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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-39.体育祭

 というわけで数日後、体育祭の日が来た。

 クラス割で、三チームに分かれて各種競技で競い合うというもの。父兄の皆さんも来て、それなりに盛り上がっている。


「ふれー。ふれー! みんな頑張れー!」


 遥も張り切ってるのか、チアリーダー姿になって車椅子に座ってみんなを応援していた。短めのスカートは座って足をしっかり閉じてるからセクシーさはあまり感じられなかった。

 他にそんな奴はいない。応援団はいるけど、まだ出番じゃない。


「いや。なんで遥そんな格好してるんだ」

「だって他にすることないじゃん? だから応援に力を入れることにしました!」

「気持ちはわかるけど」

「お父さんもお母さんも見に来てくれるって言ってたし! わたしも活躍しないとね!」

「この活躍でいいのか」


 両親にこの格好を見せることに張り切った様子を見せる。どういうことなんだ。両親もそれでいいのか。


 いいのかもしれない。こんな形でも、娘が体育祭で活躍することは親にとっては幸せなのかも。


「ちなみに先生や生徒会その地の許可は取ってます!」


 親指立ててるんだろうけど、遥の両手は黄色いポンポンで塞がれていて指の形なんか見えなかった。


「悠馬もアユムちゃんも! そしてみんなも頑張ってね! 勝利はわたしたちの物だよー!」


 クラス内では慕われてる遥だから、そう声をかければみんな反応してくれた。

 少なくともクラス内の士気は高かった。勝とうという気概があった。


「よっしゃ! オレもやってやる! どいつからぶちのめせばいいんだ!?」

「アユム。殴り合いで決着をつけるイベントじゃないんだ。てか田舎にも体育祭はあっただろ」

「まあな! 頑張ってたぜ! 悠馬、オレたちのクラスで優勝目指そうな!」

「わかった。頑張ろう」


 体育祭の勝ち負けにものすごくこだわるような性格はしていないけど、みんなのやる気を否定するほど冷たい人間じゃない。

 やってやろう。



「悠馬ー! がんばれー! 必要なのはなんですか!?」

「水筒!」

「そっか! 彼女か!」

「そんなアホな借り物競走があってたまるか!」

「悠馬! これ!」

「ありがとなアユム!」

「あー! わたしが渡したかったのに!」


 俺の出る競技である借り物競走は、借りる対象はごくごく普通のものだった。クラスメイトから借りるようにというルールも決められていて、変なことは起こらない。

 張り切りすぎた遥が変なことを口走ってるだけだ。


 アユムから手渡された水筒を持って走る。遥のせいで手間取ったけど、鍛えられた俺の脚力によってライバルたちを引き離して一着でゴールに成功した。


「やったー! 悠馬すごい!」

「すげぇ! やるな!」

「やっぱり指導してる人の腕がいいんだよー。誰とは言わないけど!」

「あんまり得意げな顔すんじゃねえぞ。情けなく見えるから」

「あうう……」


 指導役の遥のおかげなのは間違いない。それを自慢するから台無しになるんだけどな。



「よっしゃオレの出番だな! 行ってくる!」

「アユムちゃん頑張ってー」

「アユムはなんの競技なんだっけ?」

「障害物競走だよー」


 そうだった。


 障害が点在するコースを走り抜ける競走。平均台とか、姿勢を低くしないとくぐれない横向きのポールとか、網の下をかいくぐるとか、そんな大したことない障害ばかりだ。

 野山を駆け巡っていたアユムにとっては大したものではなく。


「おらおらおらおら!」

「わー。アユムちゃん平均台を爆走してる。すごいバランス感覚」

「ポールの下をスライディングで駆け抜けたぞ」

「ハードルもジャンプであっさりクリアしたね。これ、一位あるんじゃない?」

「期待できるな」


 元々の身体能力が高い上に、全力を出すのに抵抗がない。


 残す障害は最後の網だけになった。

 そこをくぐり抜ければゴールだ。


 だったのだけど。


「うおっ!? なんだこれ!? 絡まった!? おいどうなってるんだ!?」


 最後の最後にやらかしてしまった。網目の大きなそれがアユムの体に巻き付いていく。いや、網それ自身がそんなことをするはずがなくて、アユムが勝手にやってることなんだけど。

 さすがにアユムも網をくぐった経験はなかったのか。


「あははー。アユムちゃん頑張ってー」

「おい! 誰か助けろ! 縄が食い込んで……ひあっ!?」


 肉付きが良くて胸も大きなアユムの体を強調するように、縄が絡まって食い込んでいく。変なところに当たったらしく、恥ずかしそうな声すら上がった。

 なんというか。たいへん危険な雰囲気だ。大勢が気まずそうに目を逸したり、それでも気になってチラチラ見たりしている。


「よし悠馬。助けに行くよ! これ以上はなんか良くない気がする!」

「ああ。そうだな」

「ほら、るっちゃんも手伝って! 女子の体に触ることになるから!」


 遥が仲のいい女子生徒何人かに声をかけて救出に向かう。なんとか抜け出せたアユムは、真っ赤な顔で各方面に謝ることとなった。




「あははー。さっきのアユムちゃん、改めて見ると可愛かったなー。実はですね、写真に撮ってたんです!」

「あー! おい! やめろよ! てか消せ!」

「やだー! それよりほら! お母さんのお弁当美味しいよ! 食べて食べて!」


 昼食の時間。観戦に来ている父兄と一緒にお弁当を食べる生徒も大勢いた。


 俺の保護者は今日も仕事だし、アユムの両親も遠いところに住んでいる。そんな俺たちに、神箸夫妻が一緒にどうですかと言ってきた。

 彼らにとっても、家に住んでる娘と久々に食事する機会なわけで。


 アユムが網に縛られた恥ずかしい写真については、後でなんとかしよう。

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