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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-14.遊園地のお化け屋敷

「どうアユムちゃん? 楽しかった?」

「ああ。楽しかった……怖かったけど、それも楽しいというか……なるほどそういうことか」

「ん? どうしたのアユムちゃん」

「お化け屋敷も一緒なんだな。怖いけど、どこかそれを楽しむ気持ちもある。じゃないと怖い思いするためにお化け屋敷なんかいかないよな!」

「あー。まあ確かに。そういう共通点はある、かなー?」

「遥はこれを教えるためのジェットコースターに乗せたのか」

「……そう! そうだよ! うん! そういうことなんだ! いやー、アユムちゃんは賢いね!」


 アユムの考えすぎに見事に乗る遥。わかりやすいなあ。


「じゃあ次の絶叫マシンに乗ろっか!」

「いや。心構えができた所でお化け屋敷に行くぞ! 今ならお化け屋敷を全力で楽しめるはずだ!」

「えー……まあいいか。全力で楽しみます!」


 まだまだ絶叫マシンに乗りたそうな遥だけど、アユムの力強さには敵わない。遊園地の一角にあるお化け屋敷まで向かった。


 ウサギさんランドのお化け屋敷は、江戸時代っぽい妖怪屋敷がテーマだった。一方のこの遊園地の場合は、廃病院を舞台にしている設定。より現代っぽいテーマだから、俺たちの文化祭の参考になりそうだ。


 お化け屋敷としても、こっちの方が力を入れているらしい。お化けを人間が演じていて、本気で怖がらせてくる。あまりの恐ろしさに進めなくなった人のために、リタイヤ用出口がいくつか設置されている本格的なものだ。

 外観も、遊園地の中にあるからそこまで大きなものではないけど、病院を模している建物だ。しかも二階建て。


 このスペースをフルに使ったお化け屋敷は、遊園地の中でも特に力の入ったアトラクションとなっている。


「なんか廃墟の病院っぽくていいね。この前の家みたい」

「本物の幽霊屋敷っぽい雰囲気を病院で出せるのはプロだよな」

「さすがプロ! 参考になります!」


 お化け屋敷とわかるように、入口にはおどろおどろしい目玉がこちらを睨んでいるような装飾がある。廃墟感とはまた違うけど、これはこれで怖い。


「ねえラフィオ。怖くなってきた。お化け出てきたら守ってくれる?」

「あー。うん。わかった。守る」

「えへへっ! ラフィオ大好き!」


 たぶん微塵も怖いと思ってなさそうなつむぎが、ラフィオとくっつく口実を求めてわざとらしく怖がり、そして抱きついた。


「むむ……羨ましい。つむぎちゃんやるなー。車椅子に座ってるとああやって抱きつくのは無理……」

「なにブツブツ言ってるんだ。行くぞ」

「なんとかして悠馬に抱きつく方法を……むむむ……」


 怖いから抱きつくのではなくて抱きつくために怖がってる、浅ましい女の車椅子を押してお化け屋敷へ向かう。


 二階建ての建物で上にあがるルートになっているけど、車椅子でも問題なく行けるらしかった。エレベーターを使うそうだから。




 十数年前に経営破綻して以来、人の出入りが無くなり廃墟となった病院。その理由は相次ぐ医療ミスで大量の死者が出たから。

 しかしそのミス自体も、この土地に秘められた因縁の呪いが原因だと言われている。死者を増やすための死者の企みは、病院に人が来なくなった今も続いている。そして今度は、軽率にやってきた俺たちを狙っている。


 人気アトラクションだけあって、行列ができていた。待ち時間の間、そんな設定が語られる映像を見せられることに。


「な、なんか。すげえ怖いんだけど……」


 ジェットコースターにも最初は怖がってたアユムが、ちょっと引き気味になっている。まだ入口なんだけど。


「さっきと同じだ。怖さを楽しめ」

「お、おう! いける。オレなら怖くても大丈夫……」


 自分に言い聞かせるような様子のアユムに寄り添われながら、俺たちは中に入った。


 電気も通っていないという設定で、中は暗い。もちろん照明はちゃんとあって、道に迷ったり壁にぶつかったりしないようになっているし、不気味な内装をしっかりと見せている。

 薄暗いというか、赤みがかかった照明が当てられてるのだな。周りの様子はわかるけど、不気味さは損なわない。


 内装も廃墟感があって、ひび割れた壁や劣化して剥がれかけのポスターなんかが目につく。


「おい! なあ! ポスターに血の跡がついてんのは、おかしくないか!? そんな廃墟ないだろ!」

「ないよなー」


 ポスターや壁に、血が飛び散ったような汚れがあった。


 医療ミスで潰れた病院でも、こんな汚れはありえない。廊下で医療ミスが起こるはずがないから。


「なあおい! どうなってんだよ!」

「さあ。ここに迷い込んだ俺たちの先客みたいな奴が、幽霊に殺されたとか?」

「ひいぃっ!?」

「わー! ラフィオ怖い!」

「はいはい」


 本気で怖がってるアユムと、怖がってるふりをするつむぎ。ラフィオとつむぎは、さっきから繋いだ手を離そうとしない。


 俺は車椅子を持ってるから、誰かと手を繋げない。だからアユムは俺の服の裾を握っていた。


 というか、お化け出てないのにこの怖がりようだ。

 作った側も冥利に尽きるというものだろう。


 不意に、ガタンとどこかで音がした。


「ああああああ!」


 物音ひとつにビビるアユムが抱きついてきた。大きな胸が押し付けられる感触。


「羨ましい……ほんと羨ましい……」


 少し下から、遥の呪詛の言葉が聞こえてくる。

 これはこれでホラーだ。

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