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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第10章 秋の学校行事

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10-2.鷹舞公園

「場所は? 鷹舞公園の方かー」


 模布市の中心部にある、やたら大きな緑地公園の名前がスマホに表示されていた。


 近くに大学病院があり、あと愛奈が卒業した国公立大学も立っている。駅も隣接していることもあって、人通りが多い。

 遊具がいくつも置かれている砂地の普通の公園みたいな一角もあって、この時間帯は学校終わりの小さな子供たちがよく遊んでいる。


 早く行かないと被害が出る。


「遥、行くぞ。……アユムはどうしようかな」


 俺たちの目の前で、先に走っていったアユムが乗ってるはずのバスが行ってしまう。


 フィアイーターが出た場所はここから離れてるし、市民は早くも普通の日常に戻り始めたし公共交通機関は時刻表通りに運行する素晴らしい姿勢を見せた。

 問題は、ひとりになったアユムが鷹舞公園の場所を知らないことだ。


「あ! あと車椅子もしまわないと! どこに!?」

「学校のどこかだな。体育館の裏とか。後で回収しないと。もしもしつむぎ? 今から行くところか? アユムが帰ってくるまで待っててくれ」


 つむぎに電話してそっちで合流させることにした。となれば、出発までの時間がかかってしまう。俺たちは早く出ないと。


 体育館裏に人は来ないから、車椅子を隠すには適している。仮に誰かが見つけても、遥の物っていうのは生徒や教員の多くが知っているから、不審物として思われることはないはず。

 なんで片足の生徒が車椅子を変なところに置いて離れていたのかの言い訳は、後で考えることにしよう。それか見つからない内に敵を倒そう。


「さあ悠馬掴まって! 飛ばすよー!」


 遥からライナーに変身した彼女は俺を背負って、両足で走れる心地よさを実感しながら公園へと向かっていく。



――――



「もしもしアユムさん!? 今どこですか!? 途中のバス停で降りてください! そこまで迎えに行きますから!」

『お、おう! わかった! 悪いな。この街のこと、まだ全然わかんなくて』

「大丈夫です! わたしもそのバス停の路線とか全然わかんないので!」

『……そうなのか?』


 つむぎとアユムが通話しているのを、ラフィオは黙って聞いていた。


 正直なところ、ラフィオだって模布市の地理には詳しくない。半年ぐらいしか住んでないから。

 鷹舞公園の位置もよくわかってない。フィアイーターがいる位置がわかるから、なんとか行けるってだけ。


「ラフィオ! アユムさんバス停で降りるって!」

「なんてところだ?」

「はい! アユムさんと話して!」


 つむぎだって、普段使ってないバス路線なんか知らない。アユムに直接教えてもらい、よく聞こえるように耳にスマホを押し付けてくるつむぎの動きに合わせる。


 ラフィオは、悠馬の鞄の中でバス停や経路は把握している。巨大化して、変身していたハンターを乗せて言われた場所まで走った。


 まあ、こういうのでいいんだよな。出来る者ができることをする。

 こっちは人手が多いし、そういう役割分担でやっていけばいい。



――――



「あー。やっぱり、生きてる人間をフィアイーターにするのは無理みたいねー」


 なんか大きな公園で、良さそうな銅像をフィアイーターにして暴れ回らせているそばで、キエラはもうひとつフィアイーターを作ろうとしていた。


 この公園には、ホームレスという人間が大勢いるらしい。それを活用させてもらうことにした。


 フィアイーターである以上は、魔法少女に倒されるかもしれない。そうなっても悲しくない人間ってなんだろうと考えた時、汚いおじさんという結論に、キエラとティアラは達した。

 だからホームレス。世の中に恨みを持ってるとかで、こちらに積極的に協力してくれるかもしれないし、それに男の人が多いから強そうとか、そんな理由もあった。



というわけでとりあえず、最初に見つけたおじさんにコアを埋め込んでみたけど、暴れてはくれなかった。

 しばらく苦しむようにのたうち回るった後、動かなくなった。地面に横たわったまま生気の無い目で空を見上げている。


 それを見下ろしたキエラは、ため息をついてティアラに説明する。


「恐怖はほしいはずなのに、なぜか心で抵抗しちゃうのよね。遠慮せず暴れればいいのに」

「人の心って難しいね。この人、殺してからフィアイーターにしたらどうなるの?」

「鳥をフィアイーターにした時みたいに、暴れてはくれると思う。けど人間だとちょっと違うのよねー」

「わたしやパインをフィアイーターにして普通にお喋りできたのは、どうして?」

「特別製のコアなのよ。作れなくはないけど、今からじゃちょっと時間がかかるのよねー」

「でも、そうするしかないと思うな」

「ええ。まあ。ちゃんとわたしの命令通り戦ってくれないと困るしね……おっと」

「フィー!?」


 キエラのすぐ近くを、サブイーターが掠めるように飛んできた。


 難なく回避したら、そのサブイーターは地面に落ちて全身を強く打ち、死んだ。


「あんたね! 毎回毎回飽きもしないで! さっさと諦めなさい!」


 たしかセイバー。ピンク色の魔法少女が剣をこっちに向けている。

 怒ってるなあ。いつものことなのに、何がそんなに癪なんだろう。


 どうでもいいけど。


「行きましょう、ティアラ。実験の続きはまた今度ね」

「むきー! 無視しないで! いや帰ってくるのは嬉しいけど! 二度と来ないでよ!」


 セイバーがサブイーターをばっさばっさと斬り殺しながら怒っている。うるさい女だ。


 エデルード世界は静かでいいのに。人間の世界は人が多すぎる。自分とティアラだけの世界の方がずっといい。


 本当は、ラフィオもいてほしいけど。ラフィオはなんでこんな、人だらけの世界に憧れたのだろう。


 自分たちだけでやりたい事なんでもやれる世界の方が楽しいのに。

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