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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第8章 夏のオカルト回

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8-41.大学生たち

 見れば、夏休み中でも来ている研究熱心な理系男子たちが、建物の窓から魔法少女の戦いを見守ってる姿がいくつも目についた。


『あんたも警察だろ? 欲しいって言えば使わせてくれるだろ』

「なるほどね。協力、感謝します」


 市民の協力が得られるというなら、ラフィオが目指した魔法少女を人々の希望とする方針はうまく行ったのだろう。ありがたく、それに乗らせてもらおう。


 とりえず、公安として大勢の人間に顔を見せたくない。写真を撮られるかもしれないし。覆面女として登場すれば、大学生たちは魔法少女の仲間と認識してくれるだろう。というわけで、美穂たちとの合流時には覆面を被っていたのだけど。


「ひ、樋口さんって魔法少女の仲間だったんですか!?」


 美穂にかなり驚かれてしまった。


 それはともかくとして、それなりの数の液体窒素が集まった。デュワー瓶なる容器は注ぎ口が小さく、一気にぶっかけるには向かない。そういう用途の道具ではないから仕方ない。

 それでも窓からフィアイーターに注げば、夏の陽気で半分以上は蒸発しながらも、しっかりとかかったようだ。


 フィアイーターの頭頂部に白い霜が形成されていく。あまりの冷たさに苦しげな咆哮が響いた。奴は液体窒素の攻撃を止めるために、跳躍して樋口たちの方へ襲いかかろうとして。


「させないからね!」


 横からライナーの飛び蹴りを受けて、地面に倒れることとなった。


 学生たちが別のデュワー瓶を台車で運んで、フィアイーターが倒れた真上の窓に行き、液体窒素をさらに注ぐ。

 瓶の中身が尽きれば、また別の瓶から降らせる。


 フィアイーターの動きが、だんだん鈍っていくのがわかった。



――――



 液体窒素をなんとか振り払おうと、フィアイーターは両手を窓の方に向けていた。そんなことをすれば、腕が凍っていくわけで。


「凍って固くなったなら壊せるよね!」

「ああ! やっちゃえ!」


 ハンターが放った矢が、フィアイーターの指の一本の根本を貫き、砕いた。指が一本吹っ飛んでいく痛みに、奴は悲痛な叫びと共に藻掻いた。その体にも液体窒素がかけられていく。


「よし! 砕けるなら蹴りでもなんとかなるよね! くらえー!」


 ライナーが走り、霜ができているフィアイーターの脇腹を思いっきり蹴る。布が砕けて破片が飛び散り、中の布が見える。


「セイバーも!」

「ええわかってるわよ! くらえモフミドロ!」


 暴れているフィアイーターの動きを注視していたセイバーは、今度こそ奴の腕の動きを見切り、逆に剣を振って腕を切断。そして胴の上に着地して、再度剣を振って大きな裂け目を作った。


「あった! コア! 誰か!」

「えい」

「おっと」


 大きく跳躍したラフィオの上から正確に狙いをつけたハンターの矢が飛んでくる。


 布を一枚隔てて淡く光っている黒いコアを貫き砕いた。


 いつものように、フィアイーターは黒い粒子となって消滅していく。後に残ったのは。


「なにこれ?」

「なんだろうな」

「わーい! モフモフ!」

「おい待てハンター。得体のしれない物に近づくな」

「モフモフー! ……ただの布だね。モフモフではあるけど。ラフィオ、被ってみて」

「やらないからな」


 謎の布を押しつけられたラフィオが避けた。


「あー! じゃあ代わりにラフィオをモフモフさせて!」

「……後でな」

「やったー!」


 ハンターはあっさりと布を放り投げた。空中で風に流されたそれが飛んで行きかけて。


「殺人事件の貴重な証拠品なのよ。雑に扱っちゃ駄目」


 覆面を被ったままの樋口が掴み取った。


「殺人事件?」

「ええ。これがモフミドロの正体。犯人はこれを被って犯行を行った」

「マジか」

「詳しい話は帰ってからね。今は、ここを離れるわよ」


 周りを見回せば、大学生たちがスマホを向けていた。


 ありがとう魔法少女。シャイニーフォースかわいい。サインしてください。連絡先教えて。みたいな学生のノリの声がかけられている。


「あー。学歴が上の人から褒め称えられるっていいわねー」

「姉ちゃん、仕事の途中じゃないのか? さっさと戻れ」

「はいはい。行ってくるわねー。麻美に外回りの仕事、全部押し付けるのも悪いし」


 あんまり悪いとは思ってなさそうに、セイバーは走って去っていく。大学生たちが追いかけようとしたけど、目にも止まらぬ速さでいなくなった。


「じゃあ、わたしも悠馬と一緒に帰ります」

「ああ。背負ってくれ」

「お姫様抱っこじゃなくて?」

「背負え」

「はいはい」

「ラフィオ。わたしたちも帰ろ。樋口さんはどうするんですか? ラフィオに乗って一緒に来ます?」

「警察がここに来るわ。それに紛れて帰る」

「わかりました。ラフィオ、帰ったらご飯だよ。お腹すいた!」

「そうだったな。そうめんの他にも、何か作るか」


 ラフィオたちが走っていくのを見て、ライナーも俺を背負って神箸家に向かった。

 行きにそうしたように、窓から遥の部屋に入る。そしてライナーは変身を解除。


「そういえばさ。お昼の時間に部屋を開けちゃったよね。お母さんがお昼ごはん作って、食べなさいってわたしたちを呼びに来なかったかな」


 それはちょっと心配だ。母親が呼びかけて返事がなくて、不審に思って部屋を見れば俺も遥もいなくて、家中探してもいないけど車椅子は部屋にあるから出掛けてたと言い訳もできない。


 どういうことかと訊かれたら、言い訳が難しいな。

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