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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-9.ホームレスの溜まり場

 昭和と言ってもかなり長い期間がある。この模布市だけでもかなりの事件が起こっただろうし、小さな事件は後の記録に残りにくい。昭和の事件ならネットニュースにもならないし、この手の記事は古いものから削除されてしまう。


 でも遥は、模布市の事件をまとめたサイトを見つけたそうだった。


「子供が親を殺すって? 嫌な事件だよなあ」

「まあ、あれです。都会は複雑なのです」

「都会のせいにするな」

「おう。人間関係は田舎の方が面倒だったな。こっちの方がよかった。……オレとか言っても誰もやめろと言わないし」

「そっか。田舎も大変だね。じゃあ、人間関係のこじれからこういう事件が起こることは?」

「オレの田舎じゃなかった。……まあ考えてみれば、もしそんな事件を起こしたらそいつは終わりだからな。逮捕されるのは当然として、戻っても村に居場所はない」

「村八分ってやつか?」

「そうだよ。人を殺すなんてのは極端だけどさ。もっと簡単に仲間はずれになることはあるんだ」


 田舎も大変だ。あんなド田舎くらいなものだろうけど。


「都会はまだ、そういう人の繋がりが薄い印象だな」

「わたしたち別に、薄い友達やってるわけじゃないけどー?」

「比べてってことだよ。田舎の人間関係は濃すぎて面倒なんだ。……都会のこれは、だからオレにとっては心地良いんだけどさ。事件は田舎より起こりやすいって面もあるんじゃねえか?」


 そういうものかな。罪を償った後での故郷の暮らしを考えれば、田舎より街の方が楽なのかな。だから人を殺しやすいと言えるかは、俺にはよくわからない。


「介護疲れで親を殺す、か。オレの田舎にも、介護したくないって言ってる女がいるぜ。嫁入りした女が旦那の親の介護を押し付けられて。日に日に弱っていってた。そんなもん、旦那も親もまとめてぶん殴ってから放りだせばよかったんだ。でも田舎だとそれはできない」

「都会でもできないからね! 怖いこと言わないでねアユムちゃん!」


 怖いものを見に来たのに、アユムが直情的な所を見れたらそれは怖いと言い出す。よくわからない。


 アユムが、田舎では生き辛い性格なのはわかった。犯罪に走る奴ではないとは思うけど。



 高級住宅街というわけではない、けれど極端に貧しさを感じるわけでもない住宅地をしばらく歩いていると、それは唐突に出てきた。


 かなりの築年数を感じさせるボロボロの木造建築。ただ、建築様式自体は周りの家と比べてもそこまで古いわけではない。

 一方で、手入れが一切されていなくて塗装が剥がれていたり壁に穴が空いていたり。それがボロボロだという印象を与えているようだった、


 敷地には庭も一応用意されていたけれど、人の手が入っていないために背の高い雑草が生い茂っていた。けど、人が通って家の中まで入るためのルートだけは、人が何度も踏んできたからか草がない。

 人の出入りがあることは感じられた。


 家の中を覗き見ても、人の気配は感じられない。家には窓もついているけれど、そこに動きはない。


「うん。幽霊屋敷だね! とても幽霊屋敷だね! 外だけ見てもお化け屋敷の参考にはならないけど!」

「外だけ参考にしろ」

「だって! 実際のお化け屋敷の外観って、わたしたちの教室じゃん!?」

「いい感じに雰囲気出して飾るとかあるだろ」

「中も見たいなー」

「やめろ」

「ちょっとだけ」

「行くぞ」

「あー! 待って! 押さないでー!」


 うるさい遥の車椅子を押して無理やり幽霊屋敷から離れた。そしめ道を曲がって近くの家の陰に隠れて、再度屋敷の方を見る。

 ホームレスがふたり、屋敷に入っていくのが見えた。


「あ。本当に溜まり場だったんだ……」

「俺たちが家の前でうるさくしてたから入れなかったのかな。悪いことしちゃったな……」

「人の住処を幽霊屋敷とか呼んでるだけで、十分悪いことだけどな」

「住処じゃなくて溜まり場だよー?」

「同じようなもの……じゃないな。ちょっと違うのかな」

「おい。出てきたぞ」


 アユムに言われて、また幽霊屋敷の方を見る。


 さっき入っていったふたり組のうち、片方が出てきた。


 年齢はよくわからない。若くはない。初老という感じだ。

 目つきが鋭く、凶暴さを感じさせる風貌。足取りはしっかりしている。ホームレスにしては珍しい気がするな。栄養状態が悪いから、歳を取ると足元がおぼつかなくなるイメージだ。


 そんな彼はこっちを睨んだ。俺たちが逃げた方向を知っていて、まだ見ているのかと確かめるためだ。


 彼の頬に細長い古傷があるのに気づいた。

 目が合ってしまって、俺たちは慌てて顔を隠す。


「行くぞ。関わり合いになりたくない」

「う、うん。そうだよね! 逃げよう!」


 幸いにして、奴が負ってくることはなかった。急ぎ足で回り道して駅の方まで戻っていく。


 もう、こんなことはしないからな。



「あー。ドキドキした。もうホームレスなんかと関わりたくない」

「最初からそうしろよ」

「だってー。わたしはお化け屋敷にリアリティを求めたいの! そのために役立つことはなんでもやりたい! ……って思ったの」

「怖い思いをして、収穫はあったか?」

「なかった。おとなしくネットで廃墟系サイトとか見て勉強しようと思います」

「うん。それでいい」


 失敗してしまったと落ち込む遥だけど、この様子ならもう無茶はしないだろう。




「あなたたち本当に行ったの? 幽霊屋敷。子供だけじゃ危ないって注意したでしょ?」


 帰宅後。ビール缶を開けている愛奈が年長者として言うけれど、いまいち説得力がない。酔ってるからかな。


「そうよ。危ない真似はしないでほしいわ。魔法少女に何かあれば、わたしの責任問題にもなるんだから」


 家を訪問している樋口まで同調する。やっぱり酔っている。

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