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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第9章 追加戦士

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9-19.アユムと大都会

「そうそう! これ! なんなんだこれ!?」


 模布駅から歩いて数分。この街にいくつかあるシンボルのひとつ、スパイラルタワーにアユムは圧倒されていた。


「専門学校が入ってるんだよ。なんか、芸術を学ぶ、みたいな?」

「あとコンピュータを勉強する学校もだな。おしゃれなコマーシャルしてるの、アユムの地域でも見れるはずだ」

「あー。なんか見覚えあるかもしれねぇ……そうか、あれがこれか……」

「学校だから中には入れないよ。高いビルだけど展望台とかもない。関係者以外立ち入り禁止です。でも地下と一階にはお店があって、そこはみんな使えます」

「お店?」

「カフェとか」

「カフェ!?」


 田舎にはないのだろうな。飲食店といえば、お酒を出すスナック程度。あとはあの小さなスーパーのフードコートだけ。


「行ってみよっか。まだ午前中だし、モーニング食べられるよ」

「モーニングってなんだ……?」

「カフェでコーヒーを頼むと、トーストとかゆで卵とかもついてくるの」

「これ、この地域だけの風習らしいな」

「らしいねー」


 都市部で、街の有名なシンボルでもある建物だから、バリアフリー対応もばっちり。車椅子で問題なく中に入れて、カフェに向かう。


「アユムちゃん。小倉トースト食べる?」

「食べる。そうか、これがあの噂の……」


 模布市の文化のすべてが、アユムには新鮮だったらしい。


 ちなみに、同じく模布市以外の出身であるラフィオは。


「僕はプリンアラモードが食べたいな」


 模布文化よりも大事なものがあるらしかった。


「この後、どこ行こっか」

「映画見るとか?」

「映画? そんなのどこでも見れる」

「映画!? 見たい! めちゃくちゃ画面が広いんだよな!?」

「おわー。アユムちゃんの食いつきがすごい。そして悠馬がアユムちゃんのやりたいこと、わかってるのもすごい」


 こいつが映画も見たことがないのは知ってたから。


「僕は恋愛映画が見たいな」

「えー。わたしは動物の映画が見たい!」

「今、そんなのやってるのか?」

「やってるだろ。この近く、三つくらい映画館あるし」

「映画館が、三つも……?」


 そこ、驚くところなのか。アユムの地元にはひとつも無かったから、驚けるんだろうな。


 経営母体が違うシネコンがふたつと、少し小規模な劇場がひとつ。だからマイナーな映画も上映してたりする。


「調べてみるねー」


 つむぎがスマホを取り出して調べ始める。


「アタシもそれやりたい」


 アユムが、少し羨ましそうに言った。

 そういえば、両親からも模布市でスマホにして良いって言われてたんだっけ。


「スマホで調べ物したいの?」

「スマホにする!」


 なんか、ワクワクというか期待が大きすぎて、アユムの言葉遣いが変になってるな。


 大都市だから携帯ショップもしっかりある。模布駅を突っ切り、スパイラルタワーの反対側へ行けば、大きな家電量販店。そこでスマホは買えるはず。


「でかい建物だな……」

「アユム。両親に通話、繋げておけよ。さすがに契約は保護者の了解がないとできないから」

「お、おう。そうだな……」


 未成年者だから、ショップに行ってお願いすれば機種変というわけにはいかない。らくらくフォンからスマホに変えるなら、契約内容も変わるだろうし。


「契約書の確認なんかは、俺のスマホでリモートで書類を見せることになるのかな」

「アユムちゃんのご両親はスマホなの?」

「ああ。街に出て変えたって言ってた」

「そっか。じゃあ画面通話もできるね」


 両親もガラケーだったら詰んでた。それでもやりようはあるのだろうけど。

 というわけで、来店。未成年者だけ五人で入ってきたのだから、ショップ店員も不審そうな目を向けたことだろう。


「スマホダケさんだー!」


 家電量販店の中にあるのだから、店舗というよりは窓口。それも携帯キャリア各社が集まっている。その中で、アユムの家が契約している会社の窓口に近づいたところ、つむぎが装飾として飾ってあるぬいぐるみに突撃していった。


「おいこら! 迷惑になるからやめろ!」


 ラフィオが後ろから抱きしめて必死に止めている。そのまま頑張ってくれ。


「彼女の機種変に来ました。保護者からの了承は得てます」


 未成年が冷やかしに来たわけではないと説明しつつ、アユムの両親との通話をして納得させる。かなりイレギュラーな状況だけど、対応してくれるのはさすがプロだ。


「料金プランとか全然わからねぇ……」

「プロの店員さんに任せればいいってわけでもないからねー」

「油断するといらないオプションつけられて料金だけ高くなるからな」

「マジかよ。都会怖い」


 これは田舎でも同じだからな。


 それでも、なんとかしてスマホの契約にこぎつけることに成功した。アユムも現代の女子高生としての一歩を踏み出したわけだ。


「これが……スマホ……」

「とりあえずメッセージアプリでわたしたちと友達登録して。あと、気をつけないといけないことがいくつかあって」

「おう。なんだ?」

「怪しいメッセージが来ても無視すること。SNSはやっていいけど、個人情報が特定できるような投稿はしないこと」

「お、おう。気をつける……」

「華のJKがキラキラかわいい青春を送るのには、そういう注意を欠かしちゃいけないからね」


 スマホの取り扱い講座は遥に任せることにした。俺は、延々とスマホダケのぬいぐるみを撫でて話しかけている小学生に、ここを出るぞと言いに行く。

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