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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第9章 追加戦士

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9-14.アユムのいる食卓

 全体的に細い線で構成されているフィアイーターだから、コアがどこにあるのか特定しにくい。けど、バラバラにすればいずれは見つかる。

 腕が生えている持ち手の付け根の片側にあったらしい。断面からコアが転がり出てきた。


「よし見つけた! ライナーキック!」

「あー! こらわたしが見つけたのよ!?」

「早いもの勝ちです!」


 別にどっちが先でも結果は変わらないのに、ライナーがすかさずコアを蹴り上げて破壊。セイバーと言い合いをしている間に、フィアイーターは消滅していった。


「セイバーだって、わたしがいなければ勝てなかったんですし。とどめを譲ってもいいじゃないですか」

「それはそうだけど。わたしの方が頑張ったんだから!」

「わたしだって頑張りましたー。それに、ピンチだった悠馬を助けました!」

「そうだ悠馬! なんでこんな所にいるのかしら!?」

「悠馬。この女が、悠馬の名前を出して魔法少女のことを教えろと言ってくるんだけど。魔法少女との繋がりを話したのかい?」

「悠馬さん。このお姉さんが、田舎から来たっていう知り合いなんですか?」


 ラフィオと、それに乗ったハンターがエントランスまで降りてきた。


 ラフィオの横にはアユムがいる。逃さないとばかりに、ラフィオの毛をしっかり握りしめていた。


「あー。知り合いだ。アユム、とりあえず俺の家に来い。説明してやる」

「おう……なんかこのでかい生き物がアタシのこと知ってるの、わけわかんねぇんだけど」

「でかい生き物じゃなくてラフィオだよ! わたしの彼氏!」

「余計にわかんねぇ……こんな小さい子にも彼氏がいるとか」


 わからないのはそっちか。


「説明するから。ラフィオ、アユムを家まで運んでくれ」

「じゃあ、悠馬はわたしが運ぶねー」

「お姫様抱っこはするなよ」

「もー。仕方ないな。ほら、しがみついて。体を密着させる感じで」

「言い方が気持ち悪い」


 アユムに魔法少女のことを伝えるのが決定した今、ライナーは俺との仲を見せつける作戦に出たらしい。

 チラチラとアユムの方を見ながら、俺を背負って走り出した。


 セイバーもそれについていくし、ラフィオもふたりを乗せて駆け出す。

 経験したことのない速度と動きで運ばれる感覚に、アユムが悲鳴を上げたのが聞こえた。


 家に着くと、魔法少女たちは普通に変身を解いた。ライナーが本当に片足のないクラスメイトだったことに、アユムはかなり驚いている。

 ピンクの魔法少女は少女とは呼べない大人だし、青い方は小学生。ラフィオが小学生の男の子に変身したのも、アユムにとっては信じられない光景だったらしい。


「悠馬、晩ごはん食べた? 食べてないよね?」

「食べてない」


 アユムの心情は放っておいて、遥が訊いてきた。

 正確には、作ったけど話しに忙しくてほとんど手をつけてない。その後フィアイーターも出たし。


 だから空腹だ。


「ってことはアユムちゃんもか。仕方ない、ご馳走してあげます」


 みんな夕飯はまだだったらしい。俺が帰ってくるのを待ってたとかかな。

 俺が、思いつきでアユムの夕飯を作ったことは内緒にしておこう。


「おお……すごい。普通に料理だ」


 豚の生姜焼きを前に、アユムは感嘆の表情を見せていた。


「悠馬の料理とは大違いだ」

「なに? 悠馬、アユムちゃんに料理作ったの?」

「あー。作った」


 内緒にしようとしてたのは、一瞬でバレてしまった。


「どうして、隙があれば自分で料理しようとするかな」

「あれでいて、自分の腕はそんなに悪くないって思ってるんだよ」

「本気で思える自信がすごいよね」

「自分は常識人だと思ってるけど、僕からすれば十分変人だ」


 遥とラフィオがヒソヒソ話している。全部聞こえてるぞ。



「それで。お前らのこと教えてくれ」


 生姜焼きを数切れ食べて、アユムは落ち着きを取り戻した。とりあえず、わからないことを尋ねてきた。


「見ての通りだ。遥たちが魔法少女なんだ」


 ある日俺の前に妖精が現れて、愛奈を魔法少女にして戦うことになった。それからのことを、要約しつつも順を追って説明する。

 キエラという敵の目的や、俺たちを支援してくれる公安やマスコミもいることも。


「れ、レールガン? そんなすごそうな武器まで持ってるのかよ……小学生が」

「えっへん。あんまり使ったことないですけどね!」

「なんで自慢げなんだ、お前が」

「はあ……悠馬が、思ってたよりすごいことになってた」


 アユムは再び、現実を受け止められないって様子になった。

 仕方ない。時間が解決してくれるはずだ。


「で、次は悠馬がアユムちゃんと仲良くなってることについて、聞かないとね」

「そうね。女の子向けアパートに入れてもらうくらいの仲になってるとか、ちょっと見過ごせないわね」


 それは説明しないとな。大したことでもないし。


 アユムも、昨日の行いは良くなかったと自覚があるし、俺も言いすぎたとお互いに謝った。そして、あの日の夏の約束の正確な内容をアユムはよく覚えていないこともわかった。

 俺の言い分は通ったけど、アユムの気持ちも判明してしまったわけで。


「はー。つまり、この子は七年も前からずっと悠馬のこと好きだったのねー」

「ふふん。それはすごいかもしれないけど! 今の彼女はわたしだから! あなたは身を引きなさい!」

「遥、そういうことを言うな。こじれるから」

「でもー」

「遥ちゃんも、悠馬のこと好きになったのは半年くらい前なのよね。それ以前からずっと知り合いではあったのに」

「そ、そうですけど! 好きになってた長さは負けてますけど! でもわたしは勝ったんです! てかその長さなら、お姉さんだって悠馬に養ってもらおうとか考え始めた期間は負けてますよね!?」

「わたしはいいのよ。お姉ちゃんだから」

「よくないですよ! なおさら!」


 なんの張り合いをしてるんだ。

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