげえな! いきなり告られた時は驚いたけどさ!」


 遥もアユムも、その俊足に惜しみない称賛の声をあげる。他の陸上部員たちも、よくやったと褒め称えていた。

 当の沢木は偉大な仕事を終えたとばかりに、コースの邪魔にならないところで地面に仰向けに倒れていた。


 本人としては、先頭ランナーの務めを立派に果たしたその勇姿に惜しみない声援が送られているこの状況に浸りたかったのだろう。

 たしかに沢木を称える声は少なくない。けどそれ以上に。


「茶道部早くない?」

「茶道部って運動するイメージあったっけ!?」

「てか陸上部についていってるのすごくない?」

「茶道部すげえ!」

「なんか走ってる姿も優雅だし」

「君たち! いい体してるね! 陸上部と兼部しないかい!?」


 そう。なぜか健闘している茶道部への反応と声援が圧倒的に多かった。


 事態に気づいて起き上がった沢木に、さらに追い打ちがかかる。

 茶道部の先頭ランナーの男子生徒に、健闘を称えるように女子が駆け寄っていた。ふたりの距離感からその親しき仲は察することができて。


 茶道部に勝ったはずの沢木は、気が抜けたように再び地面に倒れるのだった。


「不憫な奴だよな。もう誰もあいつのこと見てねぇし」

「まあなー。いつか報われればいいけど」

「アユムちゃん、付き合ってあげたら?」

「やだよ。あいつ、なんか軽いし」

「だよねー。あ、部長頑張ってー! 茶道部なんかぶちのめしてください!」


 沢木の存在は既に忘れ去られ、リレーは他の部活に圧倒的なリードを作った陸上部と茶道部それぞれの部長が熾烈なデットヒートを繰り広げるアンカー対決となってていた。

 両手で茶器を抱えるように持つ茶道部の部長はたしかに美しい姿勢での走りを維持していて、走行に最適なフォームを見せつけてながら走る文香部長の方が少しリードしているようだった。


 最後の直線。追い込みをかける茶道部に文香も負けじと加速する。陸上部か茶道部か。両者一歩も譲らぬ戦いは。


「やったー! 部長すごい! やっぱり陸上部最高!」


 僅かな差で陸上部に軍配が上がった。


 陸上部員が皆、部長の方へ駆け寄ってその勇姿を称える。文香部長は、激戦を繰り広げた茶道部の部長と硬い握手を交わしていた。


 そこには青春のまばゆい煌めきがあった。今日のどの競技よりも盛り上がった瞬間。間違いなく、陸上部と茶道部が今日のMVPだ。

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