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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第8章 夏のオカルト回

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8-19.二件目の殺人

「ねえ悠馬。その馬とか牛を飾ったら、ご先祖様が帰ってくるって本当なのかしら」

「そういう風習だろ?」


 本当に霊がいるだなんて、俺は思ってない。ただの飾りだ。


 それで、先祖にまた会えると考えて救われる人がいるのは、大事なことだけど。


「幽霊として出てこなかったらそれでいいわ」

「先祖の扱いが雑」

「あ、でもお父さんやお母さんや春馬が幽霊として出てくるのは許せるわね。もう一回お話したい」

「気持ちはわかるけど」

「もちろん、エリーちゃんもね。大切な家族だから。他の先祖とかは顔も覚えてないから出てきてほしくないけど。怖いから」


 いい話にまとめようとして、恐怖が先行して台無しだ。


「悠馬。思いついたんだけどさ」


 今度は遥が背中から話しかけてきた。


「夏休みが終わったら、秋の文化祭の準備に入るんだよね。わたし、クラスの実行委員していいかな?」

「急にどうした」

「文化祭といえばお化け屋敷じゃん?」

「まあ確かに」


 さっきのフィアイーターも、大学の学園祭で使われてたものらしいから。

 定番の出し物ではあるよな。なんでみんなやりたがるのか、よくわからないけど。


「やりたいなー。悠馬と実行委員」

「やりたいなら手伝ってやってもいい」


 学校全体の運営実行委員なら仕事は大変だろうけど、クラスをまとめるくらいなら難しくない。


「愛奈さんも来てくれますよね、文化祭?」

「え、ええ。どうしようかしら。平日にやるのよね? わたしは仕事があるから……」

「仕事を休む口実になりますよー」

「それは……そうだけど……保護者だから、弟の文化祭に行くのは普通だけど……お化け屋敷……」

「わたしもお化け役、頑張っちゃおうかなー。なんかほら、事故で亡くした足を求めて彷徨い続けるお化け役とか得意だし!」

「それは洒落にならないな」


 本人がノリノリでやるというなら、俺は止めないけどな。誰かに言われてやるなら問題だけど、こいつは自発的に足がないアピールするから。


「ふふふ。お姉さん。どうしますか? 仕事を休んでお化け屋敷来てくれますか?」

「ううっ。どうしよう……」


 本気で悩むのも馬鹿馬鹿しいことだけど、遥が意地悪く話しかけ続けるのも止めなきゃいけないな。


「遥。夏休みが終わった後のことを考えるのはいいけど、ちゃんと宿題終わらせてから二学期に入れよ」

「しゅくっ!?」


 誰にでも弱点はある。


「ちゃんと進めてるか? 俺はほとんど終わったぞ」

「わ、わたしも? だいたい終わってるっていうか? うん。終わりすぎてやばいね」


 どういう意味の終わってやばいなんだろうな。スケジュールの破綻とか、そっちの方向かな。


「明日、宿題の進捗状況を確認するからな」

「ま、待って! それだけはご勘弁をー! そ、そうだ悠馬! えっと、えっと……お祭り! お祭り行こう!」


 町内会が管理している、住宅街の掲示板が目に入る。


 この近くの神社で行われる夏祭りのポスターが貼られている。数日後に行われるそうだ。毎年、結構な数の客が来るし花火も打ち上がる。


「行こ!」

「行くけど、宿題はちゃんと進めろよ」

「あうう……忘れてくれない……どうにかして、悠馬から宿題の記憶を消し去らないと……」


 馬鹿なことを言う馬鹿に、どう言い聞かせるべきか一瞬考えて。


 口を開く前に、どこからか悲鳴が聞こえてきた。


「なんだ?」

「あっちの方だね! 行こう!」

「あ、おい待て!」


 ラフィオを掴んだままのつむぎが駆け出して、俺は慌てて追いかけた。遥を背負ったままだから、元から足が早いつむぎに追いつくのは至難の業。

 けど、行かせるままにはしておけない。悲鳴の理由がなんなのかは不明だけど、犯罪が関わってるなら小学生だけで行かせるのは危険すぎる。


 悲鳴の発生源と思われる若い女が立っていた。そのただならぬ雰囲気に、つむぎは少し離れた所で止まっていた。ラフィオに言われて立ち止まったのかも。


「どうしました?」


 一応は警官の一種である樋口が追いついて、女に尋ねる。彼女は地面の一点を指差していた。


 人がひとり、倒れていた。中年の男。

 見れば首筋に穴が開いていて、血が流れていた。


「ここはわたしに任せて。あなたたちは先に帰りなさい。真っ直ぐにね。遥も自分の家に帰ること。いいわね?」


 いつになく厳しい表情で樋口に言われて、俺は黙って頷いた。


 どう見ても、例の藻の怪物と噂される殺人犯の仕業だ。まだ奴はこの近くにいるかもしれない。

 俺たちがそれに遭遇する危険を、樋口は考えている。


「もし危険人物と遭遇したなら、迷わないで。魔法少女に変身してでも相手を殺しなさい」

「わかった。みんな。帰るぞ」


 女子供ばかりの集団とか、殺人鬼と遭遇したら狙われかねない。相手の目的が不明な以上は狙われると断言もできないけれど、断言できないなら遭遇は避けるべきだ。

 本当に出くわして、魔法少女たちが抵抗して殺すなんて事態になれば後味悪いし。


 俺たちは急いで帰り、ラフィオとつむぎに絶対に家から出ないようにいいつけて、車椅子を押して神箸家まで送る。俺と愛奈のふたりでだ。

 神箸家でも、近所で事件が起こっていることは把握しているらしい。両親が心配そうに出迎えてくれて、こちらに感謝の言葉を口にした。


 それはいいのだけど、明日から遥の外出がやりづらくなりそうで怖いな。昼間は問題ないだろうけど、暗くなる前に帰れと言われたり。


 早いところ犯人に捕まってほしいな。

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