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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-25.修学旅行の始まり

 結局、家で水着で過ごすのはこの日限り。次の開催は未定となった。

 翌日には、俺たちは普通の格好で夕飯を食べて別々に風呂に入る。そして週が明けて。



「えっと、フライパンを耳元に近づけて?」

「そうだ。お玉で遠慮なく叩くんだ。フライパンの裏側の真ん中と、お玉の丸いところが当たるようにするのが良い音を鳴らすコツだ」

「はい! 頑張ります! 愛奈さん起きてください!」


 カンカンカン。


「ぎゃぁぁぁ!? なに!? 急になによ!?」

「朝です愛奈さん!」

「なんでつむぎちゃんがフライパンを!?」

「今日から修学旅行で俺がいないからな。その間はつむぎに任せることにした」


 ラフィオは朝食作りに忙しいから、この人選は必然だ。


「そんなー! 悠馬がいない間は静かに起きれると思ったのに!」

「つむぎ。これでわかっただろ? 愛奈に容赦はいらない。起きるまで徹底的に叩け」

「はい!」

「パジャマからスーツに着替えるまで、同じ部屋の中で叩き続けるんだ」

「あの! 悠馬がやるよりひどくなってないでしょうか!? てか人が見てる前で着替えたくないです!」

「俺の前だと平気で着替えるだろ」

「あれは悠馬だからよくて」

「つむぎ。叩き続けろ」

「はい!」

「ぎゃああああああ!」




 こうして、愛奈の寝坊という最大の懸念事項を解決した俺は、飛行機に乗って沖縄へと向かうのだった。


「いえーい! 沖縄だー!」


 飛行機から降りて空港で叫ぶ遥。恥ずかしいからやめなさい。


「青い空! 青い海! なんかハイビスカス! わーい! あそこにシーサーの着ぐるみがいるー! つむぎちゃんの代わりにモフっておこっと! 悠馬、写真撮って!」

「後でな。アユム大丈夫か?」

「なんか頭が痛かった……もう大丈夫だけど。飛行機ってすごいな。本当に飛ぶんだ」


 アユムは今回が飛行機初搭乗だったらしい。


 俺も両親が健在だった時に旅行で何度か乗せてもらったきりだから、久々の飛行機だった。けれど緊張度で言えばアユムの方がずっとひどかった。


「いやな。頭ではわかってるんだよ。飛行機は都会のすごい技術で飛べるってのは。けど、本当に飛べるか心配で心配で。墜落しなくて本当に良かった……」


 都会のすごい技術ってなんだろう。飛行機がすごい技術なのは確かだとして、都会は関係ないよな。


 とはいえ、実際にアユムは怖がってた。搭乗前から震えていて、機内でも飛び上がるまでずっと俯いて窓の外を見ないようにしていた。

 窓から見下ろすこの国の風景は見応えがあったけど、アユムには楽しむ暇はなかったみたいだ。


「飛行機なんて毎日飛んでるし、落ちることなんて滅多にない。行きも平気だったんだ。帰りも問題ないさ。その時は、外の景色見ような」

「あ、ああ。そうだな。飛行機のすごい技術を信じてみる」

「ああ。そうしてくれ」


 それで楽しめるならいいか。アユムにも笑顔が戻ったし。


「ねえ悠馬ー! シーサーさんと写真!」

「わかったから。アユムも一緒に写ってやれ。撮ってあげるから」

「おう。ありがとな」

「なんかアユムちゃんとの距離が近いんだよねー」


 仕方ないだろ。アユムが怖がってたんだから。


 写真を撮って、メッセージアプリの魔法少女グループに送信する。



 沖縄内の移動はバスで行う。最初に向かったのは、沖縄の魅力を端的に伝えるためのテーマパーク、おきなわワンダーワールド。

 三十万年前から今に至るまで形作られてきた鍾乳洞に入れたり、沖縄に生息しているハブにまつわる展示があったりする。


「ハブはモフモフじゃないね。鍾乳洞も、どっちかというとモフモフじゃない」

「なんでつむぎに送る写真を探す感じになってるんだよ」

「えへへー。でも、自然豊かな場所だしモフモフも多いかなって」

「大昔は、ハブとマングースが戦うショーが観光名所として使われてたって聞くぜ。オレの爺さんが小さい頃に見たってさ」

「マングース? それはモフモフだねー。でもなんで?」

「ハブは毒を持ってて危ないから、それを駆除するために沖縄に輸入したんだとよ」

「へー。それで退治できたの?」

「いや。駆除の役には立たなかった。ハブは夜行性で、マングースは昼に動く動物だから、そもそも出会わなかったらしい。戦う理由もねえしな」


 駄目じゃないか。


 それを無理やり戦わせて観光資源にしようって考え方も、なかなかひどいものがある。

 というか害獣であるハブですら、こうやって観光資源として活用している事実に、人間の強かさみたいなのを感じた。


「今はやってないんだとよ、ハブ対マングース。残酷だとかの理由でさ」

「あー。動物愛護ってやつだね。それは仕方ないね。ちなみに、戦ったらどっちが勝つの?」

「マングースが勝って終わったらしいぞ」

「さすがモフモフは強い」


 人間の愚かさと、それでも動物を愛する慈悲の心とモフモフの偉大さに思いを馳せながら、バスは目的地に着いた。


「あ。ハブ対マングース、今でもやってるみたいだよ」

「マジで?」

「直接対決じゃなくて、競争みたいな形でやってるって」

「へー……それになんの意味があるんだ?」

「さあー。でもせっかくだから見てみようよ。マングースの写真撮りたいし!」

「わかった。行こうか」


 さすが、沖縄を代表するテーマパーク的な場所。バリアフリー対応も完成されていて、ここの目玉である鍾乳洞も車椅子でじっくり楽しむことができた。

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