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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-35.ホームレスのフィアイーター

 翌日の夕方。修学旅行の思い出に浸っていたクラスのゆるい雰囲気を引き裂くように、スマホの警報音が鳴り響いた。

 フィアイーターが再度現れた。しかも、また鷹舞公園らしい。


「最近多くない!? あの公園にキエラはなんの用があるのかな!?」

「ホームレスを殺したいとか?」

「なんのために!?」

「それは俺も知らない」

「とにかく行こうぜ! オレも戦えるってこと敵に知らせてやらねえとな!」


 アユムだって修学旅行中に戦えなかったことを気にしてたのだろう。だから張り切っていた。


「とりあえず、どこかに車椅子と荷物を置いてだねー。お、樋口さんが回収に来てくれるって。澁谷さんはまた電源車用意してくれるって!」


 前回は硬い銅像が敵だったことと人手不足から、レールガンを使ってなんとか倒したらしい。

 そしてどうやら今回も銅像がフィアイーター化したようだ。SNSで検索したらすぐに出てきた。


 ほぼ全裸の少女の銅像。ブロンズの彫刻だからエロさみたいなのは無いにしても、ちょっと気まずくなるようなモチーフだ。というかあの公園、銅像多いな。しかもラジオ体操の含めて薄着のやつばかり。


「ほら悠馬行くよ! 運んであげる!」

「ああ。行くぞ」

「あ。今日はオレが運ぶから」

「えー! なんで!?」

「オレもやりたいんだよ」

「じゃあ頼む」


 アユムの方が、少し体が大きい。


 彼女はいつの間にか変身していた。

 俺も覆面を被りナイフを取り出して、バーサーカーに背負われる形で鷹舞公園まで運ばれることになった。



「いた! あそこ! 黒タイツたちもいる!」


 公園内でフィアイーターは確かに暴れていた。あれは、噴水の近くか。


「ライナーは前と同じで公園内に散らばった黒タイツたちを倒して避難の誘導! バーサーカーはフィアイーターと戦ってくれ!」

「うん! わかった! うおー! どけどけー!」


 俺の指示に、ライナーは近くの黒タイツたちを文字通り蹴散らしながら走っていく。


 バーサーカーも俺を降ろしてフィアイーターと対峙。

 裸の女の像。しかし顔の部分がフィアイーターで、芸術的美しさなんてものは無くなっている。


「オレ、こいつを倒せるかな? 素手なんだけど」

「ひとりで倒す必要はない。セイバーたちが来るのを待ちながら、その間の被害を抑えるんだ」

「おう。わかった」

「フィアアアアア!!」

「うるせえんだよ怪物!」


 襲ってきたフィアイーターに言い返しながら、バーサーカーも前に出る。


 フィアイーターの単純な突進を真正面から受けるつもりらしい。お互いの肩と肩がぶつかり、それぞれ一歩後ろに下がる。

 今度は拳を振り上げて殴りかかる敵の動きを、バーサーカーはよく見ていた。その拳をガントレットのはまった手で掴んで捻り上げながら、胸のあたりに頭突きを食らわせた。


「っしゃオラ! 死にやがれ怪物!」

「フィアアアァァァ!!」


 痛みに悶えるフィアイーターも、華奢な少女の外見からは想像もつかないような闘志を見せた。頭突きをし返してバーサーカーから逃れようとする。


「上等だ! オレとてめえの頭! どっちが固いか試して見るか!?」


 それはどう考えても銅像の方が上だ。無理はするなとバーサーカーに言いたいけれど、それよりは援護した方がいいな。

 それに、フィアイーターとバーサーカーは互角に戦えている。他の魔法少女が来ればすぐに片付けられる。そう考えていたのだけど。


「お前が魔法少女か」


 男の声が聞こえた。怪物が暴れまわって戦いが繰り広げられている中で、随分と冷静な声だった。


 直後、初老の男がバーサーカーに突進してきた。

 見覚えがある顔だった。頬に傷のある男。


「うおっ!? なんだお前危ないから逃げっ!? あがっ!?」


 男の、技術も何もない力任せのタックル。ある意味バーサーカーと同じような戦い方。


 威力も魔法少女並にあったらしい。衝撃でバーサーカーの体が宙を舞い、噴水に激突してその一部を破壊しつつ水の中に落ちた。


「バーサーカー!?」

「いってえ……無事だ。ったく、いきなり何なんだ……」


 水に浸かりながらも、バーサーカーはなんともないように立ち上がった。


「あのおっさん、普通の力じゃなかった」

「ああ。見ればわかる。フィアイーターだ」

「人間がなるもんかよ。ああ、なるんだったな」


 噴水から出た水浸しのバーサーカーが、謎の男を睨みつけた。


 男は確かに銅像のフィアイーターと並び立っている。となるとそれしか考えられない。


「なあ。キエラはお前を仲間に引き入れたのか? なんのために? 本人に聞きたいけど、いないみたいだな」

「戦力増強と聞いている。俺にとってはどうでもいいがな」


 思ったよりちゃんと会話が成り立った。


 俺はこの男を前に見たことがある。この近くの幽霊屋敷へと入っていった奴だ。ホームレスの溜まり場を使っていた、ボロボロの服を着た男。

 あの時に比べると、男は随分と小綺麗な身なりをしていた。真新しい服みたいだ。一方で、着こなしが雑って印象もある。ああ、ファッションに興味の無い俺でもわかるとも。


 シャツの裾をズボンに半分ほど入れていて残りはだらしなく出している。ボタンも半分くらいしか留めてない。ズボンの裾が長くて地面に少し擦れていた。


 ちゃんと服を着慣れていない人間が高い服を集めて着てみた。そんな印象。


 キエラが用意したんだろうな。つまり、この男を味方として引き入れたのはキエラにとって本心ということになる。

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