表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第8章 夏のオカルト回

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

380/746

8-6.不審者の正体

「もう! 悠馬ってば! ひとりにしないでよ怖いじゃん!」

「悪かったよ。ストーカーというか、不審者が外にいるかもしれないのに、遥を出したくなかったんだ」

「気持ちはわかるけど!」


 ラフィオたちが不審者に絡まれたと知った俺は、急いで戻った。

 そして遥に怒られたというわけだ。


「さっきの写真、もう一回見せてくれ。ラフィオ、つむぎ。その女っていうのは、こいつか?」

「んー。たぶんそう、だと思います……」

「ブレがひどいっていうか、ほぼ残像だね。けど、こいつだと思う」


 遥のスマホを覗き込んだふたりが揃って頷いた。


「遥。こいつがラフィオたちに話しかけた」

「え? ふたりとも大丈夫なの?」

「それは心配ない。けど、この家は危ないかもな」


 前は、エリーを探すために大の大人がふたりして街を探し回っていた。その時も今みたいにカーテンを閉めて、エリーを隠さなきゃいけなかった。

 今度はストーカーだ。相手の目的がわからない以上、どう対策すべきかも見えてこない。けど、どうも俺たちというよりは、家自体に執着があるように思えた。


 この家の前の持ち主とかだろうか。でも、一家心中して、全員がこの世の者ではなくなっているはずで。


「全員が死んだわけじゃないんじゃない?」


 断言できることではないから少し自信がなさげだけど、遥がそんな可能性を口にした。


 なるほど。一家心中の生き残りか。たしかに樋口からは、心中事件があったとしか聞いてない。あとは、心理的瑕疵ってやつがある事故物件とだけ。


 死人が出たことは否定してなかったけれど、詳しいことは何も聞いてない。いずれにせよ、俺たちだけで対処できる問題でもなさそうだから、樋口に相談しなきゃな。


 不審な女が家の中を覗き込んで、ラフィオとつむぎに接触していた。それとおおよその顔つきの特徴をメッセージとして送れば、返事はすぐに来た。

 調査するとかではなく、一枚の顔写真だ。「この顔?」と追加のメッセージもついてきた。


 中年の女。髪は黒々としていて、血色もいい。疲れた雰囲気なんかは見えない。


 写真は免許書用とか証明写真とかの、映えるように加工することを想定しない、その人の比較的ありのままの顔を映すもの。これを見る限り、一家心中しなきゃいけないほど追い詰められた人間とは思えないけど。


「ラフィオ。この人だよね?」

「うん。もっと顔は青白いし、白髪も生えてた。というか、これより老けているけど、この人で間違いない」


 詳しく顔を見ているちびっ子たちは言い切った。


 そうか。樋口が正解を把握しているのもあるし、正しいのだろうな。


 この人だと樋口に返信すれば、すぐに返事が来た。

 この人物が誰かは後で詳しく説明する。今はその家を離れなさい。家には公安の人員を置いておくから安心して。


 言われた通りにしよう。この女がまた来ても困るから。とりあえず、全員で俺の家に向かうことに。愛奈もそろそろ帰ってくるはずだから。




「えっと。みんな大丈夫? なんか不審者に襲われたって聞いたけど」


 ビール缶の入ったコンビニ袋を提げた愛奈は、帰ってきたらちゃんと俺たちの心配をしてくれた。樋口から、真っ直ぐ帰るよう言われたのだろう。少し息を切らしていた。

 駅前のコンビニに寄る余裕はあったらしいけど。


「ええまあ。不審者といいますか、幽霊といいますか」

「ゆ、幽霊!?」

「ちょっとこれを見てください。ここの塀の部分……おわかりいただけたでしょうか」

「ぎゃー!?」


 心霊写真を見せつけられた愛奈が恐怖の叫びをあげる。


「やめとけ、遥。姉ちゃんは俺たちのこと、本気で心配してるんだから」

「あうっ」


 遥の額に軽いチョップを当てて黙らせる。


「姉ちゃんごめんな。別に心霊写真じゃないんだ。こいつがストーカーで、偶然写真に写り込んだんだ。ラフィオたちにも声をかけた」

「そ、それはそれで怖いんだけど! まあ幽霊よりは怖くないけど!」


 震える声で言いながら、震える手でビール缶を掴んでプルタブを開けた。いや待て。怖いから酒に逃げるのはやめろ。


「遥ちゃん晩ごはんまだ!?」

「はい。今持ってきますね、お姉さん。お化けに取り憑かれないように、塩は多めに振っておきました」


 それ、効果あるのか? いやそもそも幽霊は今回の件には関わってないわけで。


「ぷはっ! 遥ちゃん気が利くじゃない!」


 愛奈も素直に喜ぶな。


 直後、訪問者を告げるチャイムが鳴った。


「ひぃっ!? お化けが来たの!?」

「落ち着け。樋口だ」

「だ、大丈夫よ悠馬! お姉ちゃんがついてるから!」

「話しを聞いてくれ。なあラフィオ」

「わかった。行ってくる」


 俺の腕を掴んですがりつき、離そうとしない愛奈を振り払うわけにもいかず、ラフィオに鍵を開けに行かせる。


「相変わらずにぎやかね。幽霊も追い払えるくらいに」


 樋口がビール缶でいっぱいのコンビニ袋を提げながらやってきた。なんなんだこいつらは。


「あ! 樋口さんこんばんは! お酒持ってくるなんて気が利くわね! ほら、遥ちゃんも樋口さんに晩ごはん出してあげて!」

「お姉さん、いつか本当に祟られると思いますよ」


 キッチンに向かっていく遥。俺も手伝うためについていき、夕食のセッティングをしてから本題に入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ