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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第8章 夏のオカルト回

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8-39.モフミドロとの戦い

 奴はその腕で、近くにいた不幸な黒タイツの首根っこを掴んで投げつけた。狙うは、うざったい攻撃を続けるハンターだ。


「うわっ! 仲間を投げるとか駄目だよ!」


 そんな抗議を聞く相手ではなく、ハンターは窓から飛び降りた。哀れ黒タイツは窓ガラスに直撃。ガラスが割れて中途半端に建物内に体が入り込んだ結果、窓枠に残っていた破片が首に刺さって致命傷となった。


 着地したハンターは降り注ぐガラス片を必死に避けながら、フィアイーターの方に駆けて矢を射る。邪魔な黒タイツを武器にされる前に、今度は自分の手で二体ほど射抜いて殺し、次はフィアイーターの腕を狙う。

 足と違ってこっちはシルエットがはっきりしてて狙えるし、これを潰せば黒タイツ投げはできなくなる。


 そんな考えからの攻撃だろうけど。


「? 効いてない?」


 ハンターは訝しげな声を出した。

 光の矢は何本も当たっている。フィアイーターの両肘の、ちょうど関節部分を正確に射抜いているのに。


「フィアァァァァ!」


 フィアイーター自身も痛そうな声をあげつつ、何事もないかのように別の黒タイツを掴んで投げてきた。


「わ! ちょっ!」


 狙われたのはまたハンターで、なんとか回避する。


 なんでフィアイーターの腕がまともに動き続けるのかは知らない。

 たぶん、藻だからだ。普通の生物の腕と、藻が動くようになった生き物では、関節に見える部分の構造が根本的に違うのだろう。骨を中心にして筋肉があるっていう普通の生き物じゃない。


 あの中全部肉で未知の方法で動いているから、細い矢が数本刺さっただけでは動きを阻害できないのだろう。


 関節全部埋め尽くすくらいに矢を刺せば、それがつっかえて動けなくはできるだろうけど。


 ハンターは本気でそうするつもりだろうし、敵もその方針を見抜いたことだろう。黒タイツたちがハンターの方に殺到していく。


 接近戦が苦手なハンターだけど、自身に向かってくる黒タイツを順番に射抜いていく。

 それでは間に合わないために接近を許してしまったけど、しゃがんで掴みかかってくる腕を回避した上で転がり、寝転びながら矢を放って敵の一体を顎から脳天に駆けて矢で貫き殺す。

 転がった勢いで身を起こし、しゃがんだ状態で矢を放って別の黒タイツの胸を射抜く。


 すぐに次の黒タイツが迫って、ハンターを蹴りあげようとしてたけど。


「ラフィオ!」

「はいはい。わかってるとも」


 その黒タイツの側面から白い獣が突っ込んできた。黒タイツが宙を舞い地面に激突してたぶん死んだ過程を確認することなく、ラフィオはハンターの体を咥えて放り投げ、背中に乗せる。


「わー。モフモフ!」

「やられかけてたのに呑気なことを言うな!」

「やられてないもん! ラフィオ! あのモフモフに向って突撃!」

「無茶を言うな! まずは黒タイツどもを全員倒してからだ! うおっと!?」


 ラフィオの進路上に、別の黒タイツが鋭い角度で落ちてきた。フィアイーターが投げたものだ。慌てて跳び退いたものの、フィアイーター本体に接近するのは困難だと思い知らされた様子。


「フィアァァァァァ!」

「フィー……」

「フ……フィ……」


 自分たちが使い捨ての飛び道具にされている事実に、黒タイツたちも恐れ慄いているようだった。


 どうせ殺す相手なのだから俺も同情はしないけど、同じ死に様を見るなら投げつけられるよりは自分たちの手で殺してやりたい。というか、上背あるフィアイーターが叩きつけるように投げてくる質量兵器とか、さっさと撃てなくなってほしい。

 というわけで。


「みんな! まずは黒タイツを全滅させてくれ!」


 たぶん全員が同じことを考えているから、セイバーは目についた黒タイツを片っ端から斬り捨ててるし、ライナーも蹴飛ばしていた。

 俺もナイフを構え直して、手近な黒タイツを殺して一体でも弾の数を減らそうとした。しかし。


「フィアァァァァァ!!」

「うわこっち来た!?」


 一番弱そうな俺から殺そうとするのは当然か。投げつけられた一体の黒タイツはなんとか回避できたけど、フィアイーターはその動きを読んでもう片方の腕で別の黒タイツを投げてきた。

 回避が間に合わない。哀れな黒タイツが目の前に迫ってくる。片腕を犠牲にしてでも全力で殴り返せば、衝撃を弱めて生き延びられないかな。


「悠馬!」


 即座にライナーが俺の前に来てくれたから、俺は助かった。

 その場で回し蹴り。こっちに飛んで来ていた黒タイツが思いっきり蹴られ、体をくの字に曲げながらフィアイーターの方に跳ね返された。


「くあー。蹴り返すとこっちにも割と衝撃が……悠馬大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ。ありがとう。ライナーも痛くなかったか?」

「ううん平気。ただ蹴り返しただかだから」


 再度宙を舞った黒タイツは、フィアイーターの顔面に激突していた。痛そうだな。


「見たか! そんなふうに仲間を投げて攻撃とか考えるからやり返されるの! 堂々と自分で攻撃しなさい!」

「フィアアアアアアアア!」

「あ。怒った?」

「ライナーが煽るから」

「だって! わざわざ悠馬を狙うとかムカつくじゃん!」

「その気持ちは嬉しいけど」


 折しも、黒タイツの数はだいぶ減っていた。最後の数体をセイバーがまとめて切り裂いたところだった。

 武器を奪われたフィアイーターが、次はどうするかといえば。


「フィアァァァ!」

「あ。跳んだ。てかこっちくる!?」

「逃げろ!」


 身長二メートル半以上ある巨体を曲げると、大きく跳躍。俺たちの箇所に落ちてくる軌道だった。

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