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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第8章 夏のオカルト回

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8-15.ブラック研究室

 樋口は、ネットの盛り上がりにはさほど興味はないらしい。

 あの周子という女の姪から渡されたという画像を俺たちに見せてきた。


「土居浩一。この人物を最近見かけたことはある? 特にあの家の近辺で。あるいは、事件現場付近で」

「ある」

「あるなー。今朝見かけた」

「この前、周子さんに話しかけられた時に助けてもらいました」


 まさしく、今朝会ったあの男だった。事件が起こった後とはいえ、現場にしっかりいた。


 他にも一昨日の朝は川で藻を採取していたことと、それは継続的にやっていることというのも、ちびっ子たちが話した。


「そう。いたのね。それは高確率で事件関係者ね……」


 樋口も、回答を期待して質問をしたわけではないのだろう。あの近辺を利用している人間で、気軽に話を聞ける相手として俺たちを選んだだけ。

 本当にいたとなると、見過ごせない問題になってしまった。


「ちなみに、この男の印象は? 善人か悪人か。社会性が欠如してそうかとか、覚えてる?」

「社会性の欠如については知らないけど、悪人ではないと思う」

「……そうね」


 大人に絡んでいた子供たちを助ける程度には善人だ。俺が見た限りでも、態度は少し軽めだけど口が悪かったりはしない。普通の人間に見えた。


「でも、今の話を総合すると、浩一って人が追い払ったのは自分の彼女の伯母さんなんだよね? 顔を知らなかったのかな?」

「知らなかったんだろうな。それほど、周子は家の中でいない扱いを受けてたんじゃないか?」


 浩一と美穂というカップルは幼馴染とのこと。だったら斉藤美穂の両親の顔くらいならわかるだろうけど、その姉の顔まではわからないだろう。既に他の家庭に入っていたなら、顔を合わす機会はない。

 二年前からは同居していたわけだけど、聞く限り家での扱いは良くはなかったみたいだし。隠されていたと言えるかな。周子の方も、部屋の外に出ずにスマホでネットばかりしてたらしいし。


「それで樋口。浩一は結局どんな人なんだ?」

「模布大学の理学部の四年生よ。研究室が藻に関わるものらしいの。ほら」


 研究室のホームページがあるらしい。初老の教授と、その周りに若い学生たちが立っている写真が、トップページに表示されていた。

 その中に、確かに朝の男がいた。


「アットホームな研究室ですって感じねー。会社だったらブラックを疑うところだわ。ここもブラック研究室かもしれないわね」

「ブラック研究室ってなによ。理系にはそんなものあるの?」

「あれー? 文系にはないんですかー?」

「あら。公安を怒らせるなんていい度胸ね」

「大人同士でみっともない煽り合いをするな」


 俺に言われて、愛奈と樋口は気まずそうな顔を見せた。


「はい……あるのよ。朝から晩までぶっ通しで実験するはめになったり。教授の実験に無理やり付き合わされたり。その合間を縫って研究発表の資料を作るとかで、とにかく忙しい研究室はあるの。わたしの所は緩かったけど。同じ学科の友達が死にそうな顔してたわ」

「そうなのね。なるほどそういうのもあるのね」

「この浩一って男が、ブラック研究室の待遇に耐えかねてストレス発散のために人を殺したとか考えてるの?」

「ないと思うけど、可能性のひとつとしてね。情報は多い方がいいわ。それか、血で育成できる藻の研究なら、血の確保の方が動機としてはありえるでしょ?」

「まあ。それは確かに。わたしも詳しくはないけど、血を買うって高いらしいものね。生きた人間の血なら、なおさら」

「で、理系の愛奈から見て、この研究室はブラックに見える?」

「さあ。写真を見ただけではなんとも。教授はすごい年寄りってわけでもなさそうね。人は良さそう。実績とかはあるの?」

「論文はいくつか書いてるそうよ」

「教授なんだったら、そんなの当たり前よ。藻の業界で注目を集めるような発見をしたかとか、そういうことよ」


 藻業界ってなんだよと突っ込もうとしたけれど、愛奈の口調は真剣だった。


「あるのか。藻業界」

「あるでしょ。わたしは工学系だから詳しくはないけれど、コロイド業界とか薄膜業界とかはあったわ」

「マジか。薄膜って?」

「文字通り薄い膜。材質によって他にはない特性があったりするのよ。大学図書館に、そういう業界が出してる機関誌を見たことがあるわ。季刊薄膜っていうの」


 信じられない。


「そういう業界の中でしか通用しないニッチな雑誌はわたしの分野でもあったわ。愛奈の言ってることは正しい」

「あったのかー」

「じゃあ、この教授について少し調べれば判断は下せる?」

「実際に学生に訊いた方が早いと思うけどね。ネットで検索して出てくる範囲なら……おお。若い頃は結構頑張ってたみたいね。業界内では脚光を浴びてたらしいわ。そういう発見をした。だから若くして教授に登れた」

「順調な人生なの?」

「それはなんとも。継続して論文は出してるし業界内に居場所はあるでしょうけど、出世は停滞しているのかも」

「教授の上って?」

「学部長とか。学校の理事になるとか。学長になるとか。外の研究機関の顧問に招聘されるとか。で、成果がほしいから学生に無茶な研究を強要して狂わせる……こともあるかな、ってくらいね」


 愛奈がネットの情報を見てわかるのはそこまで。

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