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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第9章 追加戦士

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9-6.拒絶

 というか。


「いいのか? アユムがお前たちの考えてる通りの気持ちで、今もそれを諦めてないなら、相当面倒なことになるぞ。特に遥にとってはライバルだろ?」

「んー。ライバルが出てきたこと自体は困らなくはないけどさ。面倒なことはさっきも見たし、今更かなって。確かにアユムちゃんが本気っぽいのは、場合によっては危機感あるけど。でも悠馬がアユムちゃんのこと好きではないなら、それでいいかなって」


 遥はまったく動揺していなかった。ここの思いっきりの良さは、さすがだ。


「けど、悠馬が彼女をはっきり拒絶して、今後関わるなと言い切っちゃえばいいだけだよ。それで、あの子は諦めておしまい」

「そう上手くいくかな」


 なんで今になって、アユムがここに転校してきたかもわからない。

 親の転勤とかではないと思う。父親は地元で農家をしているはずだ。俺が理由とも思えないけど、相当な執念で迫ってくるなら簡単には追い返せない。


 まあいいか。俺がちゃんと断らないといけないのは同じだ。


「それなんだけどね」


 ラフィオが俺の鞄から顔を出して、少し言いにくそうな様子で話しかけてきた。


「あの女、魔法少女の適正が高い」

「おい」


 なんてことを言うんだ。


 いや、ラフィオがニヤニヤしながらアユムの心中を解析していた理由がわかった。

 身内に引き込みたいんだ。


「遥と同じくらいある」

「そっかー。わたしと同じくらいかー。……高いの?」

「高い。愛奈ほどじゃないけど、変身すればかなり強くなる」

「そっかー。わたし、愛奈さんよりは下なんだ。気にしたことないけど」

「愛奈が高すぎるんだよ。それより、アユムって子のことだ。僕としては魔法少女にしたい」

「うー……悠馬はどう思う?」

「あれと関わりたくない」


 クラスメイトになった時点で関わらなきゃいけないのは確かだけど、魔法少女関係で密接に関わるのは遠慮したい。


「だよねー。わたしも同意見。アユムちゃんが考えを変えて、おとなしくなってくれればいいんだけど」

「あり得なさそうだよな」

「うん」

「そうか。魔法少女には適任なんだけど」

「そこにいたか悠馬!」

「うわっ!?」


 突如、そのアユムが体育館裏までやってきて、俺たちの姿を見つけた。


 ラフィオは咄嗟に隠れて、アユムには見つかっていないと思う。まあ、彼女は俺にしか目がいってないから不必要な心配だ。


「歓迎会でカラオケ行ったんじゃなかったのか?」


 教室ではそんな流れだったけど。


「ああ! カラオケ行きたかったけどな! 悠馬お前を放っておきたくねえんだ!」

「ほっといてくれ」

「おい! アタシを差し置いて彼女作ってるとかどういうことだよ!?」


 俺の話は聞かず、ズンズンと大股でこっちに迫ってくる。なかなか迫力があるな。

 俺は遥を庇うようにして立つ。


「アユム。お前とは約束なんかしていない。俺が返事する前に勝手に帰っただろ。それに、付き合うって友達付き合いのことってお前は言ってた」

「う、うるせえ! アタシはそんなつもりじゃなかった!」


 顔を赤くしながら、言い返そうとして出来てないアユム。間違ってた自覚はあったのか。

 その上で押し通そうとするから質が悪い。


「お、女から付き合おうって言われたら、そういう意味だって思うだろうが! 断るのもおかしいだろ!」

「俺は断りたかったんだよ」

「おかしいだろ! そのくせ、他の女と付き合ってるし!」

「あー……」


 付き合ってるふりをしてるだけ、なんて言えるはずもなかった。


「てめぇも同じか! こんな女は嫌ってことか!? 車椅子乗ってるような、おとなしい女の方が好きってことか!?」

「まあまあ。アユムちゃん落ち着いて」

「気安く呼ぶんじゃねえ! てめぇがアタシの悠馬を!」

「うわっ! 待って落ち着いて!」


 アユムが遥を睨みつけて、手を伸ばした。胸ぐらを掴もうとする勢いだ。


 俺はすかさず、アユムの手首を掴んで捻りあげると、彼女の体を体育館の壁に押し付けた。


 弱いな。アユムはきっと、あの頃俺をグイグイ引っ張っていた頃と変わらないのだろう。けど、いつの間にか俺の方が強くなった。背も俺の方がずっと高い。

 夏服のブラウスの胸ぐらを掴んで、強引に顔を近づけさせる。


「おい。いい加減にしろ」


 ドスのきいた声を作りながら、上から見下ろし語りかけける。


「お前の気持ちはわかった。だが勝手なことをするな。俺が誰と付き合うかは俺が決める。俺の彼女に手を出すな。はっきり言う。お前と付き合う気はないし、お前の態度は大嫌いだ」

「え、あ…、だ、だい……」

「ああそうだ。アユム。俺はお前が大嫌いだ。俺と遥に、もう関わるな」

「あ……」


 その場でへなへなと崩れるように座り込んだアユムは、俺を見上げながら絶望に満ちた表情になった。


 目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。それはだんだん増えていき、やがてアユムは泣きじゃくり始めた。


 だからなんだ。


「帰るぞ、遥」

「うん。えっと、アユムちゃん。友達としてなら、わたしはお付き合いすることいいと思うけど」

「余計なことを言うな」

「あー。うん。そうだね。ごめん……」


 車椅子を押して、体育館から離れていく。

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