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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第1章 魔法少女チームの結成

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1-45.五人で朝ごはん

「そっか。亡くなったお母さんの代わりは出来ないけど、またここで料理してもいいかな?」

「いいけど、なんでそんなことしてくれるんだ?」

「失った家族は元には戻らない。けど、新しい家族はまた作れるよ」


 にっこりと笑った遥が俺を見つめていた。まっすぐに、俺の心まで射すくめるように。俺と家族になれる。そう言いたげに。


「そこまでよ! この泥棒猫! 悠馬を誘惑するのはやめなさい!」


 いい雰囲気になったのをぶち壊す、愛奈の声。


「なんかいい感じに、悠馬を自分の家族に引き入れようとしてるでしょ!」

「姉ちゃん早起きだな。いつもは昼過ぎまで寝てるだろ」

「うるさかったから起きたのよ!」

『トンファーダイナマイト!』


 テレビでは、トンファー仮面が敵怪人に必殺技を放っていた。市街地のど真ん中で派手な爆発が起こる。


「おおー。ねえラフィオ! わたしたちも、こんな技使えないかな!?」

「無茶を言うな。あと、いい加減手を離せ」

「やだ! モフモフー!」

「あああああああ!」


 うるさい原因はこれか。


「つむぎちゃんがなぜか家に上がってラフィオとテレビ見てるのは、不可解だけど許せるわ! けどあなた! なんで家にいるのよ! てか悠馬と距離が近い!」

「おはようございます、お姉さん。悠馬さんに支えてもらって、朝ごはん作ってます。わたし、片足しかないので。悠馬さんの支えが必要なんです」

「あんたいつも家ではどうやって料理してるのよ悠馬を呼び出しでもしてるの!? あとお姉さん言うなー!」


 ラフィオとつむぎより、こっちの方がうるさかった。




『光る! 動く! キャノン砲搭載! DXメタルレックス! 発売中!』


 トンファー仮面の放送も終わり、俺の知らない子供向けのキャラクターの玩具のCMが流れた。

 ロボットの恐竜が暴れる作品らしい。それをラジコン操作で操れる玩具の宣伝。背中につけた砲身から弾丸を放っている。スポンジ製の弾を、誇大広告にならない程度に迫力満点に見せていた。

 それから、次の番組が始まる。俺たちの誰も興味がない、知らないタレントの街ロケ番組。


 テレビを消して、みんな自然にテーブルに集まって。


「いただきます」


 なし崩し的に、五人揃っての朝食となった。


 遥としてはつむぎの訪問は想定外だったようだけど、なんとかなった。

 卵焼きと焼き鮭と菜の花のおひたし。あとお味噌汁。

 和風な朝食が目の前に置かれていた。


 ラフィオもまだ、ここまでは作れないな。朝食はまだトースト止まりだ。平日は愛奈が食事に時間をかけられないって事情もあるけど。ラフィオももう少しすれば、これくらいはできるかもしれない。

 こんな朝食が食卓に並ぶのは、母が死んだあの日以来だ。


「おいしい……悔しいけど。ものすごく悔しいけど、おいしい……」


 愛奈が卵焼きを一口食べて、感情たっぷりに言った。


「誰かの手料理、ここまで手の込んだの食べたの久しぶりかも」

「……いいですよ。毎日でも、作りに行きますから」

「うん……」


 ちょっと対立気味な遥も、愛奈が予想外に喜んでいるのを見て、勝ち誇ったり煽ったりするのをやめたようだ。少し引いてすら見える。


「僕に、この域に達することができるのだろうか……」

「わたし、下手でもラフィオのお味噌汁飲みたいけどね」

「下手言うな。あと怖いことを言うな」

「毎朝ラフィオのお味噌汁が飲みたい」

「言うなと言ってるだろ」


 ちびっこたちも、楽しそうにおしゃべりしてる。

 俺も味噌汁を飲んでみた。うまい。本当にうまい。


「どう? おいしいでしょ?」

「ああ。本当に料理得意だったんだな」

「うん! 毎日のご飯は、だいたいわたしが作ってるからね。お弁当もだよー」

「すごいな」

「ありがとう! 悠馬に褒められるのが一番嬉しいな! そうだ。これから悠馬のお昼ごはん作ってあげよっか?」

「いいのか?」

「いいよー。家族全員分作ってるんだから。ひとりくらい大した違いじゃないって」


 そして遥はようやく、愛奈に対して得意げな顔を見せた。


「ぐぬぬ。悠馬のお昼ごはんじゃなくて、この家の食事事情を……ううん。いいわ。まずは悠馬の舌の改善からよね。遥ちゃん。本当に時々、家に来てくれるのよね?」

「え、ええ。任せてください」


 愛奈の真剣そのものの表情に、遥も戸惑い気味だ。親指を立ててはみたものの、いつものようなキレはなかった。


「悠馬の家、そんなに料理のことに悩んでたんだ」

「まあ、少しだけ……」

「少しじゃないでしょ!」

「うん」


 ちょっとだけ、愛奈に悪いと思った。



――――



 パートタイマーなら曜日とか関係なく、好きな時にシフトを入れればいいのに、姫輝の母はそうしなかった。


 日曜日はなんとしても休むのが母の方針。そして太った体を横たえて、ずっと寝てる。テレビの前が定位置。物音には敏感で、テレビなんか見ようものなら、つけた音で飛び起きて怒鳴りつけてる。

 たぶん、姫輝が近くにいるだけで気に入らないのだろう。


 だから姫輝は、ミラクルフォースを見たことがほとんどなかった。


 一度だけ、十年近くも前の小さな頃に見たことはある。なんの用事かは知らないけど、母がいなかった時にテレビをつけてみたら、やっていた。そして夢中になった。

 それがミラクルフォース、そして魔法少女との出会いだった。


 その話の内容も、今ではほとんど覚えてないけれど。とにかくテレビの中でキラキラ輝く女の子たちは美しかった。翌週からは母のせいで見れなくなったけど、姫輝の心に強く焼き付いた。

 ああなりたい。自分の境遇とは真逆の、あんな女の子になりたいと強く願った。願い続けた。


 そして今、街は魔法少女の噂でもちきり。目の前に妖精まで現れた。


「そっか。ラフィオと話したのね」


 キエラは昨日、母が起きると同時にすぐに帰っていったから、あまり話せなかった。


 けど、今日もやってきた。

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