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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第9章 追加戦士

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9-9.仲直り

「遥。お前は夕飯を作っててくれ」

「えー。夕飯ならラフィオが」

「ただいま! ラフィオいる!? いるよねやったー! モフモフー!」

「あああああ!? やめろ! おいこら! 離せ!」


 ちょうど帰宅したつむぎが、ラフィオの存在を知るやランドセルを放り投げ、玄関からリビングまでを瞬間移動を疑う速度で駆け抜けてラフィオを掴んでソファに倒れ込む。


「ラフィオラフィオラフィオー! モフモフしていい!?」

「モフモフしながら訊くことじゃないよな!?」

「やったー! ありがとうモフモフー!」

「人の話を聞けー!」

「ラフィオ大好きだよ!」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど!」


 元気だなあ。


「そういうことだ。ラフィオは晩ごはんを作るどころじゃない。というわけで遥頼んだ」

「うー……わかった」


 自分が夕飯を作る必要性に駆られたわけではない。本来なら遥に、そんなことをする義理はない。

 俺の意志を曲げるのが無理だと悟ったのだろう。


「アユムちゃんと仲良くしすぎたり、わたしから乗り換えたりしないでね」

「わかってるよ」


 乗り換えるってのも変な話だけど。惚れるなって言いたいのだな。あと、周りに見られて変な噂を立てられるなとか。

 戦いの都合がいいから、付き合ってる体にしている。その体裁を崩すことはするなと。


 心配そうな遥を背に、俺はアユムの家に行った。


 まだ日は高い。帰る頃には、さすがに暗くなってるだろうけど。


 俺の家の最寄り駅から、電車で三駅。そこからさらに歩いて十五分ほどの所に、アユムのアパートはあった。

 女性限定で入居できるタイプのアパートらしい。外観も小綺麗にしてあって、セキュリティも万全。部外者が入れないようにカードキーがついている。


 訪問するには、インターホンで該当する部屋に連絡しないといけない。


 アユムの部屋番号なら知ってる。けど、出てくれるかわからなかった。出たとして、どう話せばいいのかわからない。

 少し逡巡している間に。


「あ……」


 アパートの外側からはキーが無いと開かない自動ドアが、内側から開いた。

 アユムだった。


 昨日は制服姿だったけど、学校に行かなかった今日は当然私服姿。

 白いタンクトップに短パン。成長して髪は伸びていたけれど、その姿は。


「お前、あの頃のセンスのままだよな」

「うるせえな!」

「おい待て!」


 アパート内に逃げこもうとしたアユムを慌てて引き止める。当然、俺も男子禁制のアパートに入ったことになるけど気にすることはない。

 手首を掴まれたアユムは俺に比べると非力で、振り払って逃げることもできず、無駄な努力を少ししてからおとなしくなった。


「なんだよ。アタシと付き合う気はないんだろ?」

「だとしても、学校に来ないなら心配するだろ」

「だから会いに来たってか? てか、なんで家知ってんだよ」

「情報通から聞いた」


 公安情報とは言えない。


「情報通って。都会怖ぇな」

「そんなに怖がることはない。それより、外出するつもりだったんだろ。どこ行きたかったんだ?」

「腹減ったから、夕飯買いに」

「一緒に行く。この辺りのこと、知らないだろ?」


 まあ、俺もここの駅で降りたことは滅多にないけど。それでも近くのスーパーまで一緒に行くくらいはできる。


「えーっと、この道を……ああくそ。わからねぇ」


 紙のメモに、最寄りの店までの道のりを描いているらしい。けど、アユムお手製の乱雑な絵と字のメモは書いた本人ですら判別が難しいらしい。


 俺はスマホで近くのスーパーを検索して。


「こっちだ」

「お前わかるのか?」 

「スマホが教えてくれた」

「スマホ。スマホかー。携帯ほしいなー」

「持ってないのか」

「田舎じゃ必要ないからな」


 そういうものなのか? あるいは、女川家がそういう考えなだけかもしれない。


 ふたりでスーパーまで歩く。途中で話が途切れて無言の時間となった。

 こんな静かなアユムは初めて見た。田舎では、ところ構わず騒いでたから。


「なあ、悠馬」

「どうした?」


 先に口を開いたのはアユムの方で。


「昨日は悪かった。もう七年とか会ってないし、ちゃんと約束したわけじゃないのに、アタシを裏切って彼女作ったとか言って。どう考えても、アタシが悪いよな。なんか、夜になったら自分が恥ずかしくなって。顔を合わせるのも辛くなって……ごめん」


 今日学校に来なかったのはそういう理由。

 気まずいから、来れなかった。


 そしてアユムは、俺が思ってたより冷静で自分を見つめられていた。


「俺の方こそ、ごめん。昨日は言いすぎた。大嫌いなんて言うべきじゃなかった」

「アタシが強く当たったからか? あの……か……あの女に」


 遥を俺の彼女だとは、まだ認めたくないらしい。落ち着いて話せるだけでも前進だと思うことにしよう。


「まあ。そうだ。あと教室で暴れたり」

「悪かったよ。……祐希のくせに抵抗するから」

「いきなり突進してくるからだ」

「いや、そうなんだけどよ。……強くなったよな、悠馬。前の悠馬だったら、アタシに突き飛ばされていた。昨日は逆に、押された」

「……」


 魔法少女と共に戦うために、鍛えてるから。本当のことは言えない。


「俺も成長したんだ。男の方が腕力あるのは当然だろ」

「そうか。そうだよな。悠馬も男なんだ。背もアタシよりでかい」

「まあ、うん」

「すごまれた時、怖かった」

「ごめんって」

「ううん。アタシも悪いから。それに、なんか」

「なんだ?」

「男らしいなって」


 ちらりとこちらを見て、アユムは眼を伏せた。

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