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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第9章 追加戦士

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9-24.都会の大人たち

「ゆ、悠馬お前、モテるんだな」

「これをモテるって言うなら、俺は遠慮したい」

「でも、わたしは危機感を覚えているのです。アユムちゃん、ライバルは多いよ」

「そ、そうだな。負けないようにしないと。アタシも抱きつけば?」

「やめてくれ」

「はい、悠馬あーん」


 いつの間にか金網の上で焼かれていた熱々の肉を、遥が箸で摘んで差し出してきた。熱いまま口に入れることもせず、息を吹きかけて少し冷ましてから食べさせてくれた。


「どう? おいしい?」

「おいしい。けど、どうせなら自分で食いたい」

「ゆうまー」

「ゆうまくん……若い男の子って素敵よね」

「おいこら。姉ちゃん離れろ。澁谷も腹を撫で回すな。セクハラだからなそれ」


 女子アナが酔って男子高校生に手を出すとか、スキャンダルでしかないぞ。週刊誌に撮られたら終わりだぞ。


「抜け出せないっぽいねー」

「遺憾ながらな」

「ふふん。公安の体術から抜けようと思わないことね!」

「痛くないんだよなあ」


 樋口が腕を絡ませて絞め技を仕掛けてくるけど、酔ってるからか力が入ってない。

 公安が一般市民にこんなことしてる時点で大問題なんだけどな。


「な、なるほど。これが都会の恋愛術なのか……」

「いや、それは違うと思う」

「アタシもこれをするべきか?」

「参考にならないと思うし、アユムちゃんは自分のやり方でやればいいと思うよ! それに、今日はアユムちゃんの歓迎会。ご飯食べること優先で」

「お、おう。じゃあ肉、いただきます」

「はい。悠馬もおにぎり食べて!」

「自分で食べたい」

「ラフィオ! プリン食べさせてあげるね!」

「自分で食べられるけどな……あーん」


 つむぎに向けて口を開けるラフィオ。こいつは恥ずかしげなくこんなことをする!


「な、なんか魔法少女たちって……自由だな。個性的だな」

「アユムの田舎にはいなかったのか?」

「まあうん。女は特に、女らしくいろって言われる場所だったから」


 ああ。それは前に聞いたな。


「男が酒盛りしてる裏で、女は飯の準備をするのが当然みたいな風習だった」

「はー! そんな前時代的な場所が、今の時代にあるとはねー!」

「そんな田舎、忘れちゃいましょう!」

「そうよ! あなたはあなたらしく生きればいいの! 堂々としてなさい!」


 酔っ払いたちが口々にアユムを激励する。


「お、おう。聞いてたのか……」

「驚くのはそっちなのか」


 まあ、この人たちも大人だし。未成年がしんみりした話をしていたら、それを聞いてやる程度の常識は持っている。


「この街じゃ、みんな自由に生きていいの!」

「そうです愛奈さんの言うとおり! 愛奈さんは自由すぎですけど!」

「あはは! 周りの理解のおかげです! アユムちゃん! ようこそ模布市へ!」

「わたしも歓迎するわ。わたし自身は東京の人間だけど」

「えー? 樋口さんだって、もう模布の人間ですよね?」

「最近、そんな気がしてきたわ」


 大人たちは俺からスルスルと離れていき、アユムの方に向かっていく。そして絡みついた。


「え? なっ!? ちょっ!? これどうなってる!?」

「よろしくねー、アユムちゃん」

「アユムちゃんが楽しく過ごせるよう、応援してます」

「わかった! わかったから離れてくれ!」

「ふふん。ここは自由の街。わたしの動きも、誰にも止められはしないのよ」

「好きに生きていいってことは、他人もそう生きてるってことなんですよね」

「油断すると、こうやって誰かに絡め取られてしまうわ。今度護身術教えてあげるわね。あとトレーニングも」

「うわーっ! 助けてくれ! 悠馬!」


 アユムに自由に生きろと言った直後に動きを封じにかかる大人たち。なんて浅ましい光景だ。


 こいつらを止める方法はひとつだ。

 俺はコップにビールを注いで大人たちの口に運ぶ。みんな面白いように飲んでいた。それを繰り返せば。


「うえー……もう駄目……飲めない」


 地面に座り込んだ愛奈たち。明日はひどい二日酔いになりそうだ。


「あ、ありがとう悠馬。助かった」

「どういたしまして。酔っ払いの言うことは、適当に流しておけ」

「おう……」

「姉ちゃんたちを家の中に運ぶぞ。さすがに外で寝させたら風邪引くだろうから」

「わかった……中で寝させるのはありなのか?」

「まあ、あり。和室まで運ぼう。で、明日の朝迎えに行こう」

「アタシたちだけで帰るのか!? いいのか、この人たち放置するってことだろ?」

「仕方ないよ。わたしたち、澁谷さんと樋口さんの家知らないもん」

「そうなのか……」

「姉ちゃんを連れて帰るのはありだけど、見ての通り自分では歩けそうにない。酔っ払いを背負って帰るのは面倒だ」

「ゆうまー。すきー」

「……」

「えへへ。悠馬。悠馬。ずっと一緒だからね」


 俺に運ばれてる愛奈は、酔って締まりのない表情でヘラヘラと笑っている。


「絶対、離れないでね」

「まったく」


 別に、この家からマンションまでそう離れてるわけじゃない。背負って帰るのも難しくないし、やってやるか。


「悠馬ってば、愛奈さんにすごく甘いんだよね」

「そうみたいだなー。きょうだいって、いいな」

「愛奈さんが本気で悠馬と添い遂げようと考えてなければ、微笑ましいんだけどね」

「あの人、マジでアタシたちのライバルなのか?」

「うん。残念ながら」


 お前らは何言ってるんだ。

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