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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-32.シーサー屋さん

 翌日。あっという間に最終日。

 那覇の街で自由行動。


「お土産買わなきゃね。愛奈さんたちに」

「無難にお菓子とかでいいか? あとぬいぐるみ」

「ラフィオとか、なにが好きだろ」

「家事グッズ?」

「あいつ、別に好きで家事やってるわけじゃないからな。沖縄のプリンとかか?」

「沖縄のプリンってなんだよ。聞いたことないぞ」

「俺もないけど。地元では有名な店とかあるんじゃないか?」

「あー。ありそう。スマホで調べてみるか」

「アユムちゃんスマホの扱い、だいぶ慣れてきたねー。あと、形として残るものがほしいかなー」

「シーサーのぬいぐるみ、ハブのぬいぐるみ、マングースのぬいぐるみ、ハイビスカスのぬいぐるみ……とかか?」

「ハイビスカスのぬいぐるみって、あるのか?」

「あるかもしれねぇな。スマホで探してみよう。ちなみにプリンのぬいぐるみはあるらしいぞ」

「混ざってる混ざってる」


 そんな会話をしながら街を歩き回る。


 観光客向けの沖縄物産展みたいなのがあったから、そこで色々買い揃えることはできた。


 ぬいぐるみはそれなりの数買えた。愛奈やラフィオのお土産になるとは思えないから、全部つむぎのものになるのだろう。

 ハイビスカスのぬいぐるみも、しっかり存在した。需要あるのだろうか。


「あとはコスメとか?」

「それを選ぶのは遥に任せる」

「うん。お母さんや彼方にもなんか買ってあげなきゃだしねー」

「なあ悠馬、見ろよ。琉球古刺繍だってさ」

「そんなものもあるのか。小物とか、結構売ってるな。あ、エプロン」


 ラフィオへのおみやげはこれにしよう。

 遥も家族へのおみやげを買えたようだ。


 あとは那覇の街をあてもなく歩き、面白そうなものを見て回る。


 県内随一の大都市ながら、南国の牧歌的な雰囲気も漂う独特な街だ。全国にあるチェーン店も見かけつつ、沖縄独自の文化なんかも見える。

 ちょっと面白い。


「シーサーの置き物専門店だってさ。入ってみようよ」


 遥が面白そうなものを見つけて、車椅子を動かして入っていく。見たところ、観光客も商売の対象にしているタイプの店らしいから、俺とアユムもついていった。


「おー。なんというか、シーサーだねー」

「専門店だからな」


 店内そこら中にシーサーの置き物が陳列されている。お土産用の小さなものから、結構な大きさのあるものまで。


 屋根に設置する用のシーサーなんかもある。これは陶器製かな。というか、沖縄県民って今でも家を新築したら、やっぱりシーサーを置くものなのかな。置くんだろうなたぶん。


「シーサーってさ、モフモフなのかな? わかってる。この置き物はモフモフじゃないよ。元になった伝説の生き物? 神獣? みたいなのがいるわけじゃん。それってモフモフだったのかな?」

「つむぎみたいなこと言ってるぞ」

「たぶんだけど、シーサーのぬいぐるみを手渡したら、つむぎちゃも同じ疑問を持つと思うの。そして質問する。ラフィオに」

「あー……」


 なぜかラフィオに行くやつ。俺たちでも答えられない質問だと内心でわかってるから、同じように訊くからモフ度の高いラフィオに矛先が向く。

 かわいそうだから先に答えを用意しようにも、どうすればいいかわからない。


 ふと店の奥を見ると、人のいい顔つきをした店主がこちらをチラチラと見ていた。還暦前といった歳のその店主は、いかにもこじんまりとした専門店の主といった雰囲気を持っていた。

 シーサーに関する質問なんてしていいのかなと、考えていると。


「そんなもん、見ればわかるだろ。毛並みが描かれてるし。つむぎの言うモフモフだってうあっ!?」


 大きめの陶磁器製のシーサーの置き物を手に取りながら話していたアユムが、思ったより重かったのかそれを取り落としてしまった。

 床に迫っていくシーサー。次の瞬間には粉々になってしまうのは間違いなくて。


 不意に、視界の端で動きがあった。人の良さそうな店主の体がブレた気がした。


 次の瞬間、こっちに接近した店主が姿勢を低くした構えを取っていて、いつの間にか手にしていた箒を差し伸べていた。その先端にシーサーが乗っかっていて、無事だった。


「おおー」


 目の前で突然披露されたスゴ技に、遥が車椅子の上で拍手をする。


「ご、ごめんさない! 手が滑って」

「いえ。お怪我がなくて良かったです」


 店主は穏やかな笑みで、シーサーを棚に置き直した。声も口調も、外見に違わぬ穏やかなもの。

 それからこちらに向き直って、制服姿の俺たちを見て。


「修学旅行ですか?」

「はい。模布市の高校です」

「模布……そうですか。昔私も住んでいましたよ」

「へえー。でも、なんで沖縄に?」

「いろいろあって、母の実家のここに戻ったんです。随分と前のことですね」

「へー。ということは、何代か続く老舗なんですか?」

「老舗というほどのものでは。ただ、ご縁に恵まれて長くできていただけです」


 謙虚な姿勢。好感を得るのに十分な態度。人間として、尊敬できる人だと感じた。


「あの。出身は模布市のどのあたりですか?」


 しかし俺は、彼がさっき見せた俊敏すぎる動きに興味を惹かれてそんな質問を投げかけた。

 彼のルーツについて知りたくて。なにか武術をやっていた動きに見えたから。

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