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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-6.お化け屋敷のストーリー

「遥さん。お化け屋敷は、どんなテーマなんですか?」


 洗い物を終えたつむぎがキッチンから戻ってきた。学校の七不思議も喜々として語るつむぎは、この手の話題が好きなんだろう。


「それが問題なんだよねー。テーマ選びを間違えると、わたしは本当に唐傘お化けの役をやらされかねない。もっと顔を出しながら、怖い感じの幽霊になりたいのです」

「遥さんかわいいから、お化けやっても怖くないかもしれませんね」

「またまたー。つむぎちゃんっては本当のこと言っちゃってー」

「えへへー」


 なんなんだこれは。魔法少女ふたりが仲良くしてるのはいいけど。


「要は、片足の幽霊を出す理由が欲しいのだろう? 普通に妖怪が出るようなお化け屋敷にすれば、遥は唐傘お化けにされる。だからそれとは別枠の、新しい幽霊がほしい」

「そう。そういうこと。……新しい幽霊?」

「そういう幽霊が思いつかないなら、テーマから新しく作ればいい。片足の幽霊が出るストーリーから考えて、それに沿ったお化け屋敷を作るんだ」

「なるほど! ちなみにラフィオが考えると、どんなストーリーになる?」

「なんで僕に放り投げるんだ……そうだね。昭和の時代に起こった猟奇事件の舞台である屋敷に入り込む、みたいなのはどうかい?」

「なんか面白そう! 詳しく聞かせて!」

「いや、今思いついただけなんだよ。詳しくも何も、考えてない」


 遥の勢いに辟易した様子のラフィオだけど、思いつくままに語りだした。


「ある狂った男が、女の子を屋敷に連れ去って、殺して解体したんだ。やがて男は完全に狂ってしまって、自ら命を断ってしまう。そして後には、バラバラの死体が残った」

「おおー。なんか怖いね!」

「理不尽に殺された女の怨霊が、バラバラにされた自分の体を集めていくけれど、片足だけがどうしても見つからない。無くなった片足を求めて、屋敷を訪れる人たちを襲うんだ」

「なるほど。お化け屋敷っぽい設定でいいね!」


 なんでそんな血なまぐさい場所を訪れる人がいるのかという疑問はあるけど。まあいいか。


「そして、人殺しである男と足を無くした女は、元は恋人同士でもあったんだ」

「うん?」


 なんか風向き変わったな。


「男は人を殺したいという欲望を満たすため、何人もの人間を手にかけてきたけど、どれだけ人を解体しても疲れるばかりで思ったより面白くない。満足できない。そんな彼の悩みを知った女が、だったらわたしを殺してもいいって志願するんだ」

「おー。なんか大人の関係って感じで、なんか憧れるねー」


 やめろつむぎ。大人にしてもレベルが高すぎるぞ。


 というか、面白くなかったなら殺人をやめろよ。たぶん向いてなかったんだよ最初から。他のことで発散しろ。


「結局恋人を殺しても満足することはなく、ただ恋人を失っただけの男は発狂して自ら命を断ったというのが事件の真相なんだ」


 馬鹿だろ、その男。


 というか、そんな裏ストーリーはいらないというか。恋愛映画大好きなラフィオだから、無理に恋愛要素を入れようとして変なことになっている。

 けど。


「いい! いいよラフィオ! 足のない女の霊に恋人がいたっていうのが、すごくいい!」


 なんで遥は絶賛してるんだ。


「わたしがその女の幽霊をやるから、悠馬は殺人犯の役をやってね!」

「なんでだ。嫌だよ」

「だって恋人同士の役を本当の恋人がやるって、素敵じゃない?」

「本当の恋人じゃないだろ」


 なんで俺が、狂ったサイコパスの馬鹿野郎な人殺しの幽霊なんかやるんだよ。


「他の犠牲者とか別の怨霊も呼び寄せたとかで、大量にお化け出せちゃうね。いけるいける。それに合った装飾とかも考えて、ストーリーをもっと突き詰めて。うん楽しそう! ラフィオ! もう少しでディテールを凝ってみようか」

「だから! なんで僕が考えなきゃいけないんだ」

「ラフィオが始めた物語だよ?」

「こいつはまったく……」

「そうだ! 大事なこと忘れてた! 愛奈さんがちゃんと怖がるか確認しないとね」


 それ、どうしても必要なのか?


 松葉杖で風呂場まで行った遥。それからしばらく後、愛奈の悲鳴が聞こえてきた。

 シャワー中に本当に視線を感じて本当に人がいて、しかも怪談話を聞かされたら、それはかなり怖いよな。



「よし! 愛奈さんの反応も良かったから方針は決まったねー。クラスのみんなにも相談しなきゃだけど、ここまで決まったらもう後は進めていくだけです!」

「まだ背景のストーリーが決まっただけだろ」

「まあね! 登場する幽霊のデザインとか、それ以外にもどんな怖がらせ方するかとか、まだまだ決めないとねー。なんというか? さっき昭和の時代が舞台ってラフィオが言ってたから、江戸時代的な怖がらせ方じゃないんだよね」

「いや。僕も思いつきで言っただけで」

「江戸時代的な怖がらせ方ってなんだよ」

「よーし! 色々考えるぞ!」

「おい。話を聞け。おい」


 遥が楽しそうなのはいいことだけど。




 翌日、早速ホームルームが開かれて、遥の案の可否が問われた。

 いわゆる、白装束の幽霊が出てこない、比較的今風のお化けによる恐怖体験というのは新しいと絶賛された。


 クラスの方針は決まったけど、このアイディアはいつの間にか遥が考えたことになってしまった。確かにラフィオの存在を明かすのは無理でも、個人的な知り合いが思いついたとかあるだろ。


 ああ。かわいそうなラフィオ。今度なにか、お返ししてやれよ。高めのプリンとか。

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