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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第8章 夏のオカルト回

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8-13.藻の怪物。藻の研究者

 それでも、未知の存在が街にいるのは間違いない。


 ラフィオもさっさと石を選んでバケツに放り込み、つむぎや俺を伴って家に戻る。

 帰り道では、すでに警察の大部分は撤収していた。現場保全のために規制線で囲まれた箇所は立入禁止になっていて、少数の警官が見張っているだけ。


 野次馬もマスコミも、飽きたのか大部分がいなくなっていた。さっきの男も姿を消していた。


「藻の怪物が人を殺したって、ニュースになってたぞ」


 さっき調べた情報を、呟くようにラフィオたちに伝える。おかしなニュースだねと笑うみたいな反応をしていたのだけど。


「藻?」


 小さく訊き返したラフィオは、つむぎと顔を合わせる。彼女も深刻そうな顔をしていた。

 いや、なんでだ。


「さっきのお兄さん。わたしたちを助けた時に河原にいたのは、川の藻を取るためって言ってた」

「大学で、藻の研究をしてるんだとさ」


 聞き捨てならない情報だった。


 まさか事件の関係者だったりするのか? それとも、ただの偶然か?


 俺が推測したところでどうにもならない。とりあえず樋口に連絡してみよう。事件のことも聞きたいし、一応警察に伝えておく情報ではある。

 捜査するのは公安ではないとはいえ、窓口になってもらおう。


 と思って彼女のスマホにかけたのだけど。


「話し中か……」


 どうなってるんだ。



――――



 連絡は寄越さないと思っていた斉藤美穂から、さっそく電話があったことに、樋口は多少なりとも面食らった。


 周子のことかと思ったが、完全に別件らしい。周子は今は、家でおとなしくしているという。

 それよりも、あの家の近くで起こった殺人事件について相談があるとのこと。


 その事件については樋口も知っている。魔法少女たちの安全に関わることだから、一応は警戒するつもりだった。


 事件解決の糸口になるかは微妙なところだけど、一応行ってみることにした。


 斉藤家の近くにある、小洒落た喫茶点で待ち合わせ。美穂は先に来ていて、軽く会釈をした。

 食事を楽しむつもりはないから、アイスコーヒーだけ注文した。


「あの。突然お呼びだてしてごめんなさい。お仕事も忙しいでしょう」

「市民の不安を解消するのも警察の仕事よ。伯母さんは静かにしてる?」

「はい。昨日の夜、家族できつく言っておいたので。今日は両親もいるので、見張れています」

「そう。それで、相談事って?」

「あの家……というより、河原の近くで、殺人事件が起きたってニュースで知りました」

「ええ。わたしも把握しているわ」

「殺された方の遺体から、血が抜き取られていたって本当ですか? ネットでニュースになっていて」

「……ええ」


 遺体の司法解剖はこれからやること。詳しい死因なんかもまだ明らかにはなっていない。けど、遺体を見た警官の所感は伝わってきている。


 直接の死因は、押し倒された時に頭を強く地面に打ったこと。舗装された歩道なのが災いした。

 けど、遺体にはもうひとつ目立つ傷があった。首筋に、太い針を刺した跡。そこから血を抜いたらしく、遺体はその体格の女性から推測される体重よりも明らかに軽くなっていた。止血の処置をしたわけでもなく、その穴からも血が流れ出ていた。


 そんな奇妙な遺体故に、警察内でも噂が広まっていた。


「それからもうひとつ。緑色のお化けが逃げているのを目撃した人がいるって」

「ええ。それも事実よ。被り物ではないかと思うのだけど」

「藻の、ですか?」

「藻かどうかはわからないし、警察だからこの情報だけで断定はしたくないのよ」


 ネットを見ればいろんな憶測がある。隠密用のギリースーツだとか、犯人が顔を隠すためにシーツを被って犯行に及んだとか。

 昔この県で開かれた万博の、木をモチーフにしたマスコットキャラクターの着ぐるみが使われたとか。


 魔法少女と敵対する謎の怪人の犯行だとか、根拠のない書き込みもあったな。思いつきで言ってるだけだ。


 美穂は樋口の回答を聞いて、思いつめた表情になった。ややあって、スマホを操作して樋口に画面を見せる。

 一枚の写真。一組の男女が並んでいる。女の方の手はこちらに向かって伸びていて、つまり自撮りしたものだろう。カップルの記念写真、みたいなものだ。


 女の方は目の前にいる斉藤美穂。男は髪を茶色に染めていて、毛先を遊ばせていた。


「土居浩一。わたしと同い年の幼馴染で、その。彼氏です」

「仲良さそうね」

「はい。小さい頃から家が近くて。一緒に遊んだりする仲で。小学生も高学年になる頃にはお互い恥ずかしくなっておおっぴらに学校で一緒に過ごすことも少なくなったんですけど。ずっと好きで」


 少し恥ずかしそうにしながら語る美穂。樋口には他人の惚気話なんてあまり興味はないのだけど、大事なことなのは理解していた。


「高校生の時に告白されて、正式に付き合いました。大学も同じ所に行って。学部は違うんですけど」

「大学はどこ?」

「模布大です。わたしは文学部で、浩一は理学部です」


 旧帝大のひとつで、ここの県民からすると地元から出ないなら最高学歴となる大学だ。相当頭がいいんだろうな。

 そして文学部。樋口と同じだ。樋口もまた、模布大ではないけど旧帝大の出。少し親近感が湧いた。


「その浩一の研究室なんですけど。藻の研究をしているそうです」

「藻……」


 事件に関わるワードが出てきた。彼女が伝えたいことはそれだ。

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